第13章 世界樹創造編

第226話 5つ目の大国

「それで、何のようだ?」


「おいおい、俺たちはせっかく出向いたお客様だぞ。

 その言い草は酷いんじゃないか?」


 豪華絢爛。

 床には毛の長い真っ赤な絨毯が敷き詰められ、美しくも品を感じさせる装飾がなされた空間。

 謁見の間と呼ばれる場所にて2人の人物が対峙する。


 片や不遜にして尊大な態度も許される、その態度こそが相応しいと思わせる程の覇気を放ち。

 足を組んで頬杖をついて数段高くなった場所にある玉座に腰掛ける姿はまさしく覇王。


 そんな覇王に一歩も引く事なく対峙するは1人の少年。

 美しくも強大な力を誇る美女に美少女達5人を背後に引き連れ、その口元に不敵な笑みすら浮かぶ。


「お客様だと?」


 スゥっと苛立たしげな声と共に軽く目が細められると同時に凄まじい重圧が空間を満たす。

 空気が凍りつき、壁が床が空間が軋む。


 重力が増したと錯覚する程の重圧。

 直接その重圧を向けられたわけでは無い、所謂余波に過ぎないと言うのに少年の背後に控える5人の少女達がその美しい顔を苦しげに顰める中。

 覇王の放つ威圧を真正面から一身に受ける少年は……


「文句でもあるのか?」


 その不敵な笑みを絶やす事なく、覇王の放つ威圧に対抗するように強大な魔力が揺れ動く。


「「「「「っ、はぁっ」」」」」


 呼吸すらまともに出来ずにいた5人の少女達が覇王の重圧から解放されて息を吐く。

 覇王と少年、両者の放つ凄まじい重圧。

 並大抵の者なら立っている事すらできずに、下手をすれば死に至るだろう威圧が拮抗し……


「ふっ」


「ぷっ」


 一瞬で場に張り詰めていた重苦しい空気と共に、威圧が消え失せる。


「クックック! 久しぶりだなショウ」


「おう、しかしお前なぁ……」


 ニヤリと楽しげな笑みを浮かべる覇王に対して、ショウと呼ばれた少年の顔には苦笑いを浮かび……


「ショウ様!!」


「もう!」


「流石に、びっくりした」


「心臓に悪いです……」


「ショウ様、ふざけ過ぎですよ?」


「あ、あはは……ごめん」


 背後に控えていた5人の少女達が一斉に詰め寄られて、少しタジタジになりながらも素直に謝る。


「クックック、相変わらずのようだが。

 イチャつくのは後にしてくれ」


 そんな姿をニヤニヤと笑みを浮かべながら揶揄うように言い放つ。


「っ! イチャついて無いから!

 と言うか、お前のさっきの……」


「お前らも、久しぶりだな」


「はい、お久しぶりです」


「こんにちは!」


「どうも」


「お久しぶりです」


「陛下に向かって貴女達ね……」


「いや、堅苦しいのは好きじゃねぇし。

 別に構わねぇぞ」


「陛下まで……はぁ、わかりました。

 では、改めましてお久しぶりでございます。

 獣王……いえ、獣魔王レオン様」


「だから堅苦しいっての」


 跪きはしないまでも、美しくカーテシーで挨拶をした銀髪の美女に覇王……魔王が一柱、獣魔王レオンが苦笑いを浮かべる。


「って、無視すんなって!

 全く……レオン、お前さっきの態度は何だよ? 危うく笑っちまうところだったぞ?」


「あぁ、アレな。

 クックック、お前達に会うのも久しぶりにだから、ちょっとしたサプライズをしてやろうと思ってな。

 いかにも魔王って感じで良かっただろ?」


「サプライズってお前なぁ……まぁ、確かに面白かったけどさ。

 半年くらい前にも会ってるだろ」


「ここ最近色んな事があったからな……かなり前の事に感じるんだよなぁ」


「色んな事、ね」


「っとまぁ、世間話はこのくらいにして……世界に名を轟かせる五大国が一角、ネフェリル帝国が皇帝ショウ。

 まっ、大体の予想はつくが、お前らがこのタイミングで来たって事はただ遊びに来たわけじゃねぇんだろ?」


 レオンがスッと立ち上がり、ニヤリと笑みを浮かべる。


「あぁ、面白そうな事になってるみたいだから、当事者であるお前にちょっと話を聞こうと思ってな」


「良いぜ、何でも……俺に話せる事なら教えてやるよ」


「ん? どうかしたか?」


 若干、頬を引き攣らせるレオンをショウ達が訝しむ。


「いや、何でもねぇ。

 とりあえず食事を用意してるから着いて来い」


 踵を返すレオンの後をついてショウと5人の少女達、その場にいた全員が謁見の間を立ち去さった。

 

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