第40話 夜の舞踏会と告白
それは夜の出来事
まだ大人の姿のアーシュ 食事会の宴が開かれ
バルコニーで 星を見てる
「アーシュラン様 貴方 あの少年 リアの心を
踊りを踊っている最中にでも 視て
全て・・これから起こる 未来の出来事を知りましたね」
アルテシアが固い表情で 問いかける
「ああ」 相変わらず夜空を見上げて 肯定するアーシュ
「それで・・?」 くるりと振り返り アルテイシアを見るアーシュラン
思っていたよりも 今は表情は明るい
「‥知りたいか・・?」アーシュ
「ええ・・」アルテイシア
黄金の・・金の瞳に変わるアーシュ
「生き延びるのは お前とリアン殿だけだ」
「リアンは最後の白の宗主で 白と黒の王になり
俺の子供を跡継ぎにする・・」
「お前は国と俺の子供の為にも
再婚して リアンの妻に 2つの国の王妃になる」
「エイルは 生まれてくる俺の子供を守る為に 白の宗主リアンの妻になり」
「で・・エイルは 俺の為に 俺より先に死ぬそうだ
そして俺は後を追うように すぐに逝く」
「異母妹テインタルも俺の為に死ぬ」
「詳しい事までは 読み取れなかった 本当は視るつもりはなかった
無意識のうちに 過去見の力が発動した」黄金の金の瞳でアーシュは言う
「どうやっても
運命の黒いクモの糸から逃れられない
昔、俺は最初の時空の旅で 出会った未来の俺に言われた」
「未来の俺が言うには 大きな戦があるそうだ・・出撃直前だった
鎧を纏ったアル・・お前の姿もあった
出撃の寸前に リアンにエイルを託し 過去の俺にそう言った」
「許されてる幸せな時間は多分 あと数年か」アーシュ
「私がリアン殿の妻になる前に 再婚と言う言葉をいいましたね」
「私は最初は 誰の妻に?」
叫びたい衝動を押さえつつアルテイシアは出来るだけ静かに問う
「俺の事が好きなんだろう・・アル
俺の第二の王妃はお前だアル」
「アーシュ様」力が抜けたようにアルは言う
「ずっと言ってじゃないか?アル 俺の第二王妃になるって」
「まあ 確かに俺が本当に成長して 大人になったら
お前に押し倒れて襲われるだろうと・・ずっと思っていた
正直 ちょっと怖いかなって 思った事もある」
にゃりと笑う 焔の瞳に戻って 口をちょっとゆがめて 笑うアーシュ
「その通り・・貴方が大きくなったら 私 きっと酒にでも酔ぱらって
エイルより先に貴方を押し倒すとは思っておりましたけど」
右手で半分 自分の顔をおさえ
目を閉じて ため息をつきながら言うアルテイシア
まあ・・実際 アーシュ様は覚えてないけど 大人の姿の頃 酔っぱらって
アーシュ様の部屋に押しかけて 本当に追し倒して
それから
気分が悪くなって 吐いちゃって・・大失敗したけど
「なんだ アル・・もうすでに一度 俺を押し倒したのか?
襲うのは 失敗したが?」
手をいつのまにか取って 金色の瞳を輝かせながら言うアーシュ
「あ、アーシュ様 私の心 過去見しましたね」軽く睨むアルテイシア
「すまん つい・・」また焔の瞳に変わる
「この事 未来の話は俺とお前アル 二人だけの秘密だ」
「時が来て全て終わるまでは 俺が死ぬまでは
リアンにも秘密だ」
「だが日記に書くのは 構わん
俺が死ぬまでは 話は秘密 命令だ」
つかつかとアルテイシア姫の傍に近寄り
指先でひょいと顎を持ち上げて
「アーシュラン様?」きょとんとするアルテイシア姫
笑みを浮かべ言うアーシュ
「第二王妃の座はお前のものだ アル」
アーシュの方から アルテイシア姫の唇を重ねた
そっとくちずけを交わす
「俺との・・
どの勝負にもお前がいつも勝つ 俺の負けだ」
「降参する」
「剣と魔法の勝負は別だがな
3,2の勝負の練習試合 1つはお前が必ずお前が勝つが
残りは俺だ」
くすっと笑うアルテイシア
「・・・約束しましたよ 私の黒の王様」頬が少し赤いアルテイシア
「一応 エイルにも第二王妃の事は打ち明けるが?構わないかアル」
「彼女にも その事は宣言してましたし・・
気にせず 了解すると思いますわ・・貴方が一番 愛しているのはエイルですもの・・」
「ほら・・向こうのバルコニーに一人でいますわ・・
行ってキスでも されたらいいと思いますよ」首を少し傾け 笑みを浮かべアルテイシアは言う
「・・じゃあ お言葉に甘えて行ってくる・・」アーシュ
「はい 私の王様」笑みを浮べたまま アルテシア
向こう側のバルコニー
「エイル」アーシュの呼びかけに くるりと振り返るエイル
「アーシュ」笑うエイル
「告白する事がある・・アルに成長して 大人になったら
彼女に押し倒されて
襲われる前に 第二王妃にすると約束した」アーシュ
驚いたようだが すぐに笑みを浮かべエイルは言う
「うん わかった おめでとうアーシュ」
突然エイルを抱きしめて 今度はエイルの唇を重ねてくちずけする
エイルは目を閉じ 腕をアーシュの背に廻して 同じく抱きしめる
「第一の・・
黒の王妃は 僕でいいの?本当に?」
互いに抱きしめたままエイルは言う
「ああ・お前を愛してる エイル 元の大人の姿になるまで 待ってくれ」
もう一度 確かめるようにくちずけを交わす エイルとアーシュ
「僕 私も愛してる‥アーシュ」
うっすらと瞳を開けるアーシュ 瞳の色は黄金の金
どうやっても 誰がとめても
お前は俺の為に 先に死ぬだろう エイル
俺は短い時間でも 愛するお前のいない世界に耐えられるだろうか
そして どっちに似るだろうか お前と俺の子供は?
俺は その子供に会えるのか?
いずれにしろ その時は 俺が見た未来通り
必ず すぐに お前の後を追う
幸せな時間はあと少しだけ
それまでは 一緒に 幸せな平安な日々を エイル
そんな二人を見守るアルテイシア
長年の想いが叶い アーシュ様に妻にしてもらえると約束された・・
エイルだけだった
あのアーシュラン様に受け入れられた
だが 未来を知ってしまった 二人だけの秘密
私は残り リアン殿と結ばれ
アーシュさまとエイルの子供を育てる
しかも エイルが先に死ぬ
次にアーシュ様 アーシュ様を助ける為に
テインタル王女 あの可哀そうなテイが犠牲になる
可哀そうなエイル・・テイ・・涙が浮かぶ
その涙を拭う
大きな戦(いくさ)が起こるという
それは運命(さだめ) 止められないのだろう
宿命・・私達の宿命
セルト将軍達はどうなるのだろうか
戦で死ぬのか
ナーリンは?
未来 リアン殿と結婚して もし子供をもうけたら
それは女の子がいい
アーシュ様とエイルの子供と恋をして結ばれる
間違いなく
静かにアルテイシアは思う
この与えられた幸せな時間は大切にいたします・・私の王
たとえ 後・・ あと数年だとしても・・
今 とても私は幸せです・・貴方はエイルと私達二人のもの・・
決して その時まで・・運命が引き裂くその日まで 放しはしません
穏やかで満足そうな微笑み 瞳にはまた涙
「アルテイシア姫?」宴に出てたリアンが声をかける
「あら リアン殿」アルテイシア
「ん・・涙 どうされました?」リアン
「あ・・ああ ゴミが目に入っただけですわ」アルテイシア
「そうですか一曲 踊りをお願いしても 構いませんか?」リアン
「はい」アルテイシアはリアンに微笑む 一緒に踊りながら アルテイシアは思う
確かに美男子で 優しい人 この人ならあの子、エイルを守り幸せにするだろう
エイルが死ぬその日まで・・
そして 私も アーシュ様を失っても・・彼なら癒してくれるかも
私 アーシュ様を失って・・どこまで 耐えられるだろう
多分、今日 私が知った未来の事を 時が来て 話す事が許される日に告白したら
きっと リアン殿は こう言う
『まったく あの男 黒の王アーシュラン殿は
全ての責任を 私に押し付けて・・まったく!』
ぶつぶつと 怒りながら言うわね
それとも
『何故?その話を私にしなかったですか!アルテイシア姫!
知っていたら エイルを助ける事も 未来を変える事も 姫』
そう言って、まず 私の事を責めるかしら?
そして エイルとアーシュ様 二人の間に出来た子供を大事に育てる
私の事も受け入れる
貴方は とても優しい方だから
「今日は 切なそうな顔をされてますが 何か心配事でも」リアン
「いえ 大丈夫ですわ ダンスを有難うございます
一緒に 果実酒でも飲みませんか?」アルテイシア
「いいですね お付き合いします」リアン
バルコニーではアーシュとエイルが二人仲良く 宴の様子を
椅子に座って 見てた
「リアン兄様とアルテイシア姫
二人とも踊り上手だねアーシュ」エイル
「そうだなエイル」
「ぼ・・私達も踊る?」エイル 「じゃあ 行こうか?」アーシュ
「ああ、あ!」 「どうしたの?」 「流れ星だ」
「本当だ」エイル
夜空
遥かな未来 出会った猫耳の彼らも
きっと この星空を見てる
アーシュは思う
また 会って あのキッシュを食べてみたいものだが
あの子達にも会いたい
カクヨム 初稿2020・9・29
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