令和伝説
ナムマン
第1話 質問箱
「質問箱」というアプリを知っているだろうか。送られてきた質問に回答し、SNSでシェアするアプリである。しかし、必ず質問が送られてくるとは限らないようだ。
「直接会ったこと無い人に対してあんなこと言える気力を他に活かしてくれって話なんですけどね。」
苦笑いしながら佐伯さん(仮名)は語った。彼女はオリジナルの絵を描いてTwitterに載せていたという。
「やっぱり私より上手い人なんてたくさんいるんですよ。私ももっと上手くなりたいなって思って、それで匿名なら言いやすいかなってアドバイスを貰いたくて質問箱を始めてみたんですよね。」
最初は、絵の感想や趣味についての質問などたわいのないものが届いてた。しかし、SNSの宿命なのかフォロワーが増えるにつれ、段々誹謗中傷が届くようになった。
「当時は全部そういうのは全部無視してスルーしていたつもりなんですが、今思えば相当キツかったですね。」
そんなある日、彼女の質問箱にある不可解なものが届いていた。
「十」とだけ書いてあった。
最初は、何らかの質問を送ろうとして途中で誤送信してしまったのかと思った。しかし、全く検討がつかない。
次の日は「九」、その次の日は「八」、またその次の日は「七」と送られてきた。
もちろん、佐伯さんには全く検討のつかないものであり、意味不明なメッセージだ。
「それで、もうめんどくさくなっちゃって質問箱だけでなくTwitterもアカウントごと消しちゃいました…」
私は、当初この話を載せるべきか迷った。確かに、匿名で誹謗中傷だけでなく不可解なメッセージが送られるのは本人にとっては怖いことだ。しかし、これは怪談と言うよりかは現代社会の闇に分類した方が良い。
私の怪訝な顔を見たからか、佐伯さんが「この話、続きがあるんです。」と言った。
「Twitterとか消した後、色々あって実家に帰省することになったんです、その時に祖母の位牌が置かれてる仏壇にお参りしたんですけど」
質問箱に「十」って送られた日、ちょうど祖母の命日の10日前だったなって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます