第365話 苛まれろっ!!

 唖然とする者。

 愕然とする者。

 騒然とする者。

 多種多様、十人十色な反応をする人間共全員が目を見開いて見つめる先。




「ぐっ、う……」


「くっ……」


「うぅ……」




 呻き声を上げながら焼け焦げた地面に転がるガスター、マリアナ、フェリシアの3人。

 愚かで醜くて脆弱な人間共の希望の光!

 そして! バチバチッと紫電する雷を纏いながら無傷で佇み、そんな3人を見下ろす我が弟子アークっ!!


「ふふんっ!」


 これがアークの実力なのだよっ!

 どうだ! 人類最高の一角である救世の六英雄のうち3人を同時に相手取って圧倒する圧倒的なアークの! 私の弟子であるアーク達の強さを思い知ったかっ!!


『ご機嫌だね』


 むふふっ! だって当初の目的通り多くの人間共の目の前でアークがガスター達3人を圧倒したんだよ?

 しかも、たった1人で!!

 ふふっ! あの場所で今のを観てた人間共の心境はどうかなぁ?


「さて」


 じゃあ、今日の一大イベントも恙無く終了した事ですし。

 いい気分のまま寝たいちゃいところだけど……今回のショーのプロデューサーとして締め括りに行くとしますか!


「お気をつけて。

 行ってらっしゃいませ」


「「「「「行ってらっしゃいませ」」」」」


 おぉう、シルヴィアを筆頭に全員に見送られちゃった。

 う〜ん、ちょっと出かけるだけなんだけど。

 そんなに心配そうな顔をされると、何と言うか……ちょっとむず痒いな。


「ん、行ってくる」


 さて……ふふっ! さぁ、愚かな人間共よ!!

 刮目せよ! そして、もっと驚愕しろ、もっと恐怖しろ……もっともっと絶望に染まれ。


「「「っ!!」」」


 ガスター、マリアナ、フェリシアの3人が。

 外壁からアーク達の戦闘を観ていた人間共が……領都ヴァントにいる全ての人間共が愕然と空を見上げる。


 真っ黒に染まった空が蠢き、出現するは荘厳な黒き扉!

 そして! その扉から姿を表すのは、誰を隠そう当然この私! 悪魔王国の女王にして全ての魔を統べる魔神!!


 さぁ! 愚かな人間共よ!

 魔王たる私の登場に恐れ慄き、恐怖に震えながら絶望に打ちひしがれるがいいっ!!


「……面を上げて良い」


「「「「「「「はっ!」」」」」」」


 あっぶねぇ! あぁ、焦ったぁ。

 何でアーク達は皆んなみんなして跪いちゃってるの? そんなのやるように言った記憶は無いんですけど。


『あぁ、そう言えば悪魔ちゃんがベッドの上でゴロゴロ自堕落に過ごしてる時にシルヴィアから何か言われてたよ』


 な、なるほど。

 一瞬どう反応すれば良いのかわからなかったけど。

 とりあえず、これで問題無い……ハズ!


「ふむ」


 良かった。

 人間共に今の動揺は悟られてなさそうだ。

 となれば、まずは……


「私の名前はレフィー。

 魔神と呼ばれし魔王が一柱ヒトリ


 おぉ、おぉ、騒然としちゃって。

 人の話は静かに聞けよな、全く。


「〝黙れ〟」


 これでよし。


「さて、愚かな人間共よ。

 ふふっ! 目の前で希望の光が、簡単に潰えた気分はどう?」


 恐怖? 不安? それとも絶望?


「喜べ、今はお前達を殺さない」


 コイツらには生きて帰って、他の連中にこの事実を広めてもらう必要があるからな。


「お前達に命じる。

 上司に、仲間に、愚かで醜い多くの人間共に真実をそのまま話せ」


 1人や2人ならともかく。

 数万人が六英雄が何もできずに敗北したと言う同じ証言をする。

 まぁ、それでも頑なに信じないヤツはそれなりにいるだろうけど……


 恐怖が恐怖を呼び!

 言い知れぬ不安が渦巻き、戦況の悪化が人間共をじわじわと絶望に追いやる……


「ふふ、あはっ! あはははははっ!!」


 あぁ、はしたないのに大声で笑っちゃった。

 翼も出しちゃったし……けど、これは仕方ない。

 ふふっ! さてと、領主とあのバカに付き従った騎馬を省く全員をクズ勇者とアバズレ聖女の所に。

 霊峰ルミエルがあるアナスタシア教国の首都である聖都デサントに転移させてやらないと!!


「恐怖しろ、絶望しろ!

 こんな事になった事を後悔しながら、先の見えない不安に苛まれ、無様に震え続けるが良い!!」

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