第14話 妹は噂の転校生01
宇宙は舞台で、人々は俳優。
ヤンが言ったのか、シェイクスピアが言ったのか。
後で僕は、そんな言葉を反芻することになる。
この世がコメディなら、方程式は王道で。
即ち、
「転校生の司馬ラピスです! シクヨロ!」
ラピスが、僕たちにクラスにやってきました。
ほんとね……。
もうね……。
「何をか言わんや」
との感想。
遺伝子。
生命地図が同じであるため、ルリと相似する。
正確に言えば、ルリの乙女型完成形とでも。
シルクのような白い髪。
ルビーを思わせる赤い瞳。
アルビノ。
なお僕のルリ性を想起させる美貌の持ち主で、ついでに未来予想図にして期待予測値の最高演算でもある。
黄金比で形成される五体は、童貞を殺すメリハリ。
「うおおおおっ」
大歓声の中、ラピスは受け入れられた……のはいいんだけど、こやつはよくよく周りを引っかき回す。
「それでは司馬さんの席は後方の……」
「はい!」
ラピスは胡乱げな目で見つめる僕にウィンク。
嫌な予感とはこのことか……あるいは虫の報せに第六感。
「もし」
僕の隣の席……そこに座る愛すべきクラスメイトに、話しかけた。
「えと……」
さすがに突出した美少女性にマイッチングな誰かさん。
あまり愛しておりませんことの証明ですな。
基本的に交友関係が広くない。
名を知らないクラスメイトも幾人かは居たりして……まぁそこまで社交的な精神性でもないので、それは決して良いとは言えないんだけど諦観を覚えはする。
人の歩みを止めるのは絶望ではなく諦め。
「席を替わってください」
サクサクと言ってのけます。
うちのラピスさんは。
「えと……」
「お願い!」
パンと一拍。
拝み倒し。
「それじゃあ」
ということで、まんまと僕の隣を確保。
「…………」
どうしても胡乱げな目になってしまう僕でした。
これは所謂「ジト目」と呼ばれるソレで、どうにもこうにも不審の三つは感じる。
ボソボソと小声で会話。
「逮捕されたんじゃなかったの?」
「証拠不十分で不起訴」
「在る意味盛大なインサイダーじゃない?」
「未来予知で株値を把握するのは法律規制にかからないし」
「うーむ」
理論としてなら、
「あーいえばこーゆー」
の典型だ。
「戸籍は?」
「書類不備」
そんなところだね。
どちらかといえば役所関係だろう。
元よりルリの戸籍なので、どうしようもあるまいけども。
「で、なんで転校生?」
「兄さんと一緒に居たいから」
可愛い奴……と言うべきか否か。
「…………」
「何が仰いたいので?」
「いや、可愛いなと」
「にゃは~」
『ルリが乙女になればこうなる』の理想型。
ルリズムとしての聖典だ。
「大きくなるとこうなるのかぁ」
みたいな?
とりあえずヒソヒソは終了。
「司馬?」
「司馬」
「司馬……」
「司馬!」
司馬軽木。
司馬ラピス。
「まぁ偶然の一致は出来すぎだね」
母さんの忘れ形見ではあれど。
「に・い・さ・ん?」
「はいな」
「――――――――っ!」
声は出なかった……というより出せなかった。
唇は、別の仕事に使われていたから。
ズキュウウウウン!
僕のおとがいを持ち上げて、
「ん……」
クラスメイトガン見の中で、ラピスは僕にキスをした……してしまった。
「――――――――」
悲鳴。
怒号。
はしゃぐ女子。
「はああああああああああ!?」
四谷が、悲鳴のような叱責のような……そんな声を上げたのが印象的。
南無八幡大菩薩。
我が家の妹がこんな風に育つのかぁ。
未来の僕は妹の教育を間違ったのだろうか……。
少しそんなことも思ったりして。
ところで四谷は何故に絶叫?
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