第242話 その名を連呼するな!

「失礼します。

 純白の翼の皆様をお連れしました」


 すぐに表情に出ちゃう、新人受付嬢に案内されること数分。

 ノックもせずに、いきなりギルドマスター室を開けちゃったところを見るに……ふっ、まだまだだね!


 とまぁ、それはさておき。

 いざ! ヴァリエ騎士王国王都シュヴァリエ支部のギルドマスターと副ギルドマスターに対面じゃあー!!


「Aランクパーティー純白の翼の皆さん。

 冒険者ギルド、ヴァリエ騎士王国王都シュヴァリエ支部へようこそいらっしゃいました」


 若干苦笑いを浮かべたものの、すぐに柔らかな笑みを浮かべる美女と、同じく苦笑いを浮かべたけど慌てて取り繕って一礼する青年。


「私がシュヴァリエ支部のギルドマスター、カティラといいます」


「同じく、副ギルドマスターのジンと申します」


 美女の方がギルドマスターのカティラで、できる秘書って感じの青年の方が副ギルドマスターのジン。

 まっ! 最初から知ってたけどな!!


「ガルド殿から純白の翼、皆さんの話は伺っています」


「話?」


 ガルドのヤツめ。

 私にずっとギルドマスターだって事を隠してたくせに、一体どんな話を……事と次第によっては……ふふふ。


「はい、女性5人に男性1人の計6名。

 全員がAランク冒険者にして、Sランク冒険者であるガルド殿以上の実力を誇るから決して外見で皆さんを見くびるなと」


 なるほど。

 やっぱ予想通り、その話が受付嬢にまで通達されてたから、この新人受付嬢は焦ってたわけね。


「っと、申し訳ない、どうぞお好きなところに掛けてください。

 ジン、お茶の用意を」


「わかりました」


 まぁ、座れと言われたから座るけど……ふっ、勝ったな。

 確かにふわふわでこよ程よい弾力、それなりに良いソファーだけど、我が家のモノには及ばないっ!!


「さて、早速ですが。

 貴女が純白の翼のパーティーリーダーである、レフィーさんでよろしいですか?」


 よろしく無い!

 いや、カティラの言ってる事は何も間違ってないからよろしいんだけど……そうじゃ無くてっ!!


「あの……どうかしましたか?」


「お気になさらず、恥ずかしがっていらっしゃるだけですので」


「貴女は」


「申し遅れました。

 私は純白の翼において、パーティーリーダーであるレフィーお嬢様の専属メイド長を務めているシルヴィアと申します」


 純白の翼!!

 このメッチャ恥ずかしいパーティー名を連呼しないでっ!

 と言うか、何でシルヴィアは臆面もなく淡々と普通にパーティー名を名乗れるの!?


「せ、専属メイド長……?」


「はい、それが何か?」


「い、いえ」


 何やら黙って控えていた受付嬢が困惑しちゃってるみたいだけど、そんな事はどうでも良い!


「それで、シルヴィアさん。

 恥ずかしがっているとは?」


「レフィーお嬢様は人見知りなのです」


 そうじゃ無い!

 いやまぁ、それもあるけども! 今はそうじゃ無いの!!

 くっ、何故こんな恥ずかしいパーティ名に……私は純黒が良いって言ったのにっ!!


『いや、それも大差ないと思うけど?』


 は? 何言ってんの??

 原初の悪魔にして魔神! 魔国では大魔王で、こっちの大陸では魔王を名乗ってるこの私が純白の翼って……イメージってもんがあるでしょうが!!


『それなら問題ないでしょ。

 悪魔ちゃんの髪色は白の強い白銀だし、色のイメージで言うと純白で間違ってないよ』


 だから嫌なの!

 6人パーティーなのに、それじゃあ如何にも私だけを強調してるみたいじゃんか!


『実際、その通りだしね』


 っ! しかも私がリーダーだから余計に、私が自己顕示欲の塊みたいに見えちゃうじゃんかっ!!

 くっそぉ、何で私以外皆んな満場一致でこのパーティー名に……こんな事になるなら平等を喫して多数決なんて言わなきゃよかったっ!

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