第183話 魔王会議 何か異論は?

 何も無い、ただ広大な。

 何処までも続くように見えて、実際には広いには広いが数キロ程度の広さしか無い荒野……


「クッ……」


「うぅ……」


「ぬぅ……」


「く、そっ……」


「ハァ……ゼェ……」


 そんな荒野にて、ある者は大地に伏して倒れ込み。

 またある者は肩で息をしながら膝を着く。

 そして! そんな5人を……大陸東方を支配する5人の魔王達を上空にて見下ろすは何を隠そうこの私!!


 ボロボロになった5人の魔王達とは対象的に傷どころかホコリ一つ付いてなくて。

 純白の天使のような翼を広げた、優雅かつ神々しいクールビューティーで、可憐でカッコいい超絶美少女!


「ふふん!」


 ふっ、ふふふ、ふはっはっはっ!!

 これぞ私! 始まりたる原初の悪魔にして、神たる超越者へと至った魔神の力!!

 さぁ畏怖しろ! 私の圧倒的な力と美貌、そして溢れんばかりの威厳を前に平伏して敬うがいいわっ!!


『うん、まぁ……嬉しそうで何よりだけど。

 ちょっと口角が上がってるだけで殆ど無表情とは言え、何か得意げな子供にしか見えないよ?』


 はぁ? 何言ってんの? そんなわけ無いじゃん。

 何たって5人の魔王を圧倒して、無傷で優雅かつ神々しく翼を広げて空中から魔王達を見下ろす最強の魔王様だ。


 そんな私に威厳が溢れていないハズが無いっ!

 その証拠に呼吸を乱して倒れ伏したり、膝をついたりしてるレオン達も畏怖の念を込めた目を……あ、あれ? 何故か5人とも苦笑いを浮かべて……


『だから言ったでしょう?』


 ……あ、あはは! ま、まぁアレだな。

 愉悦に浸るのはこのくらいにして!!


「ふむ」


 まぁ、当初の予定通りレオン達の実力はわかった。

 今の遊……こほん! 手合わせはノリと勢いなんてアホみたいな理由じゃ無くて、魔王達の実力を見ると言う歴とした理由があったのだよ!!


『悪魔ちゃん、そう自分に言い聞かせようとしてもダメだよ。

 今のはただ単に悪魔ちゃんが楽しみたかっただけで、現に終始楽しんでたじゃん』


 うぅっ……と、とにかく!! 5人とも流石は魔王に覚醒しただけはある。

 私とシルヴィア達眷属は別として、アーグベル達、四大都市の代表格には多少劣るけど魔国でもかなり上位の実力を誇ってるな! うん!!


 はい! てな訳でレオン達5人の実力はわかったし、もうこの場所にいる必要は無いな!

 よし、帰ろう! 今すぐ帰ろう!!


 別にノリと勢いで面白そうだからとか言う理由でレオン達と遊ぶために急遽作った神域を、保護者シルヴィアにバレてお説教される前に証拠隠滅したいとか?

 そんな事は一切無いけど、そろそろ椅子に座りたいし!


『あはは、必死だね』


 黙れバカ邪神!!


「〝治れ〟」


 レオン達の傷を治して。

 ついでに体力とか、消耗した魔素エネルギーとか、ボロボロになった服とかも元通りにしてあげて!



 パチンッ!



 はい、一瞬にして魔王会議のために作った特設会議室の円卓の前に帰還!

 さっきの神域は閉じたし、これで多分問題ない……


 ノリと勢いでレオン達とやり合って。

 途中から楽しくなって調子に乗って、殺さないように手加減したとは言え死滅の粉雪デス・スノウとか使ってやり過ぎた事はバレないハズ。


 きっと、多分、恐らく……怒られる事はない! と信じたい……


「さて」


 これは決して、別に現実逃避しているわけじゃない!

 だってシルヴィアは私に甘いし、もしもの時は上目遣いで謝れば問題ないし……


 とにかく! 今は魔王会議の途中。

 突然傷とかも治ってちょっと困惑気味に苦笑いを浮かべてるレオン達との会議を再開しないと!!


「魔王会議を再開するけど……最初に1つ聞いておく。

 言った通り、私の力は見せた。

 魔王の諸君、何か異論は?」

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