第307話 やっとこの時が来たっ!!

 さぁ、愚かで脆弱で醜い下衆な人間共。

 心の底から、魂の根源から恐怖しろ。

 そして……自分達がどれ程の過ちを犯してしまったのかを理解し、懺悔して! 命乞いしながら私の前に無様に平伏せっ!!


「「っ……」」


 っと、私とした事がついつい感情的になってしまった。

 せっかく後ろに下がってもらったのに、クズ共だけじゃ無くてフィルとアリーもちょっと苦しそうに顔を歪めちゃってるし……ふぅ、深呼吸、深呼吸! 落ち着かなければ!


「ふぅ……」


 よし! 昂ってた気持ちがちょっと落ち着いた。

 とりあえず、この魔王覇気での威圧を解いてっと。


「っ、かはっ!」


「ぁっ!」


 何かクズ勇者とアバズレ聖女が耳障りな声で咳き込みながらカクンって、糸の切れた人形みたいに膝から綺麗に崩れ落ちたけど……無様なアイツらを嘲笑うのは後だ!

 今はそれよりも……


「大丈夫?」


 流石に人類最強の一角であるクズ勇者とアバズレ聖女はこの程度でポックリ死ぬ事は無いだろうし。

 他のクズ共が今の魔王覇気で失神しようが、失禁しようが、死のうがぶっちゃけどうでもいい。

 せいぜい勝手に無様な醜態を大陸中に発信されろ。


 でも、可愛い我らが弟妹がアイツらを威圧するための魔王覇気の余波を受けて苦しんだとなれば話は別だ!

 全然どうでもよく無い!


「大丈夫です。

 申し訳ありません……」


「私達が未熟なせいでお姉様のお邪魔をしてしまいました……」


 っ!! 私の魔王覇気を受けたのは2人なのに……なんて良い子達っ!

 おのれ……クズ勇者共めっ!

 2人を苦しめるばかりか、全く悪く無い2人に謝罪をさせるなんて! 許すまじっ!!


『凄まじい責任転嫁だね』


 責任転嫁? 何言ってんの?

 ここで気持ちが昂ってちょっと魔王覇気をコントロールし切れずに周囲に撒き散らしちゃったのは、その原因を作ったクズ勇者共が悪いのだ。

 つまり! クズ勇者共が全部悪いのであって、私は何も悪く無いっ!!


『……』


 ふふん! どうよ? この完璧で一切の隙のないド正論は?

 ふっ、ぐうの音も出ないようだな。

 邪神を論破してやったわ!


「はぁ、はぁ、キミが魔国の女王……?」


「魔王、魔神……」


 いかにも! 私が恐れ、怖れ、畏れられる魔王が一柱ヒトリたる魔神。

 悪魔王国を統べる女王である!!


「まさか、10万人を一瞬で消し去ったっていう魔神がこんな子供だなんてね」


 あ゛?


「ノア、やれそう?」


「大丈夫……って言いたいところだけど。

 私達が全力を出すとなると、王都が壊滅しかねない」


「だよね」


「さて、どうしたものかな?」


 おいコラ、何余裕ぶってんの?

 この私の事を堂々と子供って口走っておきながら、なに呑気に話してんの?


「ふっ、ふふふ……」


 ひっひっふぅ〜、落ち着け。

 コイツらを叩き潰すのは決定事項だし。

 何より私はクールでカッコよくて可憐で美しい超絶美少女の魔王様。

 この程度の侮辱で取り乱す私ではない!


「しかし……キミはさっき、久しぶりと言ったね?

 私達は貴女と会った事は無かったハズ、どういう事かな?」


 ん? あぁ、そう言えば気持ちが昂って久しぶりって口走っちゃったけど、まだ仮面も外してなかったな。


「聖女リナ、勇者ノアール、お前達は……ここにいるヤツら全員、私と会った事がある」


 さぁ! 刮目せよ!!

 そして驚愕するが良いっ!

 ふふっ、あはははっ! やっとこの時が来た。


 この時のために今まで身バレしないようにしてきたんだ……さぁ、このクズ共は私の正体を知って。

 私が一体誰なのかを理解して……あはっ! どんな顔をするかなぁ?


 悪魔王国を統べる女王。

 始まりたる原初の悪魔。

 全ての悪魔の頂点に立つ悪魔の神。

 六魔王が一柱ヒトリ

 色々と肩書きはあるけど……ここは端的に名乗ろう。


「私の名前はレフィー」


 仮面を外して。

 純白の翼を広げる。

 翼を広げたせいで被っていたフードがローブごと脱げちゃったけど細かい事は気にしない!


「魔神レフィーだ。

 ふふっ、改めて久しぶり……愚かで醜いクズ共」

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