星の輝き

山田維澄

第1話星と繋り

 人間の魂は星である

 これはお偉い天文学者の言葉だそうです。その人の論文は難しい言葉が並んでいて、正直何を言っているのか分かりません。かいつまんで説明すると人の魂は星と同調していて、星が消えるとその人も死んでしまう、ということらしいです。しかし、どの星が誰の魂と同調しているのか分からないのだとか。まぁ、自分の星が分かってしまったらいつ消えてしまうか気が気でないと思うので、分からない方が良いのかも知れませんが。

 こんなことを考えるのは、今まさに星を眺めているからではありません。

「ありました! 今日も私の星は綺麗に瞬いています」

 私は月の近くで輝く自分の星を指差します。

 物心ついた時から、私は自分の星を認識していました。正確に言えば、他人の星も認識できます。私の目から見れば、星と人は糸で繋がっているのです。絡まることも、切れることもない。ついでに、私が掴むことも出来ない。そんな糸が、世界中に張りつめているのです。

「星奈、観察は終わりましたか?」

「母様。丁度今、終わりましたよ」

 私がこの糸を見る事が出来ると知っているのは、両親と母方の血縁の人だけです。何でも、星神家の女性は代々糸が見えるのだとか。母様も昔は毎日のように自分の星を眺めていたそうです。しかし、母様は私を産むと同時に糸が見えなくなったそうです。母様だけではありません。母様の母様、私のおばあ様も、母様を産むと同時に見えなくなってしまったそうです。

「母様は、私を産むのが怖くは無かったのですか? 糸が見えなくなってしまうのが、怖くは無かったのですか?」

 糸が見えなくなると言うことは、自分がいつ死ぬのか分からなくなると言うことです。元々見えていたものが見えなくなるのは怖くはないのでしょうか。

「星奈、わたし達の力は神様を救うためにあるのですよ」

「神様を、ですか?」

 この力がどのように神様の役に立つのか、私には検討もつきません。

「ごくたまに、記憶を無くした神様が人間界に迷いこむと言われています。わたし達の力は、そんな神様を見つけるためにあるのです」

「この力で見つけられるのですか?」

 例え神様が居たとしても見つけられる自信は私にはありません。一目で分かるような格好をしていれば別ですが。例えば、天使の羽を生やしているとか、頭に輪っかがあるとか。

「神様の糸はわたし達には見えないので大丈夫ですよ」

「母様は神様を見たことがあるのですか?」

「残念ながら。星奈は会えるといいですね。さ、今日はもう寝ましょう」

「はい。母様」

 私が大人になるまでに、神様が現れてほしいと思うのは失礼でしょうか。でも、私は見てみたいのです。会ってみたいのです。

 どうか、一目でもいいので神様を見てみたいです。

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