第318話 思い知れっ!!

 さてと、皆んなみんなもアレス公国に転移してクソ勇者共のために観賞用のスクリーンも用意した事だし。

 私も現地に行って、これから始まるショーを楽しまないと!


「ふふふ……せいぜい必死になって抗え。

 自分の無力を嘆き、少しでも私を楽しませるがいい」



『っ! ま、待て!』



 待たない。

 既に転移したノワール達、七魔公の皆んなも私の準備が整うのを待ってくれてるし。


 まぁ、安心しろクズ勇者共。

 お前達の無駄な足掻きはアレス公国に行っても見ててやるし、しっかりと録画しといてやるから!


「私服を肥したアレス公国が滅び行く様を楽しんで」



『──っ!』



 はいっ、アレス公国の首都。

 公都マルスの上空に到着っと。


「ふむ」


 前回同様にさっきの勇者共とのやり取りは大陸中に生中継してた事もあってかなりの騒ぎになってるな。

 とりあえず鑑賞する準備をしないと。


 しっかしクズ勇者共との通信を切って転移する瞬間また何か喚いてたな。

 まぁ、わざわざ聞いてやる必要も無いし当然無視してやったけど。


「ふふん!」


 しかし、アイツらの声を聞くだけでも虫唾が走って、鳥肌が立つし。

 インテリメガネ天使のこっちをバカにして見下した態度。

 うんうん、流石は私っ! 我ながらよく我慢したわ。


「よし!」


 邪魔が入らないように認識阻害効果のある隔離結界も展開したし。

 ふかふかな巨大クッションよし! 飲み物よし! ポップコーンよし! ふふふっ、準備万端っ!!


『全力で楽しむ気満々だね』


 当然!

 だって私の事を貶めて、いわば私を生贄にして繁栄したアレス公国が滅ぶんだぞ?


 しかも、人間共の希望で有る勇者共はそれを止めるどころか介入してくる事すらでき無い。

 あはっ! 絶望する人間共の顔が、感情が……恐怖と絶望に染まったココロが楽しみだわ〜!!


「っ……!!」


「──っ!」


「ぁーっ!」


「っ──!!」


 っと、始まった!


「おぉ〜」


 騒然とする公都マルスに住む人間共の頭上に出現するは禍々しく、それでいて気品を感じさせる装飾が施された巨大な漆黒の扉!


 パニックに陥る者。

 必死に逃げ惑う者。

 固唾を飲んで呆然と上空を見つめる者。

 喧騒に包まれる人間共を嘲笑うかのように、濃密な魔力を溢れさせながらゆっくりと扉が開いて行き……


「うそ、だろ……」


 ノワール達、七魔公を迎え撃とうとしていた完全武装の騎士が唖然と言葉を漏らす。

 続々と扉から出てくるのは人間共の悪魔達。


 冒険者ギルドが定める危険度Aランク。

 たった一体ですら都市に甚大な被害を齎す悪魔が途切れる事なく開け放たれた漆黒の扉から姿を表す。


「ふふっ」


 さっきの勇者共とのやり取りは中継してたけど。

 七魔公の皆んなには前回の宣戦布告の時に私が着てた全身を包み込むローブを羽織って貰ってたから人間共はまだ七魔公の姿を知らない。


 高位の悪魔は人と同じ姿をしてるって事を知ってるごく一部のヤツら以外は全員。

 それこそ、クズ勇者とアバズレ聖女も含めた大多数は私と一緒にいた七魔公の事を普通の悪魔だと考えていた。


 そんな悪魔が大量に姿を表したら唖然としちゃうのも無理はない。

 けど……驚くのはまだ早い!


「っ!?」


「──っ!!」


「これはっ!?」


「一体何が……」


 数十の悪魔……下級悪魔が一斉に跪いて頭を垂れる。

 そして姿を表すのは、燕尾服に身を包んだ執事とメイド服に身を包んだメイド。


 私直属の悪魔軍団所属の中でもシルヴィアによって選び抜かれて私のお世話をする事を許された者達。

 七魔公を除けば最高に位置する14柱の最高位悪魔アークデーモン達。


 跪いて頭を垂れている下級悪魔達とは比べ物にならない圧倒的な存在感。

 常日頃から荒事に関わりのない一般人ですら本能で察し、唖然としてしまうほどの魔素エネルギーを身に纏う高位悪魔達。


「っ……!」


「うそ……」


「そん、な……!」


「まさか……」


 そんな彼らすらもがスッと優雅に跪く。

 そして……喧騒に包まれていた公都マルスから人々の声が、音が消えて静まり返る。


「うふふ、我らが神。

 至高の御方であるレフィー様を貶めたゴミ共の蹂躙を始めましょう」


「ええ、速やかに終わらせるとしましょう」


「あはは! 楽しみですね!」


「ルシフ様、これは遊びでは無く主様の御命令ですよ」


「私もルシフくんと同じく楽しみ〜」


「はっはっは、レヴィア殿まぁ良いではないか。

 我らの力を愚かな人間共に思い知らせてやれば問題あるまい」


「あの……皆さん? 一応今も人間達に見られてますからね?」


 跪く者達の間を。

 国を容易く堕とせるだけの悪魔達の間を。

 それを当然と受け入れ、自由に話しながら進む七柱の大悪魔。


「アス、それがどうしたのですか?

 私に何か意見でも?」


「いえ! 滅相もありません、ノワール様!!」


 ジト目で公爵位のノワールに睨まれてビシッと敬礼をする男爵位のアス。

 こんなコントを見せられても一切声を発する事も微動だにする事もできずに、人間共はただただ唖然と頭上を……七柱の悪魔を見つめる。


「まぁ良いわ。

 ふふふ、脆弱で愚かで醜い人間の皆様ご機嫌よう。

 私達は我らの神にして至高の御方であらせられる魔神レフィー様が直属の配下。

 七柱の悪魔公デーモンロードからなる七魔公と言います」


 ふふんっ! さぁ! 人間共よ刮目せよっ!!

 悪魔界に君臨する大悪魔たる七柱の悪魔公……七魔公の力を力を!

 悪魔族の恐怖を思い知れっ!!

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