第84話 いざ、竜神の神域へ!

 竜神の住う神域への入り口は、ドラゴニア近郊の森林の中央に存在する洞窟の中にあるらしい。

 洞窟の中は可視化する程に濃密な魔素に満ちていて、それは美しく幻想的な光景なんだとか。


 そして現在!

 アーグベル達との打ち合わせを終えた後も何かと私に構おうとしてくる女性陣達にガクブルしながらも何とか歓迎会を乗り切り。

 ふかふかなベッドでの睡眠を経て、竜神の神域を目指してるわけだけど……


「あの、シルヴィア……」


「はい、如何いたしましたか?」


「下ろして欲しい」


 何でまたシルヴィアに抱っこされてるんだろ?


「ダメです。

 このように足場が悪い場所では足を挫く可能性がありますので、レフィーお嬢様は私が責任を持って抱っこさせていただきます」


「……」


 ぶっちゃけ人前で抱っこされるのに慣れてきちゃったし。

 ミーシャ達、私の眷属……身内以外には案内役のアーグベル達しかいないから別にいいんだけどさ。


 流石に過保護すぎない?

 しかもこの理由……いつもは完璧なメイドにして侍女なのに、いつになくシルヴィアがポンコツな気がする。


『まぁ彼女も悪魔だからね。

 よく思い出して、確かにいつもは完璧だけど自身の欲望が……悪魔ちゃんの事が絡むと結構ポンコツだったよ。

 最初も悪魔ちゃんに胸を握られて悦んでたし……』


 そうだった。

 いつも眷属統括の地位について皆んなを取り仕切って仕事もできるから忘れがちだけど、シルヴィアは紛れもない変態だったわ。


 う〜ん、まぁいいや。

 目的地まで抱っこして運んでくれるって言うのなら大人しく運んでもらうとしよう。

 その方が楽……げふん、げふん、シルヴィアが私を抱っこしたいのなら、させてあげるのが主君の務めっ!!


『悪魔ちゃんも大概だよね……』


 何か失礼な事を言われた気がするけど、寛大な心で見逃してやろう。

 シルヴィアが歩く度に僅かに伝わってくるこの揺れ……どうせ暇だしちょっと仮眠でも取ろうかな?


『昨夜は楽しみであまり眠れてなかったしね』


「黙れ邪神」


 と言うか淑女の寝室を覗き見るとか何考えてんの!?

 バカなの? 変態なの? 死ぬのっ!? というか死ね! この性欲に塗れた獣めっ!!


『酷い言い草だね……

 私の名誉のために言っておくけど、私は悪魔ちゃんに欲情なんて絶対にしないからね?』


 はぁ!? 私には魅力が無いってか?

 あぁ、そうですか!

 わかってましたよ、私なんて所詮魅力のない貧相な小娘ですよ! ぐすん……


「ふふふ、意地悪な邪神の言う事なんてお気になさらずに、レフィーお嬢様は十分に魅力的なお方ですよ」


「その通りです。

 レフィー様に魅力を感じないヤツなんて男じゃありません!」


「邪神は仮にも神ですので、美的感覚がおかしいんですよ!

 それにご主人様が魅力的だって事はあの調査からも明らかです!

 落ち込む事はありません!!」


 シルヴィアにミリアにミーシャも慰めてくれるのは嬉しいけど、私に魅力が無い事なんて理解してる。

 まぁまだ私は成長途中だし、いつかは妖艶な美女になるけど、今の私は幼児体型の小娘なわけだし。


 それに調査って、アレでしょ?

 なんで簡単にこの大陸の覇者として受け入れられたのか気になって調べたやつ。


 最終的な調査結果しか知らないけど。

 可憐な美少女なのに四魔王すらも圧倒すると言うギャップもあって既に凄まじい人気を誇ってるとかなんとか。


 端的に言って意味がわからん。

 そんな事で支配者として君臨する存在を受け入れられるとはとても思えないし、所詮は過保護過ぎるシルヴィア達が調べた結果。

 ぶっちゃけ、素直に喜べない。


『それは……まぁ、今はまだ知らない方がいいかな?』


「何が?」


『いやいや、何でもないよ。

 神殿を造って悪魔ちゃんを神として崇めるレフィー教なる物が創設されて。

 それこそ昨日の令嬢や夫人みたいな人が大勢いるなんて……』


 むぅ、さっきから何をぶつぶつと……気になるじゃんか。

 ここはあらゆる手を使って聞き出して……


「皆様、到着いたしました。

 これが竜神様の神域へとの入り口が存在する竜神門です」


 竜神が展開したらしい結界のせいで空から向かう事も転移魔法も使えずに森林の入り口から徒歩で来たけど……


「これが……」


 洞窟の中は最初の頃のダンジョンみたいにそれなりの広さの空洞になっており。

 この場に満ちる濃密な魔素が淡く発光して、夜空の中にいるような不思議な光景を作り出す。


 確かにこれは綺麗だわ。

 ここまで歩いて来た甲斐があるっ! まぁ、私は歩いてないけど。

 それに……ここでも感じる空間を圧迫するかのような圧倒的な魔素量エネルギー


「面白い」


 竜神。

 この世界の管理者の一角にして神と呼ばれる存在、果たしてどれ程の者か……


『よくぞ参られた。

 貴女達を客人として歓迎しよう』


 そんな声が鳴り響くと同時に空間に満ちる魔素が凝縮して白亜の巨大な門ができあがる。

 なるほど、竜神とはよく言ったものだわ。


 まぁ何にせよ、せっかく歓迎すると言ってくれてるわけだし、せいぜいもてなしてもらおうじゃない!

 いざ、竜神の神域へっ! 竜神様とご対面と洒落込もうか!!

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