第252話 闘聖位戦 その1

『大変お待たせ致しました!

 では、これより……聖位闘技大会、本戦4日目! 闘聖位戦を開始しますっ!!』


 マイク代わりの拡声魔法を使った司会のアナウンスが闘技場中に響き渡り、同時に観客達から割れんばかりの大歓声が巻き起こる。


 ガスターとマリアナが何やら愚痴ってるけど……失礼なヤツらめ!

 人を自分達のストーカーみたいに言いやがって!!


 まぁ確かに、クリスの時は面白そうだったから丁度2人がいた時にわざとやったわけだけど……

 今回はお前達が勝手に来ただけだろうが! って声を大にして言ってやるわ!

 っとまぁ、それはそれとして……


「むふふ」


 よ〜し! 始まった!!

 まぁ始まったと言っても、全員で32名が出場してるから一回戦目はトーナメント形式で全16試合。

 私の出番は第3試合だから出番はもうちょっと後だけど。


『機嫌が良いね。

 珍しく、口元の口角ががちょっとだけ上がってるよ?』


 まっ、何と言ってもこの聖位闘技大会が始まってからの予選を含めた4日間。

 復讐対象を目の前にして、ずっとちゃんと我慢してたわけだし。

 そして何より! 私はこう言ったお祭りが昔から結構好きなのだ!!


『あはは、昔からって、つい4日前にお祭りデビューしたばかりの癖に〜』


 う、煩いな。

 確かにそうだけども……昔から憧れてたんだよ! こっちは!!

 憧れも、好きも大した違わないじゃん。


 とにかく! 私の出番は第3試合。

 エレナは15試合目で山が違うから、決勝まで合わないけど……ふふっ! フェリシアは私と同じ第一ブロックの第7試合!!


 フェリシアとは準決勝でぶつかる事になる!!

 私と同じブロックになるとか……ぐふふ! クジ運のないヤツだわ!!

 せいぜい決勝戦の前座で消えるが良い!!


『どうせ、悪魔ちゃんが何か仕込んだんでしょ?』


 ふふん! 私にかかればクジの結果なんてどうとでもなるとだけ言っておこう。

 あぁ〜、大勢の人間達が観てる中でフェリシアを徹底的に叩き潰す……想像しただけでゾクゾクるすわっ!!



 ワァァァァッッ!!



 おっ、第一試合が終わったか。

 どれどれ、勝者はっと……うっわ、なにアイツ。

 金の長髪なのは別に良いんだけど、なんて言うか……仕草がいちいちキザっぽくて何かキモイ。


 実力はまぁまぁあるみたいだし。

 そこら中からキャーキャー黄色い歓声が上がってるし、会場の反応を見るにどうやらそれなりの有名人らしいけど。

 絶対にアイツ、ナルシストじゃん。


「ん?」


 と言うか、アイツどっかで見た事があるような……う〜ん、思い出せん。

 何か既視感があるんだけどなぁ〜。



『第一試合、勝者はここヴァリエ騎士王国にて騎士王フェリシア様を守護する選ばれし10人の騎士。

 十騎士が1人! 氷剣のモラール!!』



 モラール、このニュアンスやっぱりどっかで……


『あっ、アレじゃない?

 ほら、悪魔ちゃんが3カ国連合と戦争した時に咆哮ブレスで消し飛ばしたSランク冒険者』


 あっ! そうだそうだ! そう言えば、そんなヤツもいたわ。

 って事は私の勘違いかな?



『流石は優勝候補の一人!

 今は故人となってしまいましたが、Sランク冒険者であった兄、双極のラモールと共にその名を轟かせた実力は本物だっ!!』



 このアナウンスが実況みたいになってるのは良いとして……コイツ、あのSランク冒険者の弟かよ!!

 道理で何か既視感があると思ったわけだわ。



『では! この興奮が冷めやまないうちに次の試合に参りましょう!!』



 あ〜、何かわかりそうで分からないモヤモヤも晴れた事だし!

 私の出番の第3試合だし、本来なら皆んな身体を動かしてアップやら精神統一やらしてる事なんだろうけど……


 ふっふっふ〜ん! 私には関係無い事!!

 どうせ一回戦の相手なんてどうでも良い有象無象だし、このままゆっくりと出番が来るまでシルヴィアに抱っこされた状態で寛ぐとしよう!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る