第24話 オークは嫌い、けど魂は別
「そろそろ限界かな?」
ズシン……
魔法を解いた途端、重力に一切逆らう事なくオークエンペラーが崩れ落ちた。
それはもう見事に、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
う〜ん、本当はもうちょっと試したかったんだけど……まぁ仕方ないか。
まだ何とか生きてはいるけど、地面に倒れ伏してピクリとも動かないし、傷の修復もされてない。
まぁ、あれだけ一方的に攻撃した訳だし。
流石のオークエンペラーと言えども、瀕死になるのも当然か。
本当は接近戦も試したかったんだけど……それは違うヤツで試すとしよう。
ぶっちゃけ、あの豚には触れたくないし。
とは言え、この初戦闘での収穫は非常に大きい。
深窓の御令嬢である私が魔法とスキルを使った戦闘をこなせた事は勿論……
今の私は特Aランク、厄災級であるオークエンペラーよりも強い!!
うんうん、実に満足のいく結果だ。
自業自得とは言え、ここまで検証に付き合ってくれたオークエンペラー君には感謝……はしないけど、せめて苦しむ事なく一瞬で終わらせてあげるとしよう。
「バレット」
オークエンペラーの頭部が弾け飛び、辺り一帯に血の匂いが充満する。
いやー、荒事とは縁遠い深窓の御令嬢だったのに、この光景を前に何も思わないなんて……
本当に悪魔になってて良かったわ。
精神の構造が悪魔クオリティになってなかったら、絶対に吐いちゃってる自信がある。
とは言っても、別にオークエンペラーの死体なんて見たくもないし。
かなり魔力を消耗して怠い。
ぶっちゃけ、もう帰って寝たい。
と言うか、これだけ頑張ったんだから惰眠を貪る程度の褒美はあって然るべきだ。
よし、帰ろう。
ここにいてもする事は無いしね。
今すぐ! すぐに帰ろう!!
「シルヴィア、帰る」
「お嬢様、ダメですよ」
無言でシルヴィアから視線を逸らした私は悪く無い。
と言うか、これが普通の反応だと思う。
だって……
「殺した者の魂は、責任を持ってお食べ下さいませ」
和やかな微笑みを浮かべて、大量の魂を掌の上に浮かべてるんだよ?
私の専属メイドが悪魔に見える……いやまぁ、悪魔だけども。
「だって……」
「だって、じゃありません」
「うぅ……」
ヤバい、涙目になって視界が歪む!
くっ、やはりテンプレよろしくこの幼女の身体に精神が引っ張られるのか……しかし、こは好都合!!
今の私はイヤイヤって駄々をこねる幼児に見える事だろう。
けど思い出して欲しい。
今の私は立派な幼児! 誰もが認める幼女なのだ!!
ふっ、ぐずるのは幼児の専売特許。
例え魂と言えど、触れたくないオーク共の魂から逃げ果せるためにはプライドなんて捨ててやる!
「そんなに嫌なのですか?」
勝った。
多少卑怯だったかも知れないけど、勝手に涙が出てきたんだから仕方ない。
「そうですか……でしたら、致し方ありませんね。
この魂は私が頂くとしましょう。
んっ、美味しい! この濃厚かつ深く、何とも形容し難い味わい! 非常に美味です!!」
「ゴクリ……」
そ、そんなに美味しいのかな?
はっ!? いやいやいや、騙されるな私!!
「んっ、こっちの魂はまた違った美味しさがありますね」
「ち、違った……」
「はい、どうやら魂はその者の持つスキルや保有する魔力量などによって異なる様です。
例えば最初に食べた魂はお肉の様な旨味で、その次の物はケーキの様な甘さでした。
十人十色と言いますが、魂でも同様の様ですね」
た、食べたい。
でも、ついさっき食べないって公言しちゃったし……いったいどうすれば……
「うぅ……」
「ふふ、レフィーお嬢様もお召し上がりになりますか?」
「っ! 食べるっ!!」
笑いたければ笑うがいい!
前世や前前世では高価な食材や香辛料を使った料理を食べてはいたけど、自分の好きな物なんて滅多に食べれない生活を送ってたんだ。
今世では好きなだけ食べたい物を食べてやる!!
「はい、どうぞ召し上がって下さいませ」
「んっ、美味しい!」
美味しい物を好きな時に好きなだけ食べる。
これぞ至福の時間っ!!
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