東ノ国ハラスメント対策連合

東ノ国 東京都 某区 区民センター A会議室


そこに、様々な県から集まった人たちがいた。

議事録には彼らの名前がある。


参加者;粕原かすはら又原またはら場原ばはら端原はらはら茂原もはら荒原あらはら作原さくはら栗鼠原りすはら


会議では次のような声が聞かれたという。


場原ばはらって、発音するとたまにパワハラに聞こえるんですよ…。」「そうですか。私も困っているんです。」「私なんかセクハラですよ。イメージが悪くって仕方ない。」「皆さん大変ですね。」「こういう言葉を流行らせたのは誰ですか?」「どれも企業が関わっていますね。」「ええ。」


東ノ国 某会社 Z応接室


ある幹部が、部長を応接室に招き、深々とした椅子に座らせた。

二人とも名札は隠されていて見えない。


「我々にいちいち証拠を出せとか、資料を残せとかいう嫌がらせ。これを何という?」

「それは、嫌がらせ…なのですか?」

「君は分かってない…。証拠を残さなくてよければ、手段を選ぶ必要はない。そのことを忘れたか。」

「では、エビデンス・ハラスメントですね。」「そうだろう。」

「つまり次に狙うのは…、エビハラですね…。」

 幹部は静かに頷いた。

「我々は、静かにやりたいだけなのにね…。」


神がこれを見ていた。


春の暖かい日だったのに。

東ノ国の海老原えびはらさんは、ふと寒気を感じた。


——————————————————


翌日。


「ただの風邪ですよ。薬出しておきますから。2−3日でよくなるでしょう。」

「先生、いつもありがとうございます。」

「海老原さん。ここ最近、寒いですから、気をつけてくださいよ。」

「先生も無理なさらないで。」


それで確かに風邪は治ったのだ。


しかし寒気がひかない。


そしてある日、粕原という男から連絡があった。SNSの書き込みを見たという。粕原は、メッセージで簡単な挨拶を済ませたあと、こう告げた。


「とにかく、まだご無事でよかった。」


海老原が何のことかと身構えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る