第354話 とある騎士の後悔
「ふむ……」
ふむふむふむ……
「むふっ」
むにゃはっはっはっ!!
どうだ、見たか! 思い知ったか! 人間共!!
あぁ〜あ、1万人もいるくせに我が悪魔王国軍混成小隊40人になす術なく蹂躙されてるじゃん。
ぷぷっ! 無様に敗走しちゃって!!
戦う前から蜘蛛の子を散らすように脇目も振らずに必死になって逃げ惑ってるし。
まぁ、逃げたところで無駄なんだけど。
とりあえず、これで要所の1つだった要塞が手に入った。
旧魔王軍との戦争でまだアバズレ聖女が召喚される前、戦況が芳しく無かった頃に戦線が後退する事を予測して造られた仮想最前線要塞。
結局、そこまで前線が後退する前にアバズレ聖女が召喚されて一気に巻き返したから使われる事は無かったけど。
実はあれ、私も建造に携わっているのだ! いやぁ、懐かしいわ〜。
むふふっ! 各地の要所を全て落として精神的に追い詰めてやる!!
『しかし、意外だね』
何が? 私があの要塞の建造に携わってたって事?
『いや、それもだけど。
何だかんだ言って悪魔ちゃんは意外と優しいからね、あの要塞にいる人達も殺しはしないと思ってたんだけど』
ふふん! 私が優しい事なんてわかりきってるのに何を今更。
それに意外とは余計だわ、意外とは!
けどまぁ、今回は別だ。
そもそも、私は人間が嫌い。
人間でもエレナとかアランとか個人的に好きな人はいても、人間って言う種族全体で言うと嫌いなのだ。
それでも、クズ勇者共みたいに無関係な者を生贄にして殺そうとは思わない。
だから基本的に無関係な人間には何もしないけど……
強制されたにせよ、自分から志願したにせよ。
私の敵として立って、私の邪魔をするのなら誰であろうとも……人間じゃ無くて神だろうと容赦はしない。
徹底的に叩き潰してやる。
『まぁ、人間達の場合は自業自得だしね』
ん、まぁそう言うわけで今回の戦争では敵対するヤツは人間でも天使でも!
クソ女神でも関係なく、容赦なく蹂躙するのだ!!
まっ、何はともあれ、これであの要塞は確実に堕ちた。
邪神と雑談してやってる間にも要塞ないの生命反応は千を切ってるし。
ふむ、数百人くらいは要塞を脱出して逃げ果せたみたいだけど……まぁ、問題ないな。
さてさて、他の場所はどうなってるかな〜?
***
「はぁ、はぁ、はぁ……くそっ、どうなってるんだ!!」
「全くだぜ。
あんな化け物が一兵卒とか、どんな悪夢だよ……」
「ふぅ……何人脱出できた?」
「さぁな、四方八方に逃げたが……ここにいる約300人以外は果たして逃げ切れたかどうか」
「アレは俺達じゃあどうしようも無い。
どうにかして霊峰ルミエルの総司令部にこの惨状を報告する必要がある」
「あぁ、援軍を送って貰う必要がある。
だが、今下手に動くとあの化け物達に見つかる可能性があるぞ」
「かと言ってこの人数だ。
後方にある最寄りの街まで最短でも3日はかかる、食糧も無い状況で撤退するのは不可能……八方塞がりか。
くそっ……ツイてねぇ、本当なら今頃嫁とレストランで食事でもしてた頃なのに……」
「まぁ、嘆いていても仕方ないさ。
とりあえず、今後どう動くか方針を……っ!!」
「な、何だ!?」
あの白い扉は……
「恐らく空間魔法の転移門だ」
「マジかよ……」
せっかく危険を犯してまで森の中に逃げ込んだってのに、まさかもう見つかったのか……?
「遅れてしまい申し訳ありません!」
「「っ!!」」
これは……
「おい、これって」
「あぁ、間違いない」
白い扉から続々と姿を見せる純白の翼を持つ者に、装備に身を包んだ人達。
「人類天界連合、中央軍が特別遊撃軍団のセカンです。
貴方達がこの場のリーダーですか?」
「俺じゃ無くて、コイツです」
「おい、俺は……」
「よくぞ、生き延びてくれました。
貴方達だけでもあの場所から逃れる事ができて良かった……到着が遅くなってしまった事を謝罪します。
あの死地をこの人数を率いて脱してくれたこと感謝を」
「や、やめてください!
俺のようなただのしがない騎士に頭を下げるなんて……!」
特別遊撃軍団。
集結した各国の騎士や冒険者達に加えて天界の軍勢である天使の中から選ばれた者のみが所属する精鋭部隊。
セカン様は周辺各国にその名を轟かせる英雄だ、そんな人に頭を下げられたら……
「すみません、貴方を困らせてしまったようですね。
しかし、これは仲間の窮地を救うために設立されたにも関わらず間に合わなかった我々が取るべきケジメですのでお許しください」
「い、いえ。
そんな」
「ははっ、本当に貴方は謙遜なさるお方のようだ。
お待たせしてしまいましたが、もうご安心ください。
我ら特別遊撃軍団が第三大隊が必ずや敵を討ち滅ぼし、皆さんを安全な場所まで護衛しますので」
「「「「「「「「「「っ──!!」」」」」」」」」」
流石は英雄と呼ばれる人だ。
いや、セカン様だけじゃ無い! 特別遊撃軍団の人達の存在。
それだけでさっきまで絶望のどん底にあった皆んなの表情が明るくなった。
勝てる。
これなら……この人達なら、俺達じゃあどうする事もできないあの化け物が相手でも負けるハズが無い!!
「なぁ」
「あぁ、俺達は助かっ──」
「あら? こんな所で何をしているのかしら?」
不思議と森の中に、この場にいる全員の耳に響き渡る綺麗な声。
何だあの女は……傾国の美女と呼ぶに相応しい、思わず見惚れてしまいそうになる程の美女だが、何故そんな者がこんな森の中に?
いや、それ以前に……
「おいおい、なんでこんな森の中にメイドがいるんだよ?」
確かに、こんな森の中にメイドなんて似つかわしく無い。
それ以前に今は悪魔王国との戦争中、そんな状況で前線と程近いこの森にメイドがいるなんてあり得るのか?
「ふふっ、如何にも。
私の名はソレイユ」
「なぁっ!?」
「我らが神であらせられるレフィー様にお使えするしがないメイドです」
可憐に。
そう言って、誰もを魅了するように微笑む美女。
「……は?」
いま、何が起こった?
彼女の前にいるのは……天使か? その天使の剣を素手で受け止めて。
いや、それよりも今なんて言った? レフィー様の、メイドって……
「掛かれっ!!」
さっき目にも止まらぬ速さで、あのメイドに攻撃を仕掛けたであろう男の天使が声を荒げると同時に他の天使達が。
セカン様が、特別遊撃軍団の人達が一斉にメイドに向かって……
「ふふっ、愚かなゴミが」
何が起こってるんだ……?
「血?」
妖艶に微笑むメイドに天使と人類の精鋭達が手も足も出ずに殺される。
腕が、足が、首が宙を舞って、血が辺り一体に降り注ぐ。
目の前で起こってる事は現実なのか?
「な、なぁ、おいこれって……っ!!」
く、首がっ!
さっきまで、隣で普通に話していたのに! コイツの首が!!
「ぅっ! オェッ……っ!!」
どうして、どうしてこんな事に……もし、あの時。
仲間に誘われて大罪人と呼ばれた公爵令嬢を犯して無かったら。
政略に嵌められて可哀想だけど、俺達みたいな身分のヤツが本来なら一生触れる事すらできない極上の女を弄べる欲望に負けてなかったら。
「あら? 貴方は……」
「ひぃっ!」
「へぇ、お前は我らが神であらせられるレフィー様に……」
「く、来るなっ!」
「お前は決して許されざる罪を犯した」
悪魔と呼ばれた公爵令嬢をストレスの捌け口に折檻して、犯して、弄んで無かったらこんな事には……
「その罪の重さを、その身で。
その魂でもって思い知りなさい」
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