求婚

「ねんねんころりよおころりよ……」


 ふと、思い出した。子供の頃、夏休みに出た国語の宿題に、戦時中亡くなってしまった見ず知らずの赤子に少女が子守歌を歌うという短編小説が掲載されていた事を。十数年後、自分がそれを再現する事になろうとは。

 ガラスが一切なくなってしまった窓から見えるのは、瓦礫と生き物の死骸の山だった。フィクションでよく観た、世紀末の有様。国どころか人の動きなど、半月前からほぼほぼ麻痺している。海外の状況は情報の伝送用途が壊滅している今、微塵も把握できるはずもないが、期待するだけ惨めになるだけだ。


「見つけた」


 地球と人類を草でも刈るような気軽さで侵略してきた相手に見つかったが、逃亡も抵抗も思いつかなかった。人間にはない蔓のような触手が体に巻き付いて、下半身が潰れた赤ん坊から引き離される。


「帰ろう、僕のお嫁さん」

「えっ」

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