第41話 とんでもない秘密
日本史で
「お前は高校で寝ているのか。
さらっと八つの省を並べ立て、健星はやれやれと溜め息を吐いてくれる。が、普通は覚えているはずがない。
「そういうところ、東大卒って感じがするわね」
鈴音はふんと鼻を鳴らして、一緒にするなと訴えておいた。高校生とはいえ、東大を出た奴と中堅私大を目指している奴じゃあ、そもそも偏差値が違いすぎる。
「そうやってすぐに東大だ京大だと言い訳にするのはよくないぞ。そもそも、私立の日本史の方が入試問題は難しいだろうが」
しかしすぐに健星からそんな反論が飛んでくる。くう、こいつってちゃんと受験しているんだ。って、あれ、ちょっと不思議。
「め、冥界の人なのに受験したの?」
「もちろんだ。冥界では知識が偏ってしまうからな。ちゃんと受験勉強して一般入試で入っている」
「へ、へえ」
「そもそも、俺は公務員だぞ。一応は向こうに戸籍を作ってある。まっ、でたらめだけどな」
「でしょうね」
でたらめだろうことは解る。だって、本籍冥界なんだもん。ううん、よく考えればこの身近にいる健星が最も謎だ。
「何才なの?」
おかげで唐突にそんな質問をしてしまった。よくよく考えれば、刑事だという情報しか知らないじゃないか。キャリア組の警部補。その情報しかない。
「唐突だな。現世では二十七」
健星は器用に右眉だけを上げて、しかも奇妙な答え方をしてくれる。
「現世では?」
「言わなかったか。冥界生まれは寿命が違う」
そう言ってくれるが、それって人間じゃない云々のところでちょっと出てきただけじゃない。明らかに説明不足だ。っていうか、誰か全部を纏めて教えてくれないかな。そう思っちゃう。
「寿命が違うって具体的には?」
ともかく質問しないことには答えてくれないらしい。鈴音はむっとしたものの、そのまま突っ込んだ質問に移る。
「約千年」
「えっ?」
「千年だよ。あの狐の坊主は勘違いしている、というより、俺が勘違いさせているというのが正確だが、俺は小野篁の子孫じゃない」
「ええっと」
なんかよく解らないことになってきたぞ。鈴音は警戒してしまう。すると健星はにやりと笑い
「俺は小野篁の生まれ変わりだ。平安時代、篁として死んだ魂は、冥界で再生された。その後、俺は何度も生まれ変わりを繰り返す存在となった」
「それって」
「死んでも無意味なんだ。またここに生まれる。いや、気づいたらこの姿に戻っている。なっ、俺は人間じゃないだろ?」
にやっと笑った顔は意地悪で、でも、とても辛そうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます