都入り(3)
しばらくして、シモンさんが一人の女性を連れて戻ってきた。
「アイリスをお連れしました。私はこれから別の仕事がありますので、これで。…アイリス。後は頼んだ。」
「お任せあれー。」
そのままシモンさんは何処かへ行った。
「アイリスー!」
「やっほー!ソフィー!今日はどうしたの?」
「今日はアイリスに紹介したい人がいまして。」
すると、アイリスさんはこちらを向いた。
「…この子?」
「はい。名前をプカクと言います。」
俺は深く頭を下げた。
「プカク…名前の感じからして、南の方から来たの?」
「はい。ノンノ村から来ました、プカクです。よろしくお願いします。」
「私はアイリス=マキリ。アイリスでいいよ。よろしくね。…へぇーノンノ村かー。あの辺りは化物がいるんだっけ?」
「はい。よく狩ってました。」
「え!すご!…あ、もしかしてその外套って…」
「はい。化物の毛皮でできてます。」
「えー!いいなー!ちょっと触らせてー!」
そう言ってアイリスさんが俺にペタペタ触っていると、姫様は俺をグイッと引き寄せた。
「アイリス。プカクは貴女のオモチャじゃないんですよ?」
「えー?いーじゃんちょっとくらーい。」
「ダメです。プカクは私のオモチャなんですから。」
(いや、姫様のオモチャでもない。)
「ちぇーっ。」
アイリスさんはブスーッと不満げな顔をした。
「それに今日は、お願いをしに呼んだんです。」
「お願い?」
「はい。できれば、プカクを貴女の部隊に入れてほしいのです。」
「13番隊に?」
「はい。プカクの本業は鍛冶屋なんです。でも、私の見立てだとプカクの剣技はこの国でもトップクラスと見ました。なので、非常勤で働くことができる13番隊に入れてあげてほしいんです。」
「ふーむ…。」
そう言うと、アイリスさんは俺をマジマジと見た。
「…どうしよっかなー。」
「お願いです。私達の仲でしょう?」
「んー…。そうだなー…。」
すると、アイリスさんはクルクルとネックレスを弄った。
「…ほぉ。面白いね。」
唐突にそう言われたので、俺はアイリスさんに質問した。
「…あの。何が面白いんすか。」
「ん?ちょっとね。」
すると、姫様が俺に小さな声で言った。
「アイリスは、魔法を使う騎士なんですよ。ほら、この前話したでしょう?魔法と北の村の話。騎士団には魔法を使う騎士がいるって。」
「へぇ。この方がその一人なんですか。」
「えぇ。魔法を使う騎士の中では実力はトップクラスです。」
アイリスさんはネックレスを弄るのを止め、俺の肩に手を置いた。
「…よし。採用!」
突然そう言われ、俺は呆気にとられた。
「…あの、採用理由は。」
「私ね、真実を見る魔法を持ってるんだ。」
「真実…。」
「うん。だから、君の真実見てた。」
「…はぁ。」
「君はどうやら大好きな故郷と幼馴染みから離れてまで、鍛冶職人になるためにこの都に来たみたいだね。それも相当な覚悟で。」
「…。」
「そこまでして叶えたい夢があるっていうのは、私的には結構面白かったから採用したってわけ。」
「全部バレてるじゃないですか。」
「うん。ついでに、君が面倒くさい性格なのも分かった。面倒くさい奴は大歓迎だよ。何せうちの隊は面倒くさい奴らばっかだし。」
「…俺ってそんなに面倒くさいですか。」
「うん。大分。」
即答され、少し頬がひきつってしまった。
「ま、素直が一番だよ?あんまり奥手だと、いつか誰かにカナちゃんを取られちゃうかもねー。」
「またその手の話ですか。」
「だって、見てて面白そうだもーん!」
「…特に好き嫌いという感情は無いですよ。貴方が見たものを真実と言って押し付けるのは傲慢です。」
「ほら、面倒くさい。」
すると、姫様がニヤニヤしてアイリスさんに言った。
「アイリス!後でプカクから読み取ったことを教えてください!すっごく興味があります!」
「んー?じゃあ今日の夜、女子会しちゃう?」
「しちゃいましょう!」
(何か、一番真実を知られたらまずそうな人に真実を見られた気がするな…。)
「…あの。アイリスさんとの自己紹介も終わりましたし、そろそろ鍛冶屋を紹介して頂けないですか。」
「あ、そうでしたね。では、今から行きましょうか。アイリスも来ますか?」
「いいよー。どうせ今日暇だし。」
「では、三人で行きましょう!…と、その前に、着替えるので少し外で待っていて貰えますか?このまま出掛けると、せっかくのドレスが汚れちゃいますので。」
「分かりました。」
「おっけー。」
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