ビッチなはずの幼馴染が純愛厨の俺と一夜を共にしてからヤケにウブ可愛い。
ゆきゆめ
第1話 ぜんぜん好きじゃなかった。
――ぜんぜん好きじゃなかったんだ。あいつのことなんて。
だって俺には、他に好きな女の子がいて。その子といつか、俺の思い描く理想の純愛ができたらってずっと考えていたから。
俺はそんな、物語のような純愛にしか興味がない純愛厨だったから。
俺の人生は、たった一人の女の子に捧げるためにあるんだと信じていたから。
だから――
『わたしとエッチしてくれない?』
『断る』
久しぶりに帰ってきた故郷で再会するも、ビッチと噂されるようになっていた幼馴染がなぜか執拗に迫ってきたとしても心を揺さぶられるはずなんてなかった。
俺は自分を貫き、自分のしたい恋愛をする。
はず、だった……。
(やっちまったああああああああああああ!!?!!?)
とあるマンションのベッドにて、俺は頭を抱えていた。
隣には、すうすうと気持ちよさそうに規則的な寝息をたてる幼馴染がいる。
ピンクラベンダーに染められているのが特徴的なさらさらのセミロング。枕に添えられてちらりと見える指には、派手なネイルが施されている。どれもギャルっぽく見えてやっぱり俺の好みではないのだが、とても色っぽくは見えてしまう。
そんな彼女は肩まで布団をかけているもののその下はというと、もちろん裸だ。全裸だ。
そしてもちろん、俺も全裸だ。
そんな状況が指し示すことなど、一つしかない。
俺、
ああ、なんでこんなことに……。
――――ねえ、エッチ……しよ?
おぼろげながらに覚えている、彼女の甘い誘いがよみがえる。
彼女の口から漏れる、今まで聞いたことがない艶やかな声。見たことも、触れたこともなかった、女性の身体。その体温、柔らかさ。
そして、これだけはたしかに覚えている。彼女の藍色の瞳に浮かんだ涙。流れた赤い一筋。
すべてが、脳内を駆け巡る。
こいつのことなんか、瀬川瑞菜のことなんか、ぜんぜん好きじゃなかった。本当だ。
それなのに……。いくら純愛厨を自称したところで。好きになった、たった一人の女の子に生涯を捧げたいと願ったところで。
結局、しがない男子高校生の自制心などこんなものだったのかもしれない。
幼馴染の、しかも美少女に迫られればこんなものだった。
俺はゆっくりと、昨夜の出来事を思い返す。
自分のこの浅はかな行動を戒めるために。一生変わることのない事実が、俺と彼女の間に生まれてしまったことを、この胸に刻み付けるために。
これから俺はどうするべきなのだろうかと、自分自身へ問いかけるために――――。
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