第21話 家族になろうよ02


「あう……お兄ちゃん……」


 ダイニングに顔を出したルリが、後ろめたげ。


「可愛い!」


 ヒシッと抱きしめる。


 猫可愛がり。


「可愛いなぁ! 可愛いなぁ! ルリは世界で一番可愛いなぁ! ずっとずっと僕のための妹でいてね!」


 朝からハイテンションな僕でした。


 ちょっと情念がこもれ出た。


「お兄ちゃん……」


「なぁに?」


 ぷにぷにほっぺをつつきながら僕は応答。


「御飯」


「出来てるよ?」


 焼き鮭定食です。


「お姉ちゃんは……学校どう……?」


「楽しいですよ」


 講義も聴かずに爆睡して、休み時間に僕を独占できれば、そりゃ楽しいだろうけども……学校に居る理由が僕一色ってのも一体全体どうよ?


「あう……」


 引け目。


「大丈夫」


 くしゃくしゃ。


 ルリの白い髪をかき回す。


「無理することは無いから」


「にゃあ……」


 可愛すぎ。


 鼻血出そう。


 アルビノの特性で日差しに弱く、その特異性から人間関係の構築に不利。


 ルリは引き籠りだ。


 それについては学院側も配慮して、テストの点数だけで単位を与えており、勉学については置いていかれているわけでもない。


 ラピスほど人外では無いにしても、ルリも勉強は出来る。


 暇潰しに教科書や参考書を読むらしく、在る意味で自主勉強の理想型。


 焼き鮭もぐもぐ。


「お姉ちゃんは……大丈夫なの……?」


「司馬セーフティがあるので」


「しばせえふてぃ~?」


 僕も初耳。


「んーと……」


 白米を食べて天井を見上げ、


「超高性能なバリアを張っているんです」


「ふわ……」


 驚きに目を丸くするルリ。


 僕はさすがに頭から信じる気にはなれない。


「ちゃんと兄さんとルリの分も展開していますよ」


「いつのまに?」


「キスしましたよね?」


「そういえば」


 衆人環視の中でね!


「防護フィールドの展開と熱エネルギーの無尽供与。他にも機能はありますけど単純に言ってしまえばこの二つですね」


 凄まじいことをサラッと言われました。


「何故に?」


 百歩譲ってルリの紫外線対策ならまだ分かるけど、僕は健康快男児だ。


「世界征服をするためです」


「?」


 となります。


 僕は悪くない。


「当然世界征服をするに当たってあらゆる難敵が押し寄せます」


 あの……。


 どこまで本気……?


「軍事活動。暗殺。謀略。場合によっては地球人類と相対するはめに」


 何処をツッコむべきやら。


「当然暗殺には対処せねばならず、そのために司馬セーフティが必要と相成るのです」


 そーはゆーけどさー。


「核兵器を使われたら?」


「完璧に遮断します」


「酸素欠乏にならない?」


「酸素を取り込まなくても熱エネルギーを細胞に循環させる機能がありますので、究極的に言えば食事と呼吸も必要ではありません」


 あー、そりゃ確かに。


 呼吸という酸素供給。


 食事という燃料補給。


 食べた燃料を、酸素で燃やして酸化。


 結果、熱エネルギーを取り出すのが生命の根幹だ。


 もし機能を全面的に信じるなら、熱エネルギーの無尽供与があれば、酸素も燃料も必要十分条件にはならないだろう。


 信じればね!


「じゃあ……私も……外出られる……?」


「肉体的には」


 焼き鮭ハムハム。


「精神的には無理でしょ?」


「あう……」


 さすがに過去の自分の能力は、的確に把握されていらっしゃる。


「お兄ちゃん……」


「別に無理する必要はないよ。あ、そうだ! なんなら僕も不登校になろうか? 何時も一緒にいてあげる!」


「はやや……」


 ボンと赤面するルリ。


 天使だなぁ。


 ルリと出会うために生まれてきたといって、まったく過分じゃない。


「でも……お兄ちゃんは……学校に行って欲しい……」


「傍に居て欲しかったら、ちゃんと言うんだよ?」


「ん……」


 もぐもぐとルリは小さな口で白米を食べ申した。


「おかわり!」


 未来の方は元気いっぱいだね。


 ちょっと思うところもあるけども。


 お米も海苔もあるので、御飯は美味しい……コレは確実。


 僕もも少し食べよっかな?

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