年の離れた人と恋に落ちました
東雲三日月
第1話 お金目当てで付き合ったのではありません
子供の頃からお年玉やお小遣いは何時も貯金をした……子供だから、欲しいも物だって沢山あったけど、夢を実現させたかったので、何時も貯金を優先させてきた。
高校生になり、バイトが出来るようになると、学業だけでなく、バイトにも励む。
レジ打ちの仕事や、レストランでのホール担当や、ティッシュ配り等……やれることなら何でもこなす。
隙間時間があれば、友達と遊んだり、彼氏を作ってデートしたりするものなのかもしれないが、愛花はその時間をほぼバイトに当てた。
高校を卒業してからは、進学せず、就職もせず、フリーターで働く。夜中の時給が良いところを探して、必死で働く……。
その甲斐があって、愛花は二十歳の時、念願だった……子供の頃からの夢でもあった喫茶店を実現させることが出来た。
愛花の喫茶店に来るお客の年齢層はバラバラで、愛嬌があり、笑顔が素敵な愛花の人柄で、 十代から八十代までと年齢層の幅は広い。
そんな愛花は、このお店を始めた頃から、高校時代同じ学校だった同級生の
ところが健は、高校時代誰にでも優しく接していたイメージしか無かったのに、実際付き合ってみたらDVと束縛が酷い。
今まで周囲から変な噂が何一つ無かったから、健の人間性に最初から気づけるわけが無く、これからどうしたら良いのか悩んでいた。
そんなある日、常連客で週に二度も来てくれる六十代の男性から声を掛けられる。
「何だか最近疲れてるようだけど、悩み事でもあるのかい?」
男性はカウンターに居る愛花の顔を心配そうに覗き込んだ。
「あ、いえ、大丈夫ですよ……」
「俺にはね、何時も君を見てるから、君が疲れてるのが分かるんだ。たまには休んだ方が良いよ! そうだ、これは連絡先だよ。今度一緒に美味しいものでも食べに行こうよ……」
男性から、突然連絡先の書かれた紙切れを渡された……。
彼氏の事で悩んでいた愛花は、自分の事を心配し、気にしてくれたその男性からの優しさに触れ、少し笑顔になる。
其れからだった……一週間経ってもその男性はお店に来ない。二週間過ぎ、三週間過ぎようとした頃、愛花その男性から渡された連絡先に連絡することにした。
「あの、喫茶店で連絡先を渡された愛花です」
「連絡が来るのを待っていたよ」
男性の、優しい声が電話越しに聞こえる。
「お店に来ないから心配で……」
「今、仕事が忙しくなっちゃってね。行けなくて悪いね……少しは元気になったのかな?」
「……まだちょっと……」
「そうかい、なら一緒に食事でもしに行かないかね?」
「……はい……」
「早速今日はどうかな? 喫茶店が終わる頃迎えに行くよ」
愛花は男性と食事に行く約束をすると、電話が終わってから、また少し表情が明るくなり笑顔になった。
閉店時間が近づいてきた頃、その男性が来店してくる……。
「近くに車を停めているから、お店が終わったら一緒に行こう。今夜は君のためにレストランを予約しておいたよ」
「レストランだなんて……そんな……」
「何も遠慮することは無い。美味しいものでも食べると元気になるから……」
お店が終わると、その男性が予約しておいたてくれたレストランへ、男性の運転する車で向かった。
そのレストランは愛花が普段行くことの無いようなお店だった。彼氏の健とも行くことが無い素敵なお店……。
「こんな高いお店……」
「今日は私の奢りだから遠慮なく食べてね」
「はい、ありがとうございます」
愛花は普段来ることの無いフレンチレストランへ連れてきてもらった。
食事をしながら話をしていると、彼が会社を経営している社長さんであることを知る。
愛花は、そのうち、優しい彼に甘えて、今お付き合いしている彼氏の事を相談した。
「そんな最低な男とは離れた方が良いと思うな! 愛花には俺みたいな男の方があってるとおもう。どうだ、俺と付き合ってみるか?」
四十も歳の離れた男性と付き合うという事に、躊躇はしなかった。彼の優しさに惚れた愛花は付き合う事を決める……彼が社長であり、お金持ちだからでは無い。
こうして、今まで付き合っていた同い年の健とは上手いこと別れて、四十年が離れた彼とのお付き合いが始まる……。
彼はスポーツジムに通っているとの事で、同い年の六十歳よりも若々しく、体力もあったので、デートは室内ばかりでなく、外へ連れ出してくれることが多かった。
身体の付き合いも彼は未だ現役だったので、毎度会う度に私を求めてきてくれた。
そんな付き合いが、一年、二年と続いたある日のことだった……今まで喧嘩もすることなく、これから先も彼と一緒に人生を歩んでいこうと思っていた矢先のことである。
彼と一緒に食事をしてから、彼に連れられてきたのは知らないマンションだった。
彼がチャイムを鳴らすと、彼と同い年位の女性の人が玄関から出てきた。
「あら、こんにちは、貴方が愛花さんね! 彼から話は伺ってるは……」
「……はい……そうです、こんにちは」
「愛花さんと彼が付き合ってるのは知ってるけど、ところで、これから先どうするつもりなのかしら?」
「えっと……」
彼の方を振りまくと、彼は下を向き黙ったままだった……。
「ここじゃなんだから、中に入って」
私と彼は中へ入ると、リビングルームへ案内された。
彼女がアイスコーヒーを出してくれた後、三人はソファーに腰かけ続きの会話が始まる……。
「私は彼と結婚したいと思ってます」
ちらりと彼を見たが、彼は何も言わない……。
「愛花さんはまだ二十代よね。四十も離れてる彼と結婚するという事がどういうことか分かってるの?」
「えっと……」
戸惑う愛花に、彼女は言った……。
「良い、彼の方が年を取るのよ。彼の介護をする覚悟は出来ているのかしら?」
愛花は、ただこれから先も、優しく接してくれる彼と一緒に居たかった。
「……」
そこまで深く考えてはいなかった。
覚悟まで考えてはいない。
彼が何も口を挟まないのは、そういうことなのだろう……。
「覚悟が出来ていないんだったら、愛花さん結婚はしない方が良いんじゃないかしら……。私なら、覚悟できるわよ」
「……!?」
「もう、これからはお付き合いも辞めなさなさい! 愛花さんはまだ若いから、これから沢山出会いがあるわ」
「……でも……」
でも、彼のことが好きだと言いかけたけど、彼はずっと黙ったままだったので、それ以上愛花は何も言わなかった。
そのまま、気まづい空気が流れていたのに耐えられず、愛花はそのマンションを、一人立ち去ると、大通りに出てタクシーを拾って家に帰った。
帰り道、自分の甘さに気付かされ涙が出た……。
ただ一緒にいたいという、ただ好きだという思いだけでは駄目だとい事を知ったのでした。
あれから、一度も彼には連絡先していません……。
年の離れた人と恋に落ちました 東雲三日月 @taikorin
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