天井からぶら下がる幽霊と満ち満ちた狂気
高ノ宮 数麻(たかのみや かずま)
女の幽霊と狂気
不意に目が覚めた。
寝苦しかったわけでも、十分な睡眠をとりきったわけでもない。ただただ単純に目が覚めた。
目を開けた瞬間、真っ黒い髪の若い女と目が合った。
その女は天井からぶら下がり、僕の顔を覗き込んでいた。僕はすぐにその女が幽霊の類だと気付いた。
女の顔は青白く、その目は狂気に満ちている。
僕と目が合ったことに気付いた女は、天井にぶら下がったまま、にゅうっと伸びて、僕の眼前わずか1〜2cmのところまで迫ってきた。
僕は、思わずその女を抱きしめ、キスをした。女はひどく動揺し、さっきまで青白かった頬が少し赤く染まった。
女は僕を両手で思い切り突き放し、そのままスルスルと天井に吸い込まれてしまった。女が消えた天井を見ながら、僕は「なんてことをしてしまったのだろう」と後悔していた。
僕とあの女はまだ自己紹介すらしていない。互いを知らないのに急に抱きしめてキスをするなど、ただの痴漢と同じだ。
あの日から僕は毎日あの女が現れるのを待ち続けている。今度こそまずは恋愛のマナーとして、告白から始めたいと思う。
天井からぶら下がる幽霊と満ち満ちた狂気 高ノ宮 数麻(たかのみや かずま) @kt-tk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます