第219話 人間だし、問題なし!

 流石に聖都デサントにいる全ての人間共、全員を個々で把握するのは……まぁ普通にできちゃうけど。

 面倒くさいから聖都を含んだここら周辺の支配領域全域の範囲内に存在する全ての人類を対象に設定してっと!


「さぁ、真実を知るが良い。

 〝付与者〟」


 黙って……と言うよりは、付与者の権能で縛ってるから声も出せずに平伏してる人間共に付与するのは当然、冤罪で拷問を受けて殺された過去の映像な訳だけど……


 ねぇねぇ! 今の私、めっちゃカッコよくなかった!?

 純白の翼を広げて、朝日を背に背負い。

 解放した魔素が陽光に反射して神々しい光が降り注ぐ中、上空から冷徹に人間達を見下ろして静かに真実を告げる。


 むふっ、むふふ、むふふふふっ!!

 今日の私は不本意ながら子供扱いされる事が多々あるいつもの私とは一味違う!


 後でシルヴィア達皆んなと、魔国でお留守番のファルニクスにも見せて褒めてもら……

 こほん、私の超絶カッコよくて威厳に溢れる姿を見せつけて褒められてあげないと!!


『全く、悪魔ちゃんは素直じゃ無いね。

 本当は褒めて欲しいくせに』


 っ、うぅ〜!


『照れちゃって。

 本当に悪魔ちゃんはツンデレだよねー』


 う、煩いわっ!

 誰がツンデレじゃ! 傍観者は黙って見てろ!!


『はいはい、必死になって可愛いんだから』


 このヤロウ……アホ! バカ邪神!!

 そんなんだから女の子にモテないんだよ!


『いや、だからね』


 ふん! もう煩い外野は無視だ無視。

 そもそも、今は忙しくてバカ邪神に構ってあげる時間は無いし。


『私の扱いが酷い……』


 さてと、邪魔が入ったけど気を取り直して!

 普通に記憶を付与してもいいんだけど、それじゃあ記憶の追体験のせいで1時間ほどの時間がかかる。

 はい、こんな時に役に立つのがこの時短テク!


 追体験でゆっくりと記憶を定着させる工程をすっ飛ばして、付与する情報をギュッと凝縮して一気に纏めて叩き込む。

 これなら一瞬で記憶情報を全員に付与できる。


 まぁ、それでも強制的に膨大な情報を一気に付与したから情報の整理に数分はかかるだろうし。

 膨大な情報を処理しきれずに廃人になっちゃう可能性も無きにしも非ず。

 人間程度の情報処理能力だと確実に現在進行形で凄まじい頭痛が襲ってるだろうけど……


「ふむ」


 誰も一言も声を発さないし、微動だにすらしないんだけど?


『そりゃあ、そうでしょ。

 さっき悪魔ちゃんも自分で言ってたけど、そうなるように悪魔ちゃんが付与で縛ってるからね』


 ……も、もちろんそんな事はわかってるけど!?

 別に何で誰も声を出さないんだろう? とか! ショック死する程に凄まじい頭痛を無言で耐えるとか人間ヤバイとか!

 これっぽっちも! 1ミリも思ってないし!!


『ふ〜ん、まぁそう言うことにしておいてあげるよ』


 何この上から目線……うぜぇー。

 絶対にいつかギャフンと言わせてやるからな……とりあえず、人間共の縛りを解除して……



「ぎゃぁぁっ!?」


「いやぁぁっ!!」


「頭が、頭が割れるうぅ!!」


「死ぬぅぅっ!」


「ひ、ぁっ……」


「ひゃっ、あひゃっひゃっひゃっ!」



『うわぁ……』


 流石の邪神もちょっと引いてるけど無理もないか、何たって全員が一斉に絶叫しながらのたうち回ってるし。

 顔は涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃ、男女問わず失禁する者多数。

 中には白目を剥いて痙攣してるヤツとか、気が狂っちゃった人間もいるみたいだけど……


 うん! まぁ、細かい事は気にしない!!

 だって相手は人間だし。

 仲良くなった一部を除いて基本的に人間共は大っ嫌いだし。

 それにどのみち、まだクズ勇者共にバレたらダメだから最後には元通りにしてあげるつもりだし!


「ふふん!」


 いやぁー、私って本当に優しいわ!


『でもさ、勇者サイドには聖女ちゃんもいるわけだし。

 アナスタシアに露見した以上、これ以上隠し通すのは不可能なんじゃない?』


 あぁ、それなら多分問題ない。

 さぁ! ここで邪神にクエスチョンっ!

 な〜んで、アナスタシアはクリスに私を止めるように神託を下そうとしたでしょう?


『あぁ、なるほどね。

 そう言う事か』


 ふふふ、邪神もわかったみたいだな。

 何でこれまで何度もアナスタシアからの神託を受けて来た女神の愛子。

 女神の御使と呼ばれるアバズレ聖女じゃ無くてクリスに神託を下そうとしたのか?


 それは簡単!

 アナスタシアはアバズレ聖女に神託を下せない。

 つまり! ここであった事を隠蔽すれば私の事がアナスタシア経由で露見する可能性は限り無く低い!!


『単に神託と言っても、それなりに条件は必要だからね』


「その通り」


 神託とは言ってしまえば超高度な魔法通信。

 今人間共が膨大な情報を増やされてのたうち回ってるように。

 人間風情の情報処理能力と魔法適正じゃあ神託を処理するのは難しい。


 下界に顕現して直接の伝えれば話は別だけど。

 既に勇者共も、アナスタシアも私の監視下にある今、そんな事は不可能!

 無理に神託を下しても思考回路か魔力回路が焼き切れて廃盤になるだけだろうし。


 じゃあ神託はどうやって下されるのか。

 アナスタシアが人間に信託を下す条件はたった一つ。

 それはアナスタシアを信仰する敬虔な信者である事。


 信仰心という回路があれば、廃人にならないようにアナスタシアが保護する事ができる。

 だから神託を下せるのは、ほんの一部の敬虔な神官や信者に限られるわけだけど。


『まさかアナスタシアの加護を持っている聖女ちゃんに神託が下せないとはね。

 流石にアナスタシアも想定外だっただろうね』


 まぁ、アバズレ聖女は前前世と同じく地球の日本から召喚されたみたいだし。

 ラノベとか乙女ゲームとかみたいな感じで自分がこの世界におけるヒロイン主人公

 この世界の神だと思い込んでるからな。


 世界を救った勇者パーティーの中で、主神たる女神アナスタシアから神託を受け取る事ができるのがクリス一人だけとか……ぷぷっ、嘆かわしい!!


「さてと」


そろそろ情報の整理もついて、人間共も落ち着いてくるだろうし……


「ふふ……遊び復讐を始めよう!」

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