第17話 妹は噂の転校生04
そげなわけで食堂。
学食。
僕らは席の一つについた。
窓際の四人掛け。
僕はかきあげうどん。
ラピスはゴボウ天蕎麦。
四谷はサンドイッチとパック牛乳。
久遠はユーリンチー定食。
「あなたは何処から現われたし?」
「四次元目にズレたところから」
上手い。
嘘は言っていない。
所謂、時間次元のズレから現われたのは確かだ。
あくまで「ラピスの言を全て信じるならば」と前提条件は付けれども。
うどんをズビビ。
「うったーまん?」
もう少し表現のしようがあろう。
あの人らは一応別の星系から来ているので、三次元空間の内包する存在としては…………あれ? つまりラピスは彼ら以上の異常なのだろうか?
「次元怪獣に近いですね」
二次元から四次元までいますからな。
「実質はもっと悪辣ですけど」
その意味は、今の僕には分からない。
「んで」
少し案じるような久遠の視線。
「何か?」
「ルリちゃんの実姉?」
「はあ」
姉妹揃ってアルビノとは珍しいけど、逆にソレが説得力を持つ。
まさかルリ当人とは、お釈迦様でも思うめぇ……てな感じ。
うどんをズビビ。
「ラピスさんは……司馬が好きなの?」
「大好き」
「……………………」
最後の沈黙は、僕でした。
南無三宝。
「兄妹でしょ?」
「義理だからセーフ」
柳に腕押し。
糠に風。
暖簾に釘。
天衣無縫で、捉え難く、天真爛漫さの濃縮した笑顔は、僕がルリを知っていなければ惚れていたかも……との御様子。
「今の司馬は精神的に微妙なの。そこの妹なんて……」
「ビッチには関係ありません」
「だからビッチ言うな!」
火でも吐こうかと怒る四谷。
「なぁ。何で俺は妥協案?」
「知らね」
久遠と男同士でヒソヒソ。
一応見知ってはいるらしい。
あんまり妹のルリと、親友コンビとは、会わせた覚えもないけど。
ルリは心が弱いから、僕に依存しているところがあるし、他者を恐怖する人格の形成は、何よりアイデンティティ。
一体ラピスが何を根拠に、四谷と久遠を知ったのか。
計り知れないにしても、ロクでもなさそうなので、聞く気にならない。
知らぬが仏とはよく言った物。
うどんをズビビ。
「なんならここで全てぶっちゃけても良いんですよ?」
「何を!?」
「ビッチの好きな人とか」
「何で知ってるの! ていうか何処で聞いたし! 転校生で有り得ないし!」
「三段活用ご苦労さん」
蕎麦をズビビとラピス。
「あとビッチじゃない!」
「またまたご謙遜を」
「喧嘩売ってるのね!?」
「まぁ煽ってはいますよね。中々ビッチは扇動のし甲斐があって面白いですけど、うるさいので兄さんに近付かないでください」
…………。
何か大型犬と子犬の争いを見ている感じ。
余裕のラピス。
キャンキャン吠える四谷。
時間の流れのまこと残酷なこと。
僕の知らない未来の六、七年で一体何が起きたのか。
縄文杉の如き精神。
元から地頭は良い方だったけど、それにしても規格外。
「落ち着け四谷」
「妥協案の仰るとおり」
「……何を以て?」
久遠の流し目。
知りません。
こっちに聞かれても。
うどんをズビビ。
「ラピスも煽らない」
「あまりビッチと妥協案は好きではありません」
「距離の取り方を覚えましょう」
「友情より兄妹愛が欲しいです」
「キスはしたでしょ」
しかも衆人環視の中で。
僕が死ぬよ? 死ねないけども。
「兄さんは愛されるために産まれてきたんですから」
「それはラピスも同じ」
「はいです!」
チューリップのような笑顔でした。
「だから四谷も同じ条件」
「性病が恐いですよ?」
「ありえないし!」
ところで……学食で、ラピスを無許可で映したスマホの画像が、全てブレていたという。
何をしたんだろう?
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