第200話 くそっ! こんなハズじゃ……

 視界を埋め尽くすは一面の赤!

 迫り来る拳大程度の小さな無数の火球によって形成された炎の弾幕!!


「うん」


 せっかくカッコよくビシッと決めゼリフを言い放ったのに……

 この弾幕のせいでマリアナには私のカッコいい姿は勿論、声も一切届いて無いな。


 いや、まぁ今回は最初から隔絶した力の差を見せつけるんじゃ無くて。

 私よりも強いって勘違いしてる滑稽な姿を存分に嘲笑ってから、一気に絶望のドン底に叩き落としてやるつもりだから別にいいんだけどさ。


「ふふふ、どこまで避けられるかしら?」


 とか何とか、マリアナは楽しそうに笑みを浮かべて言ってるけど……ふっ! こんなもの私にかかれば全部余裕で避けられるのだよ!!


 並列思考を可能として演算領域を大幅に拡大させる森羅万象のさらに上位スキルである神羅万象。

 そして数百倍に思考速度を加速させる思考加速のスキルを持ってるから、ぶちゃけこの程度の弾幕なんて余裕で見切れるんだけど……


「くっ、なんて数!」


 ふっふっふ〜ん! この焦りながらも必死に何とか迫り来る火球の弾幕を回避するフリ。

 もうこれアカデミー賞モノじゃない? 本当に自画自賛しちゃう程素晴らしい演技だわ!!


「あら、今のを受けてその程度なんて……ふふ、流石は愚かにも私達に復讐なんて無謀な事をしに来た悪魔ちゃん、少しはやるわね」


 うんうん! いい感じに勘違いしてる!!

 ちょっと、おっぱいが大きくてスタイルが良くて、容姿も良いからって調子に乗ってるマヌケめ!

 まぁ、私の演技がハイレベル過ぎるから仕方ないけどな!!


「まだまだ休憩は早いわよ?」


 マリアナがそう言うと同時に今度は無数の水の剣が頭上から降り注ぐ。


「さぁ、逃げ惑いなさい!

 ふふふ、頑張って避けてね?」


 風の刃が吹き荒れ。

 土の槍が乱舞し。

 バチィっと青白い雷球が紫電して。

 火球が地面を砕く。


 どれもそこまで威力の高く無い、言ってしまえば初級の魔法とは言えそれを放つのは救世の六英雄が1人。

 人類最強の一角にして最強の魔法使いたる大賢者マリアナ。


 国立魔導学園の生徒たちとは比較にならない程の威力と精度。

 この魔法の弾幕だけで殆どの者を制圧し、一軍を壊滅させる事も不可能ではないだろう……


「くっ……」


「あら、もう終わり?

 噂に聞く悪魔王国の王の力はこの程度かしら?」


 全身に傷を負い、地面に膝を着く私にマリアナが余裕の笑みを浮かべて首を傾げる。


「まぁ、あの弾幕の殆どは避けたと言う事実は誉めてあげるわ。

 とは言え、流石に全てをかわしきる事はできずに被弾。

 徐々に傷を負い、かなりのダメージを蓄積したようね」


「……」


 こ、これはやばい! まさかここまでだなんて!!

 まともに前が、マリアナの顔が見れない……


「うふふ、そう自身を恥じる事は無いわ。

 貴女は悪魔の王を名乗るだけあって、私が今までに屠ったどの悪魔よりも強かったわよ?

 けど、相手が悪かったわね」


「っ!!」


「どうしてかはわからないけど、せっかく転生できたのだから愚かにもこの私に。

 私達に復讐なんて試みなければ安らかに生きながらえれたでしょうに」


 く、くそっ! こんなハズじゃ……


「愚かでバカな可愛らしい悪魔ちゃん。

 少し期待はずれだったけど……せめてもうこれ以上苦しまないように一瞬で終わらせてあげるわ」


 マリアナから先ほどまでとは比べ物にならない程に強大な魔力が吹き上がる。


「再び神聖なる白き炎によって滅されなさい! 聖なる白炎セイクリッド・フレイム!!」


 小さな太陽の如き、半径数メートルにも及ぶ白き炎の球体が地面を含めて半球状に私の全身を包み込み……


「は……?」


 何事も無かったかのように綺麗さっぱり消滅した。


「ぷっ!」


 あぁ〜! もう無理!!

 もう我慢できないっ!


「ふふふ、あはっ! あはははっ!!」


 せっかく! せっかくもっとやられたフリをして、もっともっとマリアナを調子付かせてから絶望のドン底に叩き落としてやるつもりだったのに!!


 もう私に勝った気になって。

 実際は勘違いしてるだけなのに得意げな顔で何やら語りだすとか、もう滑稽過ぎて笑いが我慢でき無かったじゃんか!


「い、いったい何が起こって……」


 さっきお前が私に言った事を言い返してやるわ!


「ねぇ、大賢者様。

 お前の力はこの程度?」


「っ!」


「ふふふ、本当にこの程度の魔法が効いてると思ってた?

 あははっ! 残念、お前如きの攻撃なんて、私には効かない」

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