第5話 クリスマス!

 12月25日の朝。


 寒すぎる。


 あまりの気温の低さに目が覚める。


 毛布にくるまったままゲームを始める。


「さみーなー」


「先輩、私にも毛布くださいよ」


 !?


「何でいるんだよ!帰れ!」


「待ってください先輩!外をご覧あれ!」


 ご覧あれってどういうキャラやねん。


 閉じたままのカーテンを開け、外を見ると真っ白だった。


 雪が積もっているとかそういうことじゃない。


 ホワイトアウトだ。景色一面が白色だ。


「こんな状況で帰らせるんですか?」


 なぜかニヤついてやがる。くそが。


「まあ、先輩もメリーぼっちマスにならなくていいじゃないですか。

 さあ、一緒にゲームしましょうよ?」


 仕方ない。



 思いのほか白熱してしまって、気づいたら夕方になっていた。


 外を見ると雪はもう止んでいた。


「雪も止みましたし、いっぱい楽しんだんで、私そろそろ帰りますね」


 香夏は立ち上がり、ドアに手を掛ける。


「あれ?あれ?」


「どうした?」


「ドアが開かないです」


「は?」


 俺も開けようとするが、外側で何かが引っかかってるみたいだ。


 力いっぱい押すと少し開き始める。


「先輩その調子です!ファイトー」


 応援するだけで手伝う気はゼロである。


 体力を全て使い、何とかドアを開ける。


 もうヤダ、家の中でゲームする。


「先輩見てくださいよー」


 ヤダよもう、お家でぬくぬくさせてくれよ。


「ほら、こっちこっち!」


 手を引っ張られ、無理やり外へ連行される。


 外は膝くらいまで雪が積もってる。


 これはドアも開かないな。


「雪合戦しましょう!」


 はぁ?嫌だよ!やめて!死んじゃう!


 何を考えてるのかフラフラな俺を雪にぶん投げる。


 雪の中に突っ込んだ俺に、追い打ちで頭に雪玉が当てやがる。このガキが!



 結局、乗せられるがままに雪合戦をしてしまい、挙句の果てには、かまくらや雪だるままで作っていた。


「あー...もう動けない、遊び倒したー」


 そう言って香夏は雪の中に倒れこむ。


 俺はとっくに倒れこんでいる。


「先輩!...メリークリスマスです!」


 そういえばクリスマスだった。


「…メリークリスマス」


 クリスマスっぽい事何もやってないけどな。


 後でケーキでも買いに行くか。


「じゃあこれから一緒に買いに行きましょう!」


 俺の心の声を読むな。


 香夏がいつのまにか、こっちに駆け寄って来ていて、俺をのぞき込んでいる。


「今から行きたいんだったら、俺の分までお前が買ってきてくれ」

「嫌です!」


 即答かよ。


 俺はため息をつき、仰向けになって晴れた青空を眺める。


「動ける様になったら後で一緒に行きましょうね!」


 そんな無邪気な笑顔でこっち見んな、断れねえだろうが。


「はいはい」


 適当に返事をする。


 お前は本当に元気だな。

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