あなたと一つに

淋漓堂

第1話

「綺麗だよ」

 全裸でベッドに横たわる女の躯を見て男が、囁く。

「綺麗だ……美しいよ、とても」

「…………」

 女からの返事は、ない。

「嬉しいよ」

 男が少しずつ女に、近寄る。

「君が、僕と一つになりたいなんて言ってくれるとは思わなかったよ」

「…………」

 女は無言で天井を、見ている。

「ねえ、いつか君に話したことがあるかな」

 男はベッドに腰掛け、話し続ける。

「人は生まれ変われる――そうは思わないか」

「…………」

 女からの返事は、ない。

「生きている今だって、君はいつだって生まれ変わっている――ほら」

 男は女の長い髪を優しく、撫で始める。

「この髪だって、いつまでも今のままではない。少しずつ……ほんの少しずつ伸びている」

 次にその手を女の細い指に、重ねる。

「この爪だって、今この瞬間にも変化しているんだよ。この瞬間だよ……分かるよね」

「…………」

 女からの言葉はなく、しかしその指がぴくりと動いた。

「ああ……なんて素敵なんだ。そしてなんという刹那さなんだろう」

 男は重ねた手を細い指から、解いた。

「今この瞬間の君は、もうどこにもいないんだ。なぜなら、髪も爪も、さっきまでとは変わっている。分かるかな、この甘美な時の流れが」

 男はゆっくりと女の躯へ手を、伸ばした。


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