第2話 田植え!
前回の山登りから一週間たち、筋肉痛も治り万全なコンディションでゲームに勤しんでいた昼。
「まーたゲームばっかしてる」
いきなり後ろから声がして飛び跳ねる。
「い、いつの間に入ってきやがった!」
「驚かせようと静かに入ってきました」
当たり前じゃないですか?みたいな顔しやがる。
「てか、今日も何ちゅう格好してんだ」
農作業着を身に纏った後輩が仁王立ちしてる
「今から田んぼに行きます!」
「いってらー」
せっかくのベストコンディションだ。家から出てなるものか!
そんな決意も空しく、首根っこをつかまれて連行される。
近所にある小さな田んぼに連れて来られた。
ここの所有者は言えばすぐに田植え体験をさせてくれるらしい。
「さあ!やりますよ先輩!」
えーまじかー。
いつも通りにテンションMAXで次々と稲を植えていく香夏。
続いてしぶしぶやり始めるが、この中腰の体制はつらい。
このまま下がるのか…
心の中で弱音を吐いていると、元気な後輩は僕の二倍以上は進んでいた。
「先輩は相変わらずですねー」
うるせーお前と一緒にすんなや。
「おわっ」
人を馬鹿にした天罰か、香夏はバランスを崩して尻もちを搗く。
「大丈夫か?」
駆け寄ると下半身が泥まみれになっている。
「もう泥だらけですよー」
「ほら」
手を差し伸べると香夏は悪い笑みを浮かべる。
「えい」
思いっきり引っ張られて泥に突っ込んだ。
この野郎。
立ち上がった香夏は腹を抱えて笑ってやがる。
「私より泥だらけになっちゃいましたね」
全身が泥まみれだ。
「ほら先輩、あまり遊んでると怒られますよ?」
それはこっちのセリフだ。
そのあとは、真面目に稲を植えた。
結果は8割くらい香夏が植えてた。
植え終えて、田んぼの地主さんの家の縁側で少し休ませてもらうことにした。
二割しか植えていない俺は息が上がっていて、香夏はまだまだ元気だ。
俺が体力がないのは認めるが、こいつの体力はバケモンだ。
「先輩、今日植えた稲は秋ごろに収穫らしいですよ。その時になったらまた来ましょうね」
気づけば夕方になっていた。
オレンジ色に光る夕焼けが彼女の横顔を照らし、とても美しいと思ってしまった。
あれ?デジャブか?
「…まあ今日頑張って植えたからな。収穫くらいは付き合うよ」
「はい。今日は楽しかったですね」
そう言った香夏はとても満足げな笑顔を浮かべていた。
「そういや何で今日は田植えなんだ?」
「昨日田んぼの近くを通った時、ちょうど田植えをしてたんです。
それをぼーっと見ていたら自分でお米を作ってみたくなったんですよ。
それだけです」
「お前は影響されやすいなぁ。
どうせこの前の登山も漫画とかに影響されたんだろ?」
香夏は目をそらす。
「まあなんだ、今日は俺も楽しかったよ。収穫、楽しみだな」
「はい!」
予想通り次の日は、足がパンパンでベッドから起きれなかった。
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