第189話 趣ある馬車の旅も悪く無い!

「お嬢様……レフィーお嬢様!」


「ん……ぅん?」


「起きてください。

 到着いたしましたよ」


「ん……わかった。

 起きる……んん〜っ! ふぅ……」


 本音を言うともっとこのふかふかぬくぬくなベッドで自堕落に惰眠を貪りたいところだけど。

 まぁ、保護者シルヴィアがいるから二度寝は不可能に近いし。

 目的地に到着したと言うのならば仕方ない!


「ん、起きた!」


 ベッドから降りるついでに、物質創造と換装魔法で身支度を終わらせてっと。

 これでよし!


「では、レフィーお嬢様こちらへ、御髪を整えさせていただきます」


 え? いや、いま身支度は終わらせたんですけど……それにもう目的地に到着してるわけだし。

 別にわざわざシルヴィアに整えてもらう必要は無……


「急いでくださいませ」


「……わかった」


 ま、まぁ身だしなみをしっかりと整えるのは淑女として当然な事だしな!

 うん! これは別にニッコリ微笑んだシルヴィアが怖かったとか、そう言う事実は一切無い!!

 別に私はシルヴィアの無言の圧に屈したわけでは断じて無いっ!!


『あはは、まぁそう言う事にしておいてあげるよ』


 ほ、本当に怖かったわけでも、屈したわけでもないからなっ!?


『はいはい、わかってるわかってる』


 このクソ邪神め……何か含みがあるような気がしないでも無いけど。

 まぁ、わかったのなら、ムカつくけど今は気分が良いから寛大な心で許してやろう!


「おはようございます、ご主人様!」


「レフィー様、おはようございます!」


「ん、ミーシャ、ミリア、おはよう」


 グランは……私が朝支度をしてるから空気を読んで外に出てるか。

 流石はグラン! もう最低な顔だけのクズ勇者なんかとは大違いの紳士ぶりだな!


「どうぞ、私とミーシャで用意したココアです」


「ん、ありがと」


 んんーっ! 流石はココアとミルクの扱いならばシルヴィアにすら引けを取らないミーシャとミリアの合作!!

 にゅふふ! あぁ、この私とした事が、美味しくてついつい頬が緩んじゃうわ〜!


「ご主人様! よく眠れましたか?」


「ん!」


 よくぞ聞いてくれました!

 今回は目的地たるこの場所に来るのに、流石に目立つだろうから魔国で実用化した魔導車……車を使うわけにはいかないし。

 かと言って転移とかじゃあ面白くない。


 そんな訳で! 今回の移動は趣ある馬車での旅にしてみた訳だけど。

 それはもう気分良くグッスリ眠れた。

 案外、趣ある馬車での旅も悪く無いわ!!


『いやいや、空間魔法で馬車の内部を拡大して、王宮の一室みたいになってるし。

 そこには悪魔ちゃんがさっきまで気持ちよさそうに寝てたベッドがまであるのに、趣ある馬車での旅って言うのは流石に無理があると思うんだけど……』


 何を言うかと思えば…… ふっふっふ〜、ちょっと内部を空間魔法で拡張して、ベッドがある程度のそこら辺にあるような低レベルな馬車と一緒にしてもらっては困る!

 聞いて驚くが良い! この馬車にはふかふかぬくぬくのベッドだけじゃ無くてお風呂もキッチンも完備してる特別仕様なのだ!!


『……いやまぁ、悪魔ちゃんが良いんだったら別に構わないんだけどね』


 何が言いたいのかイマイチわからんけど。

 とにかく! 馬車での旅にちょっと飽きちゃってお昼寝ついでにそのまま朝まで寝てたわけだけど。

 実に素晴らしい、満足のいく惰眠……こほん、睡眠だったと言える!


 いつも通り睡眠ツールこと、ユニークスキル・怠惰者スロウスの権能を使ったって事もあるだろうけど。

 やっぱりゴミを。

 寝る前に薄汚い欲望に塗れた人間共……愚かにも私に手を出そうとしたゴミをしっかりと掃除して、スッキリしたってのも大きかったと思う。


『悪魔ちゃんって可愛い顔して結構悪魔って感じだよね』


 何言ってんの? そんなの当然じゃん!

 確かに前前世では病弱なだけの普通の子供だったし、前世は淑女の鏡とまで言われた公爵令嬢だったけど……今は違う。


 今の私は全てを諦め、絶望して。

 人間共を、人類を、世界そのものを恨んで憎悪しながら悪魔に転生した存在。

 まさに憎悪の魔性とも言える原初の悪魔。


 いくら私がクールビューティーかつ可憐で可愛くてカッコいい超絶美少女とは言え、原初の悪魔にして魔神たる私が悪魔って感じをしてるのは至極当然の事なのだよ!


『まぁ、そうなんだけど。

 いつもの悪魔ちゃんをみてるとねぇ……』


 ん? 今なんか言った?


『いや、何も言ってないよ』


 ふむ……怪しいな。

 なんかちょっと失礼な事を考えられてたような気がするんだけど……まぁ良いか。

 何にせよ! ぐっすりと素晴らしい惰眠を貪れて気分爽快だから寛大な心で許してやる!!


「お待たせ致しました。

 御髪は軽く整えさせていただきましたが、念のため鏡で身嗜みをご確認下さい」


「ん、わかった。

 ありがと」


 ふむふむ……よし! どこも問題は無いな。

 しかし、いつもの魔王様風のカッコいいワンピースも良いけど、コレも……制服も中々に新鮮で良きだわ!


「よし、じゃあ行こう」


 今回の目的地。

 いざ! 魔導学園へっ!!

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