第429話 処刑執行! その6

 邪神の登場に混乱していたクズ勇者達が、取り乱していたクソ女神が黙り込み。

 静まり返った荒野に私の声がこだまする……けど! そんな事はどうでもいいっ!!


「ふっふっふ〜! やぁっと気が付いたみたいだね。

 そう! 悪魔ちゃんの大好きな邪神こと私は、実はむさ苦しい男じゃなくて可憐な女の子だったんだよ」


 このウザいキャラは間違いなく邪神!!

 なら影武者とか、邪神の使いとかじゃなくて本当に……


「私は何度も伝えようとしてたんだよ?

 でも悪魔ちゃんが私の事を頑なに男だと思い込んでてね……」


 そ、そう言われてみれば……そんな場面があったような……


「ふふっ、でも珍しく……いや、そんなに珍しくは無いのかな?

 まぁとりあえず、混乱して取り乱す可愛い悪魔ちゃんが見れたから私は満足だよ」


 まさか、まさか! あの邪神の正体が女だったなんてっ!!

 い、いや、まだそう断定するのは早いっ! じっくりと観察しなければ!!


「じぃ〜」


「あ、悪魔ちゃん?」


 私と同じような白銀の長髪に金色の瞳。

 身長は私よりも高くてファルニクスよりも低い160センチ後半ほどで、整った美女というよりは美少女って感じの顔立ち。


「ふ〜む」


 確かに見た目だけではいえば、紛う事なき女!

 この私の隣に立ち並んでも見劣りしない美少女といえる……がっ! まだまだ女の子っぽい男だって可能性も捨てきれない!!


 確かにスタイルはいいと思うよ?

 スレンダーながらも出るところは出てるし。

 だがしかしっ! パットの可能性がある限り認めない! 邪神が私よりもナイスボディなんて認めないっ!!


「えっ? ちょっ!」


「むっ!」


 こ、この弾力はっ!

 そんなバカなっ!? あ、ありえないっ!!

 ありえないけど……この揉み心地は紛う事なき本物っ!


「っ──! 仕方ない」


 本当は認めたく無いけど。

 実際に触って確認したからには認めないわけにはいかない。


「認めてあげる、お前は女」


「だからそう言ってるよねっ!?」


「むぅ、煩い」


 今は真偽の確認のためにお前のおっぱいを揉んでてから近くにいるのに、突然大声を出さないでほしい。

 ビックリしちゃうじゃんか!


「えぇ……流石の悪魔ちゃんクオリティ……」


 ふむ、しかし邪神のこの揉み心地。

 いつも抱きしめてくるから慣れてしまったシルヴィアとかミーシャとはまた違った感触でなんかちょっと新鮮だわ〜。


「あ、あの、悪魔ちゃん?

 流石にちょっと恥ずかしいんだけど……」


「むっ、そう……」


 まっ! 確かに今はこんな事をしている場合じゃ無い。

 なにせ今はクズ勇者共の処刑を行ってるわけだし!! それに! その前にやっておかないとダメな事があるっ!!


「さてと、まぁそんなわけっ──」


 唖然と目を見開いて、ポカンと口を開くクソ女神に向き直って笑顔を向ける邪神の言葉が途中で途切れて……


「でぇっ!?」


 変な声を上げながら、殴り飛ばされて行く!


「これでよし」


「よしって! 悪魔ちゃん、いきなり何するのさ!」


 おぉ〜、流石は邪神。

 本気でぶん殴ってやったのに、何事もなかったかのように帰還した。


「言ったハズ。

 いつか絶対にぶん殴るって」


「いや、まぁ、確かに言ってたけど……普通この状況で実行する?」


「ふふん! 私は一度言った事は、必ず有言実行するのだ!!

 そんな事より、早くクソ女神をどうにかしろ」


「えぇ……そんな理不尽な、まぁそれでこそ悪魔ちゃんだけど。

 え〜、こほん! そんなわけで、私は悪魔ちゃんに呼ばれたから来たのであって、残念だけどアナスタシアくんを助けに来たわけじゃ無いんだよ」


「そ、そんな! 何故ですかっ!?

 私は貴女様からこの世界を任された主神です! それが何故……何故、魔神レフィーの味方をするのですかっ!?」


「確かにキミはこの世界の主神だよ? だけど、主神とは世界を管理する立場であって好き勝手やって良いわけじゃない。

 キミがファルニクスくんのストー……追っかけをしていたせいでシステムが滞って不足した世界を運営する魔素エネルギーを確保するために旧魔王を作り、救済処置として異世界人の召喚方法を人間に授けた」


 今、完全にストーカーって言いそうになったな。

 まぁ、私は知ってたけど……改めて聞くと、本当に最低で迷惑なクソ女神だわ。


「そして、そこの勇者くん達が勝手に行った異世界召喚のせいで、ただでさえ不足気味だったこの世界の魔素エネルギーが大量に流出させた事実。

 そして、悪魔ちゃん達を生贄にした事も……随分と好き勝手やってくれたね?」


「っ! そ、それは……」


「それに、ただの主神に過ぎないキミと……娘みたいに思っている悪魔ちゃんだったら私がどちらの味方をするかなんて語るまでも無いと思うわない?」


「そん、な……」


「まぁ、そういうわけだから、諦めて大人しく罰を受ける事だね」


 おぉ〜、あの邪神がなんかちょっと威厳があってカッコよく見える!


「ん、邪神よくやった」


 これで最高神の助けっていうクソ女神の最後の希望の光も潰えた。


「ふふっ! じゃあ、クソ女神、お前の罪状を言う。

 お前の罪状は、主神でありながら、世界の管理を怠り、結果として、世界を消滅の危機に、晒している事。

 そして、アバズレ聖女を、この世界に巻き込んだ償い……褒美として、私と私の大切な人達を生贄にした事」


「ち、違っ! そんなつもりでは……!」


「〝付与ノ神〟」


「っ!? こ、これは……」


「それが、お前の末路。

 お前に与える罰」


「そ、そんなっ!?」


「お前は肉体を失い。

 一切身動きできず、何も感じる事のない闇の中に封印される」


「いや……いやです!

 お願いです! こんな! こんな事なら、いっそ殺してくださいっ!!」


「あはっ! 永劫の時を世界に魔素エネルギーを満たすための燃料タンクとして、自然消滅するまで孤独に過ごせ!!」


「いや! いやだっ!」


「〝消滅しろ〟」


 泣き喚くクソ女神の身体が空間ごと圧縮されたように押し潰されて行き……


「やめっ! た、助けてっ──……」


 静まり返った荒野にクソ女神の涙が落ちて弾けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る