第37話 ペット飼いたい!

「さてと……」


 侵入者さんは今何処にいるのかな?

 昨日の内に作り上げた階層は、地表階層を含めて5つ。

 最下層であるマイルームを含めて、全6階層で構成されてるのが現状での我がダンジョンの全貌。


 規模はまだまだ小さいものの、決して侮る事なかれ!

 地表階層から始まり第5階層まで続く巨大迷路は、心折れ必至な自信作!!

 断言しよう。

 並大抵の覚悟では我がダンジョンは攻略できないと……


『あはは、まぁ悪魔ちゃんが大好きな食事と睡眠を忘れて作ってたからね。

 どれ程鬼畜なダンジョンになってるのか楽しみだよ』


 せっかくシリアスな感じにカッコよく決めたのに、全くもってノリが悪い。

 これだから邪神は……


「見つけた」


 侵入者発見っ!


「転移」


 ダンジョンマスターの権能を使って、シルヴィアと共に転移する。

 目指すは地表部分である第一階層。

 通称、始まりの迷路!!


 髪を整えてもらったり着替えたりしてたから、ちょっと心配だったけど……侵入者がいるのは第一階層の中間地点、数多の分かれ道が続いている中央広場。

 ふっふっふ! やはり魔物程度では、私が作り上げた叡智の結晶たる迷路は突破できなかったようだな。


「なぜ侵入者の眼前へと直接転移なさらないのですか?」


 えっ? 何でって、それは勿論!


「演出のためだけど?」


 ダンジョンマスターが突然目の前に転移して来るなんてあり得ない。

 何処からとも無く靴音が鳴り響き、闇に包まれる通路の先から姿を見せる!

 記念すべき初めての侵入者だし、このくらいの演出はしないとね。


「そ、そうですか」


 おぉ、珍しくシルヴィアが戸惑ってる。

 ふふふ、この辺りがわからないとは、シルヴィアもまだまだだね!


 むふっ! さっきは嘘泣きで揶揄われたげど……スイーツ様で許してあげよう。

 まぁ、その前にこっちだけど。

 さてさて、じゃあ侵入者のご尊顔を拝ませてもらうとしようか……


「こ、これはっ!!」


 通路を抜けて、中央広場へと足を踏み入れた瞬間。

 雷に打たれたような衝撃が全身を駆け巡った! まぁ当然、雷に打たれた事なんて一度もないけど。


 とにかく! 目の前に広がる光景に、目を見開いて硬直してしまったけど。

 さぞ間抜けな顔を晒してるだろうけども! 私は悪くないと思う。


 だって今まで私がこの大陸で見た魔物って言えば、まず骸骨に、2メートルを超える豚に、地獄の植物みたいな木だよ?

 今度はどんな化け物がって身構えてたのに!!


「も……」


 いざ蓋を開けてみれば、目に飛び込んできたのがこんな……


「モフモフっ!」


 地面に丸くなって寝転びながらも、目だけはしっかりとこっちを射抜くネコ!!

 雪のように白くてふわふわな毛に、輝くような金の瞳!


 途轍もなくかわゆい。

 果たしてこんなに可愛いネコちゃんを前にして、抱きつかずにいられようか?

 いいや、我慢なんてできるハズが無いっ!

 と言う訳で! レフィー、行きまーす!!


「モフモフ〜! ……ぐへっ!?」


「お嬢様、今何をなさろうとしましたか?」


「ネコちゃんに抱き着こうとしました!」


 と言うか、いきなり襟を掴まないで欲しい。

 思わず御令嬢にも、乙女にもあるまじき声が出ちゃったじゃん!!


「突然魔物に抱き着こうとするなんて危険です!

 それに、ネコちゃんと言うには大き過ぎです。

 よく見て下さい、レフィーお嬢様よりも大きいではありませんか!!」


「ふっ、そんな事は些細な問題」


 しかし、私のル◯ン3世さながらの、ネコちゃんへのダイブを阻止するとは。

 やっぱり我が前に立ちはだかるかシルヴィア保護者よ!


「ねぇ、シルヴィア?

 ネコちゃん、飼いたい」


「ダメです」


 ちっ、即答か。

 しかし、こうなる事は百も承知っ!

 ペットを飼う事は前世も含め、前前世からの夢なのだ! そう簡単には諦めないぞっ!!


「飼う!」


「ダメです」


「飼うったら飼う!」


「ダメです!

 そもそも、アレはネコではありません!」


「……」


 うぅ、基本私にはあまあまなシルヴィアが、ここまで言っても認めてくれないなんて!

 感情が昂ったせいか、視界が滲んできた……くっ、こんな時にお子様ボディーの弊害がっ!!


 ま、負けてなるものか!

 これはペットを飼うという宿願を叶える、またと無いチャンスなんだ!

 えっと、えっと……そうだ!


「じゃあ眷属にするっ!!」

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