青春プロトコルアーカイブ〜幼き日の後悔が俺の青春の邪魔をする〜

クロビー

プロローグ

 満開に咲く桜の木の下で、俺は一人空を見上げていた。

 春の陽気を感じさせる心地よい風が吹くたび、沈んだ心を慰めるようにひらひらと花びらが散っていく。

 青い空に浮かぶ無数の花びらは、まるで大海に流されているかのようで。俺を知らない何処かに連れて行ってくれるんじゃないかって。

 もしこれが夢ならば、このまま一生覚めないでほしいとすら思えた。

 だけどそこは現実で、失ったものは二度と取り戻せないのだと。その事実を痛感するたびに心が打ち砕かれそうになる。


 ……今になって思う。

 あの時、俺は大切な何かを掴めなかった。いや、自ら手放してしまったんじゃないかって。

 何年も経った今でも、俺の中でずっと燻っていて。忘れてしまいたいのに、忘れることができない。俺の後悔だ。

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