第160話 我、スイーツを所望する!!
アクムス王国が王都フェニル。
商人の聖地と讃えられる商業と流通の中心地に相応しい活気を見せる街並みを眺めつつ。
殆ど揺れの無い広々とした豪奢な馬車でフェニルの大通りをいざ行かんっ!
丁度いい僅かな揺れと、ふかふかで触り心地抜群な座席。
容赦無く襲いかかって来る睡魔という名の恐ろしい強敵と人知れず激戦を繰り広げる事数十分。
何とか睡魔を薙ぎ払い、到着した目的に降り立ったわけだけど……
「大陸統一国家! 悪魔王国ナイトメアが女王陛下ならびに御一行様に敬礼っ!!」
ババっ!!
一矢乱れぬ動きで胸に右手を当て出迎えるように敬礼する、制服に身を包んだ騎士達。
うん、何これ?
騎士達だけじゃ無くて、その奥にはメイドさん達に執事達に侍従。
果ては貴族達すらも勢揃いしてるし。
いやまぁ、確かに壮観だよ?
左右に分かれて整列してて、馬車が止まったフェニルの中心部に聳え立つ王城の庭園から正面入り口まで花道みたいになってるし。
私の本当の姿は隠蔽魔法で隠して、何かそれっぽい身代わりを使ってるから何の問題も無いわけだけどさ。
かなり慣れてきたとは言えだよ? これでも一応、人間不信なんですけど!
もうぶっちゃけ帰りたい。
今すぐ帰りたい、帰ってふかふかな布団に包まって惰眠を貪りたい!
せっかく総出で出迎えてくれたとこは悪いんだけど、もう帰っていいかな?
「レフィーお嬢様、小耳に挟んだのですが。
今回の会合用に特別なスイーツが用意されているとか」
よし、行こう!
今すぐ行こうっ!!
特別なスイーツが私を待っているっ!!
「ようこそお越し下さいました。
ナイトメア悪魔王国が女王陛下ならびに皆様方、我ら一同、皆様を歓迎致します」
奥から出てきて一礼するのは白を基調に青色の装飾がなされた制服に身を包み。
鮮やかな薄い青色の髪をハーフアップにした一人の美少女。
宰相グランツェ公爵の息女、公爵令嬢という身分でありながら王族を守護する近衛騎士達が所属する近衛騎士団の団長にして、アクムス王国の全ての騎士達の頂点に君臨する総騎士団長。
ヴァリエ騎士王国の聖騎士王。
救世の六英雄の一人である姫騎士フェリシアと双璧を成して語られる若き天才、エレナ・グランツェ。
「では、こちらへ。
皆様がお待ちになられている応接室へとご案内致します」
しかし…… 何か男装の麗人って感じで、やっぱりエレナはカッコいいなー。
まぁ、そんなエレナのお師匠様でもある私はもっとカッコいいクールビューティーな魔王様だけど!!
案内のために先導するエレナの後ろ姿に騎士や執事、従僕に貴族達の視線が集中してるし。
そりゃあ、エレナは超絶美少女だし、程よく出る所は出ていてプローポーションも良い。
貴族令嬢が騎士になるのは珍しいだけど無い事では無いし、女性騎士は普通にいる。
そんなアクムス王国で騎士の頂点に立つ存在であり、公爵令嬢と身分も申し分ない。
その上、独身で婚約者も居ないとなれば……モテないわけがない!!
まぁ、エレナは私の遊び……じゃなくて暇潰し……げふん! 弟子なわけだし!
何処の馬の骨とも知らん男にやるつもり何て毛頭ない!!
「ふふふ……」
哀れな男どもよ! エレナが欲しければこの私を倒してみるがいいわっ!!
「皆様、到着致しました」
ふむ、エレナに言いよる虫達を叩きのめす妄想をしてるうちに到着しちゃったみたいだな。
結局、お城の景色とか全然見てなかったけど……まぁ既にこのお城は隅々までマッピング済みだし別にいいか。
「扉を開けて下さい」
「「はっ!!」」
エレナの指示を受けて扉の両隣で警備をしていた近衛騎士が扉を押し開く。
応接室の中にいる人物は国王であるアランと宰相であるグランツェ公、そしてクリスティアとガルドの4人のみ。
まぁ、知ってたけど。
「では、貴方達は引き続き扉の警備を。
この会議の間、誰も中に通さないように」
「「はっ!!」」
再びエレナの指示を受けた近衛騎士達が扉を音を立てずにそっと閉めて……
「ふぅ〜」
あぁ、疲れた。
これでやっと一息つけるわぁ〜。
これも全てはこの会議のために用意されたと言う特別スイーツのため!!
「レフィー様、皆様ようこそお越し下さいました。
お疲れのところ、挨拶もそこそこで申し訳ありませんが。
あまり時間が無いので、早速本題に入らせていただきたいのですが……」
そうだった。
この会議の目的は特別スイーツじゃなくて、昨日の緊急国家会議で決定された戦争についての打ち合わせだったわ。
「ん、わかった」
「では……」
「でもその前に……スイーツを所望する!!」
うんうん、戦争の打ち合わせも大事だけど。
そんな事より、やっぱりスイーツの方が大事だよねー!!
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