第338話 方針は、総力戦

「よっと」


 ベッドから降りると同時にパジャマから物質創造のスキルで着替えて。

 ついでにベッドの上に散らばってるマンガとお菓子を亜空間に収納して証拠隠滅!


「むふふ」


 これで、私がベッドの上で寝転がってマンガを読みつつお菓子を食べてた事実がシルヴィア達に発覚する恐れはないハズ!!

 ふっ、我ながら完璧な隠蔽工作だわ。


『隠蔽工作、ね』


 何? なんか言いたい事でもあんの?


『いや、確かにベッドの上に散乱してたお菓子とマンガは隠せたと思うけど。

 随分と寝室の中が散らかってるな、と思ってね』


「……」


 言われてみれば……何でこんなに散らかってるんだろ?


「ふむ」


 謎だわ。

 今日の朝は来てないけど。

 これでも毎朝、シルヴィア率いるメイド軍団が掃除してベッドメイキングしてくれてるハズなのに。


 お菓子の包み紙とか、マンガとかが至る所にあるし。

 ベッドのシーツもクシャクシャで、お布団も地面に落ちちゃってるし


「……」


 ま、まぁ! 昨日の朝から丸一日、ずっとこの寝室にいたわけだし。

 このくらい当然だと思う!


『丸一日って言うか、この1週間の殆どをそこにいたけどね』


 煩いぞ!

 今はそんな事はどうでも良いの!

 と、とにかく! 今はコレをどうにかして片付けないとっ!!


 くっ、どこでもドア……空間魔法で寝室の扉をシルヴィア達のところに繋げて優雅に登場しようと思ってたのに!

 もし、もし仮に! この惨状をシルヴィアに見られたら……


「ま、まずい!」


 コレは非常にまずいっ!

 は、早く片付けっ──


「こほん」


「……」


「レフィーお嬢様、準備が整いましたのでお呼びに参りました」


 終わった。


「その、シルヴィア。

 コレは……」


「どうやらベッドの上でお寛ぎだったようですね」


「っ!?」


 な、何でその事をっ!!

 部屋の中はともかく、ベッドの上は完璧に隠蔽工作をこなしたハズ……


「私はレフィーお嬢様の専属メイド長です。

 それに、シーツもよれていますし、お菓子の粉が落ちています。

 この程度、私でなくても気が付いて当然です」


「うっ」


 こ、この完璧メイドめっ!

 完璧に隠蔽したと思ったのに……


「ふふふ、レフィーお嬢様。

 この件が終わりましたら少し、私と共に行儀作法のお勉強を致しましょうね」


 え、笑顔なのに嫌と言えない。

 くっ! これも全部、クズ勇者共のせいだ!!


『えっ、それはいくら何でも理不尽すぎない?』


 だって、アイツらに冤罪で殺されなかったら悪魔に転生してこんなに自堕落に過ごす事も無かったし。

 ましてや、アルタイル王国の至宝たる黄金の美姫と呼ばれた私がシルヴィアに怒られる事なんて有り得なかった!


『うん、まぁ一理はあると思うけど。

 それでも凄まじい責任転嫁だね』


「むぅ」


 おのれ、クズ勇者共めっ!

 今になっても私の事を苛むとは……!!


「ん」


「っ! 仕方ありませんね」


 もう自分で歩くのすら煩わしい。

 さぁ、シルヴィアよ! 私を抱っこして運ぶのだっ!!


「ふふっ」


 クズ勇者共め……せいぜい首を洗って待っていろ。

 この1週間でちょっと前に滅ぼしたグローリー王国、フラン帝国、アウストロ皇国こと旧三ヶ国連合。

 今は悪魔王国領になってるあの場所の港に軍を移動させたし、これで準備は整った!!


「目に物見せてやる」


 1週間前の会議で決まった方針。

 圧倒的な力を見せつけつつジワジワと、でも決して休ませる時間は与えない。

 さぁ、総力戦を始めよう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る