第156話 戦争する事になった!

「えっと……聞き間違いでしょうか?

 今リリィーさんが冒険王ガスターの妹と仰ったように聞こえたのですが……」


「ん、そう言った」


 聞き間違いでも何でも無く、事実リリィーは今ガスターの妹だとハッキリ言った。


「な、何がどうなって……」


「クリスティア、落ち着け」


「ガルドさん……」


「お前の気持ちはわかる、俺もお前と一緒で混乱してるからな。

 だが、ここで俺達が取り乱しても話が挫折するだけだろ?」


 ふむ、流石は現役のSランク冒険者。

 驚愕に目を見開いたのも最初の数秒だけで、大きく取り乱したりはしないか。


 酸いも甘いも知っている人生経験豊富なオッサンなだけはあるな。

 これが数々の修羅場……死線を潜り抜けて来た者の貫禄ってやつか!!


「おい、お嬢。

 今何か失礼なことを考えなかったか?」


 っ! ガルドに思考を読まれた!?

 い、いや、この私を相手にガルドがそんな事をできるハズが無い。

 これは恐らく、ただの勘。


 ガルドの勘とはすなわち、長年第一線で戦って来た事で培われ、鋭く研ぎ澄まされた技能の一種。

 ただの勘だと侮る事はできないけど……例えガルドが確信を持っていようが、証拠も無ければ確証も無い!


 つまり! 今ならまだ誤魔化せるという事。

 ふっ、ふっふっふ、ふはっはっは! 残念だったなガルド! この勝負、私の勝ちだっ!!


「別に、何も考えてない」


 ふっ、どうよ?

 表情筋が死滅し、常時無表情と称されるこの私のポーカーフェイスを見破れるモノならば見破ってみるがいい!!


「目を泳がせながら言われてもなぁ……まぁとにかく俺はまだ36歳、オッサンって歳じゃねぇよ」


 いや、何言ってんの? 普通にオッサンじゃん。


「いえ、オッサンでしょう」


 おぉ、クリスティアが心底何言ってんだコイツって呆れたような顔で端的に言い放った!


「お嬢、言っておくがクリスティアは俺よりも年上で60を超えるババアだからな?」


「えっ……」


 クリスティアが、ガルドよりも、年上……この見た目でガルドよりも年上!?


「レフィー様! 騙されてはなりません。

 私は長命種であるエルフ、確かに私の年齢は62歳ですが人間の年齢に換算すると20歳過ぎです」


 あぁ、確かに言われてみればガルドは人間だけどクリスティアはエルフだったわ。


「そんな事より、何故ガスターの妹であるリリィーさんがレフィー様の眷属に?」


「クリスティア殿の仰る通りです。

 何故、アルタイル王国がリーチェ侯爵家の御令嬢がこちらに?」


 あっ、グランツェ公がやっと復活した。

 まぁそれはさておき、リリィーが養女になったなってリーチェ侯爵家だったのか。


「レフィー様、まさか誘拐を……」


 むっ、失敬な! 誰がか弱い御令嬢を無理矢理誘拐なんてするか!!

 私はゲスでクズな勇者共とは違うのだ!

 まったくアランめ、今までグランツェ公と一緒に唖然としてたくせに!!


「リリィーは、今回の復讐の協力者。

 断じて私が誘拐したり、拉致したわけじゃない」


 乗り込んで来たのはリリィーの方だし、ここに留まるって決めたのもリリィー自身。

 まぁ、確かにリリィーを養女として迎え入れた家……リーチェ侯爵家には何も言ってないけど……うん、私は何も悪くない!!


「その辺り事はガスターの顛末と一緒に説明する」


 とは言え、一から説明するのは面倒……じゃ無くて、非効率的だからいつも通りとりあえず今回の一件に関する記憶を付与して後はみんなの質問に答えれば良いか。


「あと、もうすぐ戦争する事になった」


 これでよしっと!

 ガスターの事を説明するとなると興奮して、ついついこの事を忘れちゃうかもしれないし。

 その事を考慮して事前にしっかりと伝える私って偉いわ。

 今後の予定も伝えた事ですし!


「……今なんと?」


「はい、付与!」

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