第224話 いい気味だわ!

 冒険王ガスター、大賢者マリアナと教皇クリス。

 六英雄同士の戦いは……



『く、そ……』



 全身傷だらけのボロボロになったクリスが負け惜しみの言葉を漏らしながら倒れ伏す。


「まっ、こうなるよね」


 そもそも、この戦いは最初から結果が見えていた一戦。

 ガスターは近接戦闘、マリアナは魔法戦闘に特化しているのに対して、クリスは守りに特化してるし。


 確か……聖騎士の中でも最上位である聖守護騎士ガーディアン? とかだった気がするけど。

 とにかく! いかに同格たる六英雄同士とは言えども、戦闘に特化したガスターとマリアナを相手に守りに特化したクリスが一人で勝つ事は不可能に近いのだ。


『真面目な感じで解説してるところ悪いけど、頬っぺたにケーキのクリームが付いてるよ?』


「……ん? 何の話?」


『いや、思いっきり手で拭っておいて流石にそれは……』


 まっ、何かほざいてる邪神は無視するとして。

 ここにクズ勇者とか、アバズレ聖女とかがいればまた話は変わってくるだろうけど。

 残念ながら私が支配下において封鎖してる現在、この聖都デサントに乗り込んでくる事は不可能だし。


 クリスに暴行を加えるって任務クエストがあるから、聖都デサントに住む人間共はもちろん。

 部下である聖騎士や神官、聖職者達の中にすらクリスの味方は存在しない。


 まぁ、所詮は人類種の中でではあるけど、仮にもガスター達は人類最強格の強者達なわけだし。

 一般人とか聖騎士達がクリスの味方をしても意味は一切無かっただろうけど。


「さてと」


 コレで鬼ごっこも終了した事だし!

 人間共が任務をクリアするためにクリスを痛め付けるのをちょっと観察したら……


「ふふふ! そろそろ私の出番!!」


『悪魔ちゃんって、周囲に誰もいないと結構普通にしゃべるよね』


「む」


 失礼な。

 確かに、かつての私ならいざ知らず、今の私は例え人前であろうとも普通に話してるわ!


『いや、確かにシルヴィア達眷属だけの前だとかなりマシだけど。

 他の人の前だと結構ぎこちなくて辿々しいよ?』


「う、うそ……」


『本当』


 そ、そんなバカな!?

 他人恐怖症を克服したこの私が、ぎこちなくて辿々しい何なんて……み、認めん! そんな事は断じて認めな〜い!!


「そ、そうだ!」


 シルヴィアも、ミーシャも、ミリアもリリィーも、グランまでもが人前でも喋れて偉いって私を褒めてたし!

 コレは邪神の勘違い、思い込みなのだ! うんうん、そうに違いない!!


『まぁ、彼らは悪魔ちゃんの過去を知ってるからね……』


 全く、勘違いとは言え結構衝撃のカミングアウトをしやがって。

 ちょっとだけ取り乱しちゃったじゃんか。

 さてと、クリス達の様子は……



『ぐ……』


 ムキムキな男の拳が鳩尾に突き刺さる!


『がっ……』


 聖騎士の蹴りが側頭部に直撃!



「ふ〜ん」


 これはこれは。

 マリアナの魔法で身動きができないように拘束された上で、順番に人々から暴行を受けてるけど……思ったよりも結構ガチでやられてるな。


「なになに〜」


 手を抜くと余計に私の怒りを買うかもしれない、か。

 ぷぷ! いい気味だわ!

 そうとなれば、か弱い女子供のためにちょっと協力してやろう!


「魔刀」


 死なないように刃は潰して。

 確実に苦痛を与えるように……


「付与者」


 激痛と、苦痛の概念を付与してっと!


「むふふ! こほん……脆弱なる人間共。

 コレを使うが良い」


 拡声魔法で神々しく、凛々しく告げると同時にクリスの眼前に魔刀を顕現!

 さてと、じゃあ痛め付けられるクリスの様子を楽しく観ながら登場シーンでも考えるとしよう!

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