@takabatake2911

私は今閉じ込められている。

それは私がこの世界では決してしてはいけないことをしてしまったからだ。

だが私は反省していない。私は私の信念に従ったにすぎない。

そもそもこの世界は狂っている。政府が全ての人間の言動を監視している。

おそらく私はしばらく外に出られないだろう。いや、もう二度と出られないかもしれない。

ここは閉鎖された空間ではあるが、まったくの密室という事でもない。

四角く小さい窓から光が射し込んでいる。だが、とても人間が通れる大きさではない。

物理的に衝撃を加えて窓の大きさを広げられるほどその窓を囲んでいる壁はもろくもない。


窓の外からかすかに音が聞こえてくる。風の音。草がかすれる音。


なぜ窓があるのだろう。ここにいる人間に外の世界とつながっているという「希望」を持たせるためであろうか。

いや違う。外の世界があり、そこへは出ていけないという「絶望」を突きつけるためであろう。


空腹が限界に達してきた。薄れ行く意識の中、小さな窓の向こうから「カツッ、カツッ」と足音が聞こえた。足音はだんだん大きくなる。

「カツッ、カツッ」そして足音が止まった。どうやら窓の向こうに誰かいるようだ。そして窓の向こうから声が聞こえた。それは聞き覚えのある女の声だった。


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