1-5

リズとジュンは、パトカーが集まっている工場に向かった。


そこは江戸川町で一番大きな建物で、家からも煙突が見えるゴミ処理施設だ。




「あの工場か…ただのゴミ処理施設にこれだけ警察が集まるなんて、普通じゃないな」




社会科見学で訪れたことがある建物が、今や異様な光景に包まれている。周辺には野次馬が集まり、警官たちがその先への立ち入りを制限していた。




「近づかないでください!」


何人もの警官が群衆を制止している。




すると、工場の奥からスーツ姿の男が現れた。剣のような武器を手に持ち、その鋭い目で辺りを睨みつける。




「おいおい、ずいぶんとギャラリーが多いな。ここは見世物じゃねえぞ?」




警官の一人が男に詰め寄る。




「君たちがこの施設を不法占拠していると通報を受けた。直ちに撤退しろ」




「ふん、俺たちに刃向かう気か?」




「お前たちは包囲されている。これ以上の抵抗は許さない!」




警官の言葉に、スーツの男は冷笑した。




「この世界の奴らは、俺たちの力を知らないらしいな。見せてやるよ…」




次の瞬間、男の手から炎が現れ、それが警官目掛けて放たれた。




「なっ!?ど、どういうことだ!?」


警官たちは目を見開き、驚愕の表情を浮かべる。




「魔法だ…」リズが低く呟いた。




「魔法って、あの魔法?」ジュンは混乱した様子で問い返す。




「そう。あれが異界の技術。間違いなく、この世界の人間じゃないわ」




「まさか…追ってた奴らか」




「そうみたいね。偶然にも見つけたなんて運がいいわ」




ジュンは息を飲む。異界から来た人間がこんな近くに潜んでいたとは予想外だ。




「リズ、君…まさか戦うつもりじゃ…」




「当然よ。ギルドの依頼を達成するためには避けられないもの」




彼女の目には迷いがない。その様子に、ジュンは彼女の本気を感じ取った。




「だったら…自分も行くよ」




リズは驚いた顔をするが、すぐに笑みを浮かべる。




「頼もしいじゃない。じゃあ、一緒に行こう!」




工場の前に立つスーツの男は、2人を睨みつけた。




「なんだ、今度は何者だ?」




「私の目的は一つ。この世界でお前たちが何を企んでいるかを知ることよ」




リズは堂々と宣言する。その態度に、ジュンは改めて彼女の強さを感じた。




「なかなか肝の据わった嬢ちゃんだな。だが、そんな簡単に教えるわけがないだろう」




「なら、力づくで吐かせるわ」




スーツの男が再び炎を放つ。しかし、その攻撃はすべて空を切り、リズは身軽に回避する。




「な、なんだと!?」




次の瞬間、リズの蹴りが男の脇腹に炸裂する。たった一撃で男は地面に崩れ落ちた。




「ば、バカな…!」




その間、ジュンはただ呆然と立ち尽くしていた。目の前で繰り広げられた戦闘は、一瞬のうちに終わってしまった。




「リズ…君、本当にすごいんだな」




病み上がりのはずのリズが、この圧倒的な実力を発揮するなんて。ジュンは彼女への尊敬とともに、自分の無力さを痛感していた。

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