第313話 開戦の狼煙をあげようか
「これは由々しき事態ですぞ!」
「アルタイル王、ご説明を!」
「どう責任を取るつもりですかっ!?」
唾を飛ばし、お腹の贅肉を揺らしながら言い募る醜いオッサン共にアルタイル王。
クズ勇者がうんざりしたみたいに顔を歪める。
「はぁ……だから何度も言っているでしょう。
アレは我々人類の結束を乱そうとするただの虚言に過ぎません
悪魔の言葉に惑わされないで下さい」
ふふっ、ふふふ、ふはっはっはっ!!
その顔! いいねぇー、その疲れ切った顔!
少しは話の通じないヤツらと不毛な話を続けるウザさとしんどさを味わうが良い。
「はぁ……今更説明もクソもねぇだろ。
そもそも、ここにいるヤツらは殆ど全員が6年前の事なんて知ってるハズだ。
今は責任の押し付け合いなんてくだらねぇ事をしてる場合じゃねぇんだよ」
「そうね、今回の緊急国家会議が始まってから……悪魔王国の宣戦布告から既に1週間。
天使族の協力でその日に会議を始めれたのは良かったけど、結局まだ何も決まって無いもの」
ガスターとマリアナに睨まれて、未だに喚き散らす事しかしない無能共が押し黙っちゃった。
けどまぁ、別に良いか。
クズ勇者を辟易とさせるのは良いけど、私もしてもいい加減ちょっと鬱陶しかったし。
「貴方達は随分と彼の者を警戒しているようですね。
何か理由でもあるのですか?」
「アンタは確か……」
「五大熾天が一翼、第四翼のパウロです」
「確かに私達は
何せ、私達はこの場にいる誰よりも彼女達の力を知っているから」
「パウロ、アンタら天使は少し前にあった3カ国連合と悪魔王国との戦争を知ってるか?」
「えぇ、残念ながら結界が展開されてたので、当時あの場所で何があったのか詳細までは知りませんが聞き及んでいますよ。
確か……彼の者が20万からなる連合軍の半数以上を葬り去ったとか」
「あの戦いには、私達の弟子も参戦していたの。
ほんの一瞬よ。
魔神の放った、たった一度の攻撃で10万人が言葉通り消し飛んだのよ。
後に残ったのは抉れて、焼き焦げた地面だけ」
ふふん〜! まぁ、私にとってみればあの程度は雑作もない事なのだよ!!
ぷぷっ、全員黙り込んじゃって!
「ふふっ」
もっと恐れて、怖れて! もっともっと畏れろ!!
6年前に自分達がどれだけ愚かな事をしでかしたのかを、その無い頭で理解して後悔しろ。
そして! 一体自分達が誰と敵対しているのかを思い知って恐怖するが良いわっ!!
「魔神レフィーが率いる悪魔王国の戦力は絶大。
私も今は責任の押し付け合いなんてしてる場合じゃ無いと思う」
「フェリシア、貴女がそんな弱気な事を言うなんてらしくありませんね。
悪しきヤツらは……あの女だけはっ! 必ずや我々の手で討ち滅ぼさなければならないのですよ?」
「そ、そうだよ!
クリスの言う通り、悪魔達は……皆んなを危険に晒す悪魔は私達が倒さないと!!」
うわぁ、あのアバズレ聖女、未だに誰にでも慈悲の心を向ける心優しい聖女様を演じるつもりなんだ。
クリスは天使共を介してクソ女神からもらった浄化の神器のおかげで私の呪いを抑え込めてるみたいだけど……ふふっ、ソレもいつまで持つかな?
「とにかくだ、責任の押し付け合いなんてくだらなぁ事をやってないですぐに話を煮詰めるぞ」
「尤も彼女は今もこの場所を見ているだろうから、こんな会議なんてしても意味は無いと思うけれど」
ご名答!
「この場所を見ている?
マリアナ、それはどう言う……」
「いえ、そのご心配は無用です。
この場所には私が展開した結界が張られていますので。
いかに魔神と言えども、この場所を覗き見る事はできません」
メガネをクイッと中指で上げてキリッとカッコをつけてるところ悪いけど……ガッツリ見ちゃってるから!
ぷぷっ、熾天使だかなんだか知らないけど、お前程度の結界なんて何の意味も無いのにカッコをつけちゃって! ダサっ! ふふっ、めっちゃウケるんですけど!!
「レフィーお嬢様」
「ん、わかった」
さてと、まるっきり無駄な会議をやってるクズ勇者共の滑稽な姿を見てるのも楽しいけど……
「じゃあ、始めよう」
さぁ! 開戦の狼煙をあげてやるとしようか!!
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