第199話 全てを奪ってやる!

「遊ぼう、ね。

 うふふ、私も随分となめられたモノだわ」


 別にナメてかかってるわけじゃ無くて、純然たる事実を言ってるだけなんだけどなぁ。

 ガスターよりは勘が良くて、現実を見る事ができるようだけど……所詮はこの程度か。


 まぁ確かに魔素エネルギーも押さえ込んでる今の私は、一般人からしてみればただの美少女。

 私の力の一端を垣間見ようとすると、最低でも魔王に覚醒する程度の実力は必要になる。


 だから、マリアナが私の実力を!

 隔絶した彼我の力量差を理解できないってのも当然っちゃあ当然なんだけども……何かちょっとガッカリだわ。

 楽しく遊べたら良いんだけどなぁ〜。


「魔王だか何だか知らないけど……ちょうど貴女達のせいでずっと会議続きでうんざりしてたところなの」


 それは知ってる。

 ふっふっふ、魔王の誕生を受けて対応会議してたもんね。

 そこに3カ国連合滅亡の一報を受けて……


 ぷぷっ! 愚かでバカな勇者共め!!

 時間の無駄なのに、それはもう必死に会議を1週間も毎日のようにずっと続けてちゃって!


 あぁ、今思い出しても笑えるわ〜。

 必死に時間をかけて対応策を練ったとしても、勇者共程度の雑魚がどれだけ足掻こうが私の前では無意味!

 会議が監視されてるとも知らずに本当、ご苦労な事で!!


「うふふ、申し訳ないけど貴女には私の気晴らしに付き合ってもらうわよ?」


 ふむ、何か魔力を迸らせて凄んでるけど……ここは驚いてビビったフリをした方がいいかな!?


「な、なんて魔力。

 大賢者の力がこれ程だなんてー!」


 ふっ、どうだ!

 私の完璧すぎるこの演技!!


『えぇ……』


 ふっふっふ〜! 演技も完璧にこなせちゃうとか、我ながら自分の才能が怖いわ〜!!


『悪魔ちゃん、棒読み……』


 なぁ、邪神!

 お前もそう思うでしょ? ふふん! ハリウッドで今すぐにでも主演をはれちゃう私の演技力を誉めても良いんだよ?


『あ、あはは……うん、そうだね。

 悪魔ちゃんは凄いよー』


 ふっふっふ〜! 当然なのだよ!!

 ところで、さっき何か言おうとした?


『いや、何でもないよ』


 ふ〜ん、なら良いけど。

 さてさて! じゃあ私の素晴らしい演技でもうちょっとマリアナを揶揄ってやろうかな!


『本当に悪魔ちゃんは凄いよ……色んな意味で』


 邪神が何やら呟いてるけど……まぁ、私の事を称賛でもしてるんだろう!

 ぐふふ、ガスターの時は真正面から叩き潰してやったけど……


 勝てるって希望を持たせてから一気に絶望へと陥す! ってのもうも面白そうで悪くない!!

 調子に乗ってだけど、私の本当の実力を知って絶望に歪んだマリアナの間抜けな顔……想像するだけで笑える!!


「っ! こ、コレは……転移魔法?」


 ふむふむ、マリアナの魔塔と国立魔法学園がある中央都市アミュルーからほど近い広野か。

 まぁ、魔法をぶっ放してドンパチやり合うなら、ここなら人もいないし邪魔なモノも無いから丁度いいってわけね。


「うふふ、正解よ。

 流石は悪魔ってところかしら? まぁ、このくらいはしてくれないと面白く無いのだけれど」


「な、なんで人間にこんな力がー」


 ふふん! 騙されてる、騙されてる!!


「さぁ、貴女のお望み通り遊んであげるわ。

 愚かで可愛い、悪魔の王様ちゃん」


 余裕の笑みを浮かべながら拳程度の火球を無数に浮かべるマリアナ。


「頑張って避けてね?」


 あぁ、この顔が絶望に歪む様が目に浮かぶ!

 その自信を、尊厳を、力を! お前が持つ全てを……


「奪ってやる」

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