第239話 これはサプライズです
「っ──!」
「──」
「ん……」
なんか周りがうるさいなぁ。
「ですから! 緊急事態なのです!!
Aランク冒険者であるレフィー殿、シルヴィア殿、ミーシャ殿の3名にはギルドマスターからの緊急招集が出ていると言っているでしょうっ!?」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい」
「騎士殿、しかし……」
「もう一度言いますが、これは国王陛下とギルドマスターお2方による連盟での招集です。
件の3名には早急に王城へと出向いていただきたい」
「しつこいなぁ……何度も言ってるけど! 今、レフィー様は眠ってらっしゃるんです!
騒がないでもらえます?」
誰かとミリアが何か揉めてるのかな……?
「ミリア様も少し落ち着いて下さい。
遮音結界は展開してますけど、あまり大声を出したら陛下を起こしてしまうかもしれません」
「っと、ごめん。
コイツらがしつこいからつい」
「お嬢様がお目覚めになられましたら出向きますので、今はお引き取りを」
「申し訳ないが、これは国王陛下が直々の勅令です。
最大限丁重にとの事でしたが、私も皆様をお連れせずに帰るわけにもいかないのです」
「騎士殿っ!
この者達は陛下の命に逆らっているのですよ! 何故、強制的に連行しないのですか!?
冒険者の分際で陛下の命に反するなど──」
「ん、んぅ……」
……あれ?
「ふぁ〜」
おかしい。
何か外が煩い事はまぁ良い。
それより問題なのは……
私は確か、慌てふためく人間達の滑稽な姿を見るために世界樹の上にいたハズ……なのに何でベッドの上に?
意味わかんないんですけど……
『意味がわからないって、そんなのわかりきってるでしょ?』
じゃ、邪神……いいや! 認めない!!
そんな事は断じて認めないぞっ!!
「おはようございます、レフィーお嬢様」
「ふふ、よく眠れましたか? ご主人様!」
「シルヴィア、ミーシャ」
おはようございます、よく眠れましたか……やっぱり邪神の言う通りなのか?
つ、つまり、この私が! 私とした事が寝落ちしてしまったとっ!?
「むぅ……」
くっ、何たる失態! 何たる屈辱!
まぁ、万が一に……億が一にこうなる事も考慮して録画もしてるからまだ良かったものの。
せっかく、世界樹に気付いて慌てふためく人間達を見て優越感に浸ろうと思ってたのにっ!
リアルタイムで見たかったのにっ!!
「レフィーお嬢様、まだ寝起きで悔しがっているところ申し訳ありませんが。
アラン王並びに、冒険者ギルド王都フェニル支部ギルドマスターであるガルド、両名からの使者がやって来ております」
使者……あっ、外でミリア達と何やら言い合ってるヤツらか。
しっかし、アランとガルドからの使者?
と言うか! ガルドのヤツめっ!!
ギルドマスターのくせに、結構最近までその事を私に隠してやがったからな。
な〜にが結構有名な話だから知ってると思ってただ! 私を仲間外れにしたこと、許すまじっ!!
「あの、ご主人様……苦しいのですが……」
「あっ、ごめん」
ミーシャに抱き着いてたのを忘れて思わず力が入ってしまった。
と言うか、今更だけどここは?
「ここは、王都にあるホテルの一室です」
おぉ、さすがはシルヴィア。
ドンピシャだわ。
けどなるほどな、ホテルの一室だったから使者が部屋の前まで来れたってわけね。
けど……
「何の用だろ?」
う〜ん、全く思い当たる節がない。
世界樹の事だってアラン達にもちゃんと根回ししてるし、ガルド達にも……
「あっ」
そう言えば、ガルドとクリスティアに言っとくの忘れてた……こ、これはもしや怒られるヤツなのでは?
ま、まずい! この前ガルドがギルドマスターだって判明した時に報連相は社会人の基本ってガルド達に力説したばかりなのにっ!!
「ミーシャ」
と、とりあえずミーシャをモフって落ち着かなければ!
ふぅ〜……よし! これは断じて忘れてたわけじゃない!
皆んなに報連相の重要性をよりわかってもらうためのサプライズ!! うん、完璧だわ。
「ふふっ」
ガルド達が何を言おうが、サプライズで押し通してやるっ!
ふっ、私に怖いものなど何もないのだ!!
「じゃあ、お城に行こう」
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