第329話 アレス公国は滅亡した!

「ふふっ」


 一面に広がるは……


「あはっ!」


 障害物が一切存在しない真っ白な世界!


「あはははははっ!!」


 これが! 魔神たる私が愚かな人間共に贈った祝福!!

 全てが死滅した白い世界。


「何、これ……」


 一部を省き人間とは比べ物にならない強者。

 クソ女神に仕えて永い時を生きてきたペトロが。


「おいおい、ウソだろ……」


 各国のバックアップを受けて万全の状態で挑んだクズ勇者共とは違って、何のバックアップも無く単独で旧魔王の幹部である四天王を討伐した男。

 白の騎士団を率いるSランク冒険者リヒトが。


「これは……」


「公都……いや、それ以上か」


「一体何が……」


 ペトロと同じく、クソ女神に仕える熾天使共。

 哀れな長髪男ヨハン、リーダー格ぽっいバルトロ、女剣士のフィリが。

 唖然と目を見開いて、呆然と呟く!


 ふふふっ、リヒト君。

 残念だけど、ウソじゃ無い。

 コレが、お前達が招いた現実!


 私がその気になればこの通り!

 アレス公国を一瞬にして滅亡させる事なんて、私にとっては容易い事なのだ!!


「これは私がお前達に齎す死の祝福」


 死滅の祝福は全てを私の魔素エネルギーで支配し、〝死〟と〝滅〟の概念を付与して殺し、崩壊させて消滅させる!

 後に残るのは純白に染まって死んだ大地のみ。

 神によって全てをゼロにリセットされた……全てが死滅した文字通りの死の世界を創り出す!!


 まぁ、原初の悪魔にして魔王、魔神なんて漆黒のイメージがしっくりくる肩書きなのに、私の魔素で支配する時に真っ白な純白に染まっちゃうのが難点だけど。

 シルヴィア達はこの方が良い、私のイメージに合ってるって褒めてくれるし細かい事は気にしない!


『確かに悪魔ちゃんは黒よりも白の方が似合ってると私も思うよ』


 むぅ、私としてはもっと禍々しい感じが良いんだけどなぁ。

 まぁ、こればっかりは仕方ない。

 それよりも今はこっちだ。


「愚か者めっ!」


「のこのこと自ら出てくるとは」


「滅びなさい!」


 愚か者はどっちだ。


「〝平伏せ〟」


「がっ!?」


「っ!!」


「なっ!」


 依代が崩壊するギリギリまで魔素エネルギーを解放したみたいだけど。

 ぷぷっ! 無様に地面に這いつくばっちゃって!!


 ノワール1人にすら簡単にあしらわれて手も足も出ないくせに、その程度でノワールの主人たる私に通用するとでも思ってたのかな?


「女神の尖兵たる羽虫風情が」


「なん、だと……!」


「私と遊んで欲しかったら、次は依代じゃ無くて本体で来い」


「「「「っ!!」」」」


 ふふん! バカ共め。

 この様子だと、本体じゃない事に気付かれて無いって思ってたみたいだな。


「ノワール」


「かしこまりました」


 ノワールがスッと立ち上がって優雅に一礼すると同時に這いつくばっていた3人の熾天使共の手足が宙を舞う。


「っ……我々は貴様達の力を見誤っていたようですね」


「あっ」


 一応忠告しといてあげよう。


「この場で殺されても、依代が崩壊するだけ。

 本体のお前達は無事?

 ふふっ、私の邪魔をして、ただ済むと思うな」


「何を……」


 その瞬間、ノワールの手刀によって熾天使共の首が飛ぶ。

 流石はノワール、惚れ惚れするお手並みだわ!

 ふふふ……せいぜい激痛に苦しむが良い。


「さて」


 これで邪魔な羽虫共は処分した。


「喜べ、人間共。

 お前達は殺さない」


 アレス大公の願いだし。

 何より、早々に死んで恐怖と絶望と後悔! 苦しみから楽になれるなんて勿体ない事はし無い。


「けど、お前達の国は殺した。

 文字通り、アレス公国はたった今……滅亡した」


「っ……何故、こんな事をする?」


 何故? この前の宣戦布告で一応説明したつもりだったけど。

 まぁ良いや。

 何故っていうのならリヒトにも、公国に住む物心がついてる全てのヤツらに見せてやる。


「コレが私がお前達に復讐する理由。

 コレはお前達自身が齎した事。

 ふふっ自らの罪を知って、死んだ大地で生きていけ……付与者」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る