第5章 悪魔王国編

第94話 別につられたわけじゃない!

 大陸統一戦争……四魔王連合戦争でのグランとの戦いに、竜神ファルニクスとの戦い。

 神域の魔素を取り込んだ事による進化と神化。

 その他もろもろの結果、新しい称号は4つ。




 ・大罪の主

 大罪系のユニークスキルを複数所有する者の称号。

 大罪系スキルに対するバフ及び高い耐性を獲得。


 ・大魔王

 魔王すら超えた魔王の中の魔王たる存在に贈られる称号。

 魔王級の存在を複数従え、一定多数以上の者に認知される事で獲得できる。


 ・悪魔の神

 全ての悪魔種の神である証。

 悪魔の神たる存在の怒りに触れてはならない、国に……大陸に厄災が訪れる事を恐れるのなら……


 ・超越者

 神に至った存在へと贈られる称号。




 ちょっと邪神が介入した形跡が、特に悪魔の神辺りに見られるのが気になるけど……お仕置きは既に施したし、それはどうでもいい。

 大事なのは称号・大罪の主を獲得するきっかけである新しい2つのユニークスキル!!


 全てを喰らい尽くして自身のエネルギーとする暴食者グラトニー

 それに対して新たに獲得した一つ目のユニークスキル・怠惰者スロウスは、全てを怠惰へと誘い無へと帰す。


 とは言っても、既に存在する物質を消滅させる事は不可能だけど。

 例えば魔法を消滅させたり、自然発生した台風とかのエネルギーを無に帰す事で消し去ったりできる。


 まぁ、ぶっちゃけ全部〝付与者〟でできちゃうからあんまり役に立たないけど。

 この怠惰者の真価は他にあるっ! 重要なのは全てを怠惰へと誘うと言う権能の核とも言えるこの部分!!


「ふふふ」


 つまり! いつもの睡眠をより心地よく素晴らしい堕落へとランクアップさせる事ができるのだっ!!


『ユニークスキルでも最上位の大罪系スキルをそんな事のために使うのなんて、悪魔ちゃんくらいだよ』


 そんな事? これだから何もわかって無いヤツは。

 そもそも怠惰者の真骨頂は如何に素晴らしい惰眠を貪るかにある。

 保有者たる私が言うのだから間違いない!!


 そして2つ目の新しいユニークスキル・強欲者グリードの権能はその名の通り、全てを自らのモノとする強欲。

 具体的には1度目にした魔法やスキルを自身の力として再現できると言うもの。


 魔法は怠惰者スロウスと同様に付与者と付与魔法でできちゃうけど。

 スキルのコピーは超強いっ! これぞまさしくチート!!


 まぁでも当然、スキルコピーにも限度はある。

 現にシルヴィア達に手伝って貰った検証ではユニーク級のスキルはコピーできなかったし。

 でも……勇者達のスキルや魔法をコピーして相殺する私! ふふふ、良い! 実に良いわっ!!



 コン、コン



 っ! 来たなっ!!


「失礼いたします」


「……」


「レフィーお嬢様……もう1週間もそうしていらっしゃいますよ。

 いつまでお布団に包まっていらっしゃるおつもりですか? そろそろお機嫌をなおして下さい」


「……」


 ふん、私は怒っているのだ!

 1週間前のあの日。

 私が神に至った事のお祝いをするからゆっくりと心ゆくまでスイーツを堪能しようと張り切ってたのに……


 いざ蓋を開けてみれば、4日前の歓迎会よりも盛大なパーティー。

 会場だったドラゴニアのお城には歓迎会の時よりも多くの人がいて、大勢の人が延々と途切れる事なく挨拶に来るし。


 最初はガクブル状態だったけど、それはもう良い。

 流石にあれだけ人がいれば多少の人目に晒されるのは慣れた。

 問題は……途切れる事なく挨拶に来るから肝心のスイーツが食べれないと言う事っ!


 しかも他の人達は私の目の前で普通にスイーツやらご馳走やらを食べてるのにも関わらずだ!!

 他の人がスイーツを食べてパーティーを楽しんでるのに、結局最後までスイーツを食べれなかった……

 たった1週間で治るほど、この烈火の如き怒りは小さくないっ!!


「なら、仕方ありません。

 実力行使に移らせていただきます」


 ふっ! 怒りに燃える私をなめてもやっては困る。

 いずれ痺れを切らしたシルヴィアが強制処置に打って出る事は想定済み!


「これは……結界ですか」


 今の私のベッドには最上位悪魔アークデーモンより格上である悪魔公デーモンロードの中でも侯爵位以上の存在でなければ破れない結界が展開されているのだ!!

 ふっふっふ! 私をこの絶対領域サンクチュリアから引きずり出せるのなら出してみろっ!!


「ぇ?」


 そ、そんなバカなっ!?

 一瞬で私の結界が突破され……


「はい、捕まえました」


 こ、この弾力のある柔らかな感触は!!

 う、ウソだ! 最上位悪魔であるシルヴィアにあの結界が突破できるわけが……


「残念ですが。

 レフィーお嬢様が拗ねていらっしゃる間に悪魔公デーモンロードへと進化いたしました」


「え……」


 で、でも、それでも侯爵位以上でないと……


「レフィーお嬢様の眷属にして2番目に古い悪魔だからか、公爵位より上位に当たる王位。

 そしてそれよりも更に上位である帝位へと至りました」


 帝位……なにそれ、そんなの知らないんですけど……


「とまぁ、私のことは別にどうだって構いませんね。

 それよりも皆心配していますよ? 皆んなのところに参りましょう」


「むぅ……」


「先日のお祝いは謂わば公的なものですので、僭越ながら我々だけでのお祝いの席をご用意いたしました。

 レフィーお嬢様の好物ばかりを皆でご用意したのですよ?」


 私の好物ばかり……い、いや! 私は誇り高き原初の悪魔にして魔神!!

 食べ物なんかに釣られたりは……


「それに、対勇者共に向けて魔導化学を用いて国を発展させるとおっしゃっていたではありませんか。

 ヤツらへの復讐はよろしいのですか?」


 むっ! それはよろしくない。

 くそ勇者達への復讐は絶対に果たす!!


「さぁ、皆待っておりますので参りましょう」


「ん、わかった」


 そう! 勇者達への復讐と建国した魔国を発展させるために!!

 決して食べ物に釣られたわけじゃ無い!

 無いったら無いのだ!!

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