05
私は数年前、中途半端に記憶が蘇っていたころ…ここはゲームの世界だと思っていた時期があった。でも実際そんなことは無く、ここは紛れもない現実なのだと今は分かっていますとも。
でもなんか…ゲームみたいな要素が揃っちゃってると、つい考えちゃうよね!自分のポジションとか!
ついでに言うと、有朱は日常系の作品が好きだったな。あとファンタジー。
凛々はラブコメ(ノーマル、百合、薔薇問わず)とグロ、ホラーが好きだった。
愛斗はバトル、スポ根、ギャグ系。
よくよく考えると、私達3人ってオタクと言ってもジャンルバラバラだったな…。だからこそ仲良く出来たんだろうか?
なんとなーく前世のことを思い出しつつ、私達は寮に向かった。
寄宿学校の寮は2つあり、1つは侯爵家以上の身分の者が住う寮アスル。もう1つはそれ以下のブラウ。
アスルは個室で、希望者は使用人部屋付きの部屋もあり(要追加料金)。まあ掃除洗濯は寮のメイドさんがやってくれるし、食事だって出る。だから私みたいに従者付きの場合のみこの部屋を使う。ブラウは相部屋らしい。
ちなみに寮は男女分かれているが、使用人のみ行き来可能。なので私達は談話室に集合した。メンバーはいつもの4人、ディード、三人衆、あとなんか第三王子殿下もいる。
「ジェイドと呼んで。」
「…ジェイド様。」
「…………。」
「………ジェイド。」
「!!(パアアア…)」
まあいっか。
そこで改めてリリー達と再会を喜び、彼らがこの数年どんな暮らしをしていたか聞いた。
私も魔国でどんな風に過ごしていたのか沢山語りたかったが…もう夜遅いのでお開き。結構ディードも皆と打ち解けられていて安心したわ。
「ディーデリックはアシュリィと親しいの?」
「そうだな…魔国では年の近い者が少なくてな、自然と共に過ごすことが多かった。」
「……仲良しね?」
「…………それなりに。」
「へー……。」
打ち解けてたんだが…なんかアシュレイと睨み合いを始めたぞ。
「「(こいつ………)」」
「オレは一緒の布団で何度も寝た。」
「私は一緒に海に行ったし水着姿も見た。」
「オレの名付け親はアシュリィだ。」
「私は婚約者候補の筆頭だ。」
「オレは幼少期のあいつを知っている。」
「私はお前らの知らない彼女を知っている。」
「「……………。」」
なんだか2人でこそこそ話してんなーと思ったら…「よろしく!」と言いながら固く握手を交わしていた。何があった??
「「(こいつは敵に回すより協力した方がいい)」」
なんだかよく分からないけど、この日からアシュレイとディードは仲良くなっていったのである。
「あ、ねえアル。アルはデメトリアスの従者のティモのこと知ってる?」
解散する前に、気になっていたことを聞いてみた。
「へー、彼ティモって言うんだ。ごめんねだけど、僕は知らないんだ。今日初対面だったし。
僕とデメトリアスは最後に会ったの6年くらい前だし…その時はまだいなかったよ。」
へー。気にはなるけど…うーん。他人が口を出していいことじゃないよな。
ただ続くアルの発言に私達は驚愕した。
「それと…僕とデメトリアスは従兄弟だけど、血は繋がっていないんだ。彼がああいう性格なのも環境のせいだと思うよ。
それに僕、彼のことはイラッとすることも多いけど嫌いじゃないんだ。むしろ…アシュリィは気が合うと思うよ。これ以上は言えない、内緒ね?」
……………は?呆然とするアシュレイとディードを引っ張り、おやすみ~と言いながら男子寮に帰っていくアル。ジェイドはその後をオロオロしながら付いて行く。
残された私とリリーと三人衆は、彼の発言に理解が追い付かない。
「どう、思う…?」
「……アルビーはあんな嘘言わないし…どう、なのかしら…?」
あれこれ推測するも結局分からん!ということで落ち着いた。
アルが嫌いじゃないって言うんなら、まあそこまで悪い奴でも無いんだろう。少し認識を改めよう。
編入してから数日、特に問題も無く日々を過ごす。
私はリリー、アシュレイ、デメトリアス、ランス様、ミーナ様、三人衆、ティモと同じクラスになれた。いやー、ナイトリーがいなくて良かった…。
デメトリアスは度々リリーにアプローチをするが、その度アルに蹴っ飛ばされたりチョップを喰らったりしている。
段々とただのじゃれ合いにしか見えなくなってきた。だって、アルがいない場所じゃ口説かないんだもんよ。
「そう言えば来週は剣術の授業があるのだったな。」
「はい、女子は応援に行きますわ。」
「私も出るよ!」
「「え!?」」
なんでそんな驚くの…?別に女子だって出れるじゃん、数は少ないけど女性騎士だっているんだし。
「お前昔、セイドウ団長に剣より素手の方が良いって言われたじゃないか。」
いつの話してるのアシュレイ?私だって魔国で鍛えたんだぞ、剣もそれなりに使える!まあ格闘の方が得意ではあるが。まだガイラードには勝てないけど。
「そうだランス様、旦那様や他の皆は元気ですか?」
「様付けと敬語は勘弁して…本来なら俺こそ貴女にそうするべきなんだから。
それはともかく、皆元気だ。アシュリィ様が帰ってきたって家に報告したら、会いたがっていたらしいよ。」
「わたしのこともミーナとお呼びくださいね!是非我が家にもいらしてください~!」
大体教室では、この面子で過ごす。ランス…とミーナは、私に対して呼び捨てでいいって言ってるけど様付けをする。
私にも立場があるし、強要はせん。しっかしランスってもっと…熱血漢、猪突猛進タイプだと思ってたなあ。
「昔は…そうだったかも。でも、父上達からアシュリィ様やアシュレイ様、色んな人の話を聞いて…世界は広いなーって思って。
人の数だけ想いがあって、自分の考えを押し付けんのってよくないなーって思ったんだ。」
…よく分からんが、彼は少し大人になったようだった。そういえば彼がウザ…熱くなるのって、確か月光の雫に選ばれた時だけだったっけ。
いかん、ゲームの印象が強すぎて本来の彼を見失っている…これからはちゃんと向き合おう。
ふとミーナの影に目を落としじー…っと見つめると…影が揺れた。いるな、半人前!
『もう半人前じゃありませーん!自分は先輩達から免許皆伝いただきましたー。』
ミーナの影がそろ~っと私の影に伸びてきて繋がると、相手の声が聞こえた。魔導具使いこなしてるな…このストーカーめ。
『ストーカーじゃありません、護衛の影ですー!それに自分は女だからいいんですー。
それよりも、シャリオン家も皆会いたがってますでーす。』
お前女だったんか!まあ、いつか正面から行くよ。
今日はもう授業も終わりで、教室で話していたらアルとディードが来た。その姿を確認した途端
「リリー嬢、剣術の授業では是非俺様の応援をしてくれ。」
「しなくていいよ。」
早速アルに拳骨を喰らっていた。こう言うのもなんだけど…なんでアルの前ですんの?
「?好いた女性に男がいるのなら、正々堂々と奪うべきだろう。」
…オウ。こういう奴か…。
なんとなく、好感度が急上昇した。もしもこれでリリーとアルじゃなくて、形だけの婚約だったら応援してたわ…。
それよりも、ディードが疲れた顔をしているのが気になる。
「ここに来る途中…ナイトリー嬢と会って…。」
ああ~~…どんな風に?
「何故か私達の目の前で持っていた書類をばら撒いてな、放っておく訳にもいかず…」
~回想~
『きゃー!やーだー!』
『『…………………。』』
『あーん、も~(チラッ)
どうしよ~~(チラチラッ)』
腕を突き合うアルバートとディーデリック。
『(お前が行け。私はアシュリィにあの女に優しくするなと言われている。
それに関わりたくないと私の本能が囁くのだ)』
『(優しさと親切は別物だよ。それと僕だって頭の中でさっきから警鐘が鳴りまくってるんだから)』
押し付け合う男子2人とそちらを見ながら書類を拾う女子。周囲は書類の目の前に王子がいるもんで迂闊に動けない。
観念したディーデリックとアルバートは、さっさと拾ってすぐ去ることに決めた。
『ありがとうございました!それで、あのう…そちらはパーティーでお会いした魔国の方ですよね?お2人のお名前をお伺いしてもいいですか?』
身分の低い者が名前を聞くなど…周囲の生徒は真っ青だ。
この2人じゃなければ、罰されることもありえる。
2人は名乗るほどの者では無い、と言い逃げようとしたのだが…
『お礼に今からお茶でもどうでしょう?』
『………僕婚約者いるから、ダメ。』
『!……私も、候補がいるから駄目だ。』
『え、婚約者さんがいるとだめなんですか?なんでですか?私、彼女がいる男の子と普通に遊んでましたよ?』
なんでとな。説明するのも億劫な2人は逃げた。窓から。
4階から王子が飛び降りたもんで、生徒は絶叫しながら窓から身を乗り出した。そこには…
『おい、アシュリィの教室はどこだ!?』
『えっとー…』
空を飛ぶディーデリックと、彼にしがみつくアルバートの姿があったのだった。
それを見たギャラリーはほっと胸を撫で下ろし、ナイトリーは
『すっごーい!!飛行の魔法って難しいって聞いたのに、格好いいー!!』
と、興奮するのであった。
~回想終わり~
「なるほど…。」
お疲れさん、うーん相手は天然か計算か電波か…。
一番対応が楽なのは計算系。勝算が無いと分かったらすぐ引くから。
次に天然系。時間は掛かっても、自分が間違っていると気付く可能性もある。
厄介なのが電波系。これは逃げるに限る。
…まあ、身分制度の無い現代日本で20数年暮らしていた私からすると。同じ人間なのに、自由に言葉を交わすことも出来ないなんて可笑しい!もっと平等であるべきよ。
なんて思うわっきゃねーのよ。
多分ナイトリーは絶望的に貴族社会に向いていない。郷に入っては郷に従え。それが出来なければ…元の暮らしに戻りなさい。
……ところで私には悪役が似合うと思うのだがいかがかな!!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます