鍛冶屋の試し斬り
山尻 蛍
プロローグ
いい刀を作る条件というのは三つあるらしい。
一つは素材。どんな素晴らしい刀を作ろうとしても、その素材が脆かったり、余計なものが混じっていればすぐに壊れてしまう。
もう一つは卓越した技術。どんなに素材が良くても、それが技術の無いものが作ったものだとすれば、それはガラクタも同然である。
最後に知識。どんな技術も素材もあったところで、結局使うのは剣士だ。刀にどのような性質、個性が出るかは刀を使う者にしか分からない。だから、鍛冶屋は戦いの知識をつけなければならない。
これは俺の師匠である親父がいつも口ずさんでいる言葉だ。
「いいか。剣士にとって、武器の長さや重さの適正は様々だ。非力でも機動力がある者には、軽くて手数をだせるような武器に。剛力だが鈍足な者には、長くて間合いがある武器を。そうやって、その人の長所を生かすような武器を作るんだ。しかし、その理想をできるだけ実現させながら、耐久性なども維持しなければならない。その微妙な兼ね合いは、やはり使ってみて、自分で判断しないと分からない。」
親父は化物に向かって刀を構えた。
「そしてその判断は、戦いの中で得られる知識によってのみ下すことができる。」
親父はそういうと、瞬き一つの間に化物を仕留めた。
「プカク。いい鍛冶屋になりたければ強くなれ。多くの敵を討ち、何度も試し斬りをし、戦いを理解した先に、真の業物は生まれる。」
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