第291話 対価は……

「「えっ……」」


 流石のセラフィルもこれは想定してなかったようだな。

 ぷぷっ! アリシアと一緒にポカンと間抜けな顔をしちゃって! やっと年相応の反応を見れたわ。


「対価、ですか……?」


「ん」


 醸し出してた大団円の雰囲気をぶち壊して申し訳ないけど……


「何の対価も無く、教えてもらえると思ってたの?」


 それなら、その考えは甘いと言わざるを得ない。

 そもそも、一切の見返りもなく他人の願いを叶えてやるヤツ何て皆無と言って良いほどに殆どいない。

 私は聖人君子じゃ無いし、それ以前に……


「ふふっ、私は原初の悪魔。

 悪魔に何かを願うなら、相応の対価を覚悟しないと」


「「っ!!」」


 悪魔を呼び出して願いを叶えてもらった対価に、召喚者が殺されたとか、国が滅んだとか。

 そんな話は山ほど有る……まぁ、この世界では悪魔族は6年前に誕生したばかりだし、この世界にはそんな話は無いだろうけど。


 とにかく!

 この私を! 悪魔を相手に何の対価も無く、自分の願いだけを叶えてもらおうとか、そんな虫の良い話は許されないのだよっ!!


「ただで教えてもらおうなんて、私達が甘かったと言う事ですか……しかし」


「対価……い、一体何を差し出せば……」


 うむうむ、流石は6歳児には見えない早熟で聡明なセラフィルとアリシア。

 ちゃんと自分の置かれてる状況と立場はわかってるようで何よりだわ。


 確かに、セラフィルは五大国が一角である超大国アルタイル王国の第一王子。

 アリシアはアルタイル王国の大貴族であるヘルヴィール公爵家の御令嬢だけど……


 所詮はまだ子息と令嬢に過ぎない。

 まぁ王子のセラフィルはそれなりの権力は持ってるだろうけど、それでも大きな権力を持ってるのも、莫大な資金を持ってるのも2人の両親であって子供の2人じゃない。


「ふふっ!」


 レオンは私を蔑ろにした罪を許して欲しいって願いのために、モフモフの対価を差し出して支払った!


「さぁ、セラフィル、アリシア。

 お前達は私に何を対価に支払う?」


「っ! アリー、私の後ろに」


「フィ、フィル様?

 一体何を……」


 息を呑み、アリシアを守るようにセラフィルが身構え。

 突然のセラフィルの行動に困惑し、若干不安そうな顔を表に出しながらも魔力を高めるアリシア。


 セラフィルって実は私と一緒で転生者とかなんじゃ……何この主人公みたいな行動。

 ハーレム主人公はショウだけで十分なんですけど。

 まぁ、セラフィルはショウとは違ってまだハーレムじゃ無いけど。


「ふむ」


 顔だけのクズ勇者とアバズレ聖女の子供なだけあって顔立ちは整ってるし、超大国の第一王子。

 今はハーレムじゃ無いけど、将来はわからないな。

 とまぁ、それはさておき……何この状況?


「勇者と聖女の子供である私。

 そして私の大切な人である婚約者のアリシアも死して償え、という事ですか……」


 あ〜、なるほどね。

 だからセラフィルは守るためにアリシアの前に出たってわけか。


「ふふ、そうだと言ったら?」


 油断なく周囲を警戒し、真っ直ぐに私を見据えるセラフィルが……


「っ! フィル様!?」


 ほほう……いきなり膝を着いて、頭を地面に擦り付けて土下座しちゃったんですけど。

 何のつもりだろ? アリシアみたいに声を出さなかった自分を褒めてあげたい!!


「確かに、貴女にとってあの2人の子供である私は殺したい程に憎い存在でしょう。

 しかし、アリシアは違う」


「フィ、フィル様! 何をっ!!」


「この期に及んでこのような事を口にするのは、虫のいい話だとは理解しているつもりです。

 ですが……どうか、アリーの事は助けてください」


「ふむ」


 ……なるほど、これは完全に勘違いされてるな。

 いくらセラフィルがクズ勇者共の子供だろうと、アリシアが私の処刑に関与している大貴族の令嬢だろうと。


 それだけで当時の事に直接関係のない2人を私が殺すと?

 私がされたのと同じようにクズ勇者共の大切な人を殺して、復讐すると?


「失礼な……」


「「えっ?」」


「お前達は勘違いしてる。

 別に2人を殺すつもりは無い」


 確かに必ずクズ勇者共に復讐するけど、私は復讐者であって殺戮者では無いのだっ!


「それに、お前達に要求する対価はもう決めてる。

 ふふっ! 対価は……お前達自身。

 私はお前達をもらう」

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