第139話 魔神降臨
「チッ」
勇者と共に魔王を討ち倒した救世の六英雄の一人にして、Sランク冒険者。
冒険王ガスターは舌打ちを打ちつつ周囲を見渡す。
「どう言う事だ?」
広大な敷地面積を誇る魔国の大使館。
貴族の邸宅のような見事な庭園にも、毛の長い絨毯が敷かれた廊下にも。
この開けた場所にも……
「何で誰もいねぇ?
どうなってんだよ……」
魔国の大使館に潜入してからここまで誰一人としていなかった。
スキルでの探知にも反応無し、つまりこの大使館には誰もいないって事になるが……
所詮は魔物共の国だとしても、仮にもアクムス王国が国家として認めた国の大使館。
そんな場所に誰一人としていない何て事があり得るのか?
「いや、それだけじゃねぇ。
これは明らかに……」
『広すぎる?』
「っ!?」
突如として、何処かからか響き渡ったその言葉に。
可憐な少女の声にガスターは目を見開き息を呑み、即座に鋭い視線で周囲の気配を探りつつ身構える。
『ふふふ、冒険王ガスター。
お前の思ってる事を当ててやる、隠密スキルを使ってるのに何故見つかった?』
「……」
『それは簡単。
お前程度の隠密スキルなんて私には通用しない』
はしゃぐ子供のような。
ウキウキと楽しそうに弾む、どこか得意気な少女の声。
「俺
容易く見破られたガスターは隠密スキルを解き……ニヤリと笑みを浮かべる。
「クックック、たかだか専門でもねぇ俺の隠密スキルを見破った程度で調子に乗るなよ?」
一切の焦りの色も無く余裕の笑みを浮かべるガスターから発せられるは圧倒的とも言える覇気。
膨れ上がり脈動する魔力の波が大気を揺らし、地面をも震わせる。
「さてと、テメェが誰かは知らねぇが、いい加減姿を表せたらどうだ?
まぁ尤も、俺の前に姿を表すのが怖いってんなら話は別だがな」
『……良いだろう』
若干の間を置き少女が応えたその瞬間……
「っ!」
空中に白く光り輝く巨大な扉が出現し、ゆっくりと両開きの扉が押し開かれて行き……
「ふふふ、かつて勇者達と共に魔王を討伐した救世の六英雄の一人。
罪なき少女をさまざまな拷問や暴力、恥辱した上で公開死刑で貶めて殺した冒険王ガスター。
我が大使館へようこそ」
光り輝く純白の巨大な扉を背に、天使の翼を黒く染め上げたような翼を広げて虚空に浮かぶ存在。
美しい白銀の髪を揺らし、アメジストのような紫の瞳でガスターを見下ろす。
各国の王侯貴族の御令嬢や王女達を数多く見てきたガスターでさえ唖然と魅入ってしまう程の。
まさしく神が作り上げた人形のような、寸分の狂いも無く整った容姿。
美しくも可憐な少女が。
原初の悪魔にして、正真正銘の神。
超越者へと至った悪魔の神が……魔神が降臨した。
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