第306話 久しぶり
勇者に聖女、超大国アルタイル王国の重鎮ともあろう者達にポカンと間抜けな顔を晒して唖然と漆黒に染まった天を仰ぎ。
双方共に本気では無かったとは言え六英雄2人を圧倒したフィルとアリーが跪く。
そして! フィルとアリー以外のこの場にいる全員が唖然とする中。
漆黒の空を背に背負ってアリーが消し飛ばした天井の穴からゆっくりと。
全員の視線を、畏怖を、恐怖を集めながら崩壊した会議室にふわっと静かに降り立つ……
「ふふっ……」
決まったぁ〜! ふふん、我ながら完璧な登場!!
間抜けで愚かで醜く脆弱な人間共よ、もっと驚け! もっと驚愕しろ!
そして、もっともっともっと! 心の、魂の根源から恐怖するが良いっ!!
さぁ、これで準備は整った!
さっきフィルが言ったように、今回の目的は2つ。
1つはクズ勇者共の罪を白日の元に晒して糾弾する事。
そして、もう1つはクズ勇者共に対する宣戦布告!!
両方ともフィルとアリーがさっきしてくれたけど。
2人がどの陣営に属しているのか、そして何に、誰に宣戦布告されたのかをしっかりと理解してもらわないとだし。
やっぱり、正式に宣戦布告するなら2人の主人にして
ふふ……っと、その前に。
「フィル、アリー。
楽にして良い」
と言うか、別に2人は一々跪か無くていいのに。
まぁ確かに様式美的にカッコがつくってのはわかるけど……
「「かしこまりました」」
スッと立ち上がった2人だけど、私を見るアリーの瞳がキラキラ輝いてる。
ふふっ、わかる、わかるぞアリーよ!
何たって今の私は、背中に金色で大きく悪魔王国の紋章が刻印された漆黒のフード付きローブに身を包み。
顔には左右対称の模様が入った純白の仮面。
この謎の黒幕感があって超絶カッコいい姿が中二心をくすぐらないわけが無い!
ましてや、私のマンガを夜な夜な読み漁っていたアリーの琴線に触れないハズが無いのだ!!
っと、まぁそれはさておき……
「さて」
別にフィルとアリーが跪く必要はないけど、他の連中は別だ。
これでも私は悪魔族の頂点に君臨する原初の悪魔。
悪魔の神にして、大陸統一国家である悪魔王国を統べる一国の王なわけよ?
そんな私を前にして、重鎮とは言え一介の貴族に過ぎない醜い狸ジジイ共が。
有象無象の雑魚に過ぎない、私の前に存在する価値も資格もない人間の分際で対等に立ってるなんて事が果たして許されるだろうか?
否っ! そんな事が許されるわけが無いっ!!
「人間風情が……頭が高い」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
ふん、お前ら程度、付与者の権能を使うまでも無い。
魔王覇気でもなんでも無い、普通の威圧に屈して無様に跪け。
「っ……これは。
リナ、油断したらダメだよ」
「うん、誰かはわからないけど。
あの子、結構強いみたい」
まっ、人類最強の一角なわけだし。
流石にクズ勇者とアバズレ聖女にはこの程度の威圧は効かないのはわかったたけど……この私を結構強いね。
ふ〜ん、そうですかそうですか。
まっ、脳内お花畑のクズ勇者共が私の力を測れるとは思ったなかったし、別に良いけど。
しっかし、半壊……だからか崩壊しちゃってるけど、この会議室……
「……」
「お姉様?」
「何でもない。
ちょっと感傷に浸ってただけ」
旧魔王との戦争中、何回この会議室を使って会議を開いた事か。
それに、魔素支配で広がった視野から見える王都ペイディオのこの光景……懐かしい。
「リナ」
「任せて!
あぁ、なんか煩わしい声が聞こえる。
それも聞きたくも無い大っ嫌いな声が。
ちょっと鬱陶しいから黙っててくれないかな?
「それで、君は何者なのかな?」
「……」
チッ、せっかく人が昔を懐かしんで感傷に浸ってるってのに邪魔しやがって。
顔だけの最低クズ勇者が。
「フィル、アリー」
「はい」
「いかがいたしましたか?」
「2人とも私の後ろに」
もうちょっと感傷に浸っていても良かったけど……この場所には幼い日の楽しい思い出もある。
でも、思い出したくも無いクソみたいな思い出もある。
あぁ、せっかく良い思い出に浸ってたのにクズの声を聞いたせいで胸糞悪い思い出が次々とフラッシュバックしてくるわ。
「ふふっ」
狸ジジイの下衆貴族共を結界で威圧から守ったか、そんな事しても無駄なのに。
しかし、私が何者かかぁ。
「あはっ! あははっ!!」
あぁ、うっかり魔王覇気で威圧し過ぎて殺しちゃわないように注意しないと。
「私は悪魔」
解き放った魔素によってお城が、王都ペイディオが……地面が、空が、大気が震える。
「始まりたる原初の悪魔にして、全ての悪魔の頂点に立つ悪魔の神」
ピシッ……ピシピシピシッ! パリィッンッ!!
ゴミ共を守っていたアバズレ聖女の結界が砕け散り、私を中心に床全体に亀裂が走る。
「ふふっ! 勇者ノアール、聖女リナ、久しぶり。
私が六魔王が
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