第34話
カーテンの隙間から陽が差し込む。…朝か。あれ?私いつの間に寝たの?
ん?
「なんでアシュレイ一緒に寝てんの?」
私の横で、アシュレイがすーすーと寝息を立てている。つか私腕枕されとる?ちょっと照れるな…。
時計を見ると現在5時半過ぎ。寝過ぎたかな、そろそろ起きて支度しないと。
「アシュレイ起きてー。おーきーてー。」
「んん…?…おはよう。…!?」
「うん、おはよう。…おわっ。」
「わわわっ!」
そこまで顔真っ赤にせんでも…このマセガキめ。
「なんで一緒に寝てんのさ?寂しかったか?」
「ちっげーよ!!お前が!なんか呻き声あげて急に倒れるから…。普通に寝てるっぽかったけど、ちゃんと目え覚ますか気になって…気付いたらオレ寝てた。」
…???呻き声?
駄目だ、思い出せん。まあ、覚えてないって事は大した事ないんだろう。
「よく分かんないけど心配かけたみたいね、ごめん。もう大丈夫だから!
さ、今日から本格的に仕事だ。支度を完璧にして行くぞ!」
「本当に大丈夫か…?…なんかあったらすぐ言えよ。」
心配性だなー。…あれ、遮音の魔法かかったままだ。本当にいつ寝たんだ私…?
仕事用のスーツに着替え(燕尾服はいつも着る訳じゃない。お出かけとか、大事な来客時にのみ着る)、いざ出陣!!
お嬢様の部屋の前、一応ノックをする。多分寝てるけどね。
「お嬢様、入ります。」
そんでドアを開ければ、はいラッシュ君のお出迎えでございます。
「ラッシュ、夜中に変な人来なかった?」
—問題ない。彼女もよく寝ている—
よしよし。さて、今日は…と。
アシュレイに朝食を取りに行かせ、私は寝起きのお世話の準備すっか。顔洗う用のお湯とかお茶。あと今日のドレス。…ロクなドレス無えし。
ふふふふふ…ふはははははあ!!!ここで私の出番という訳ですよ皆様!!
チートが服着て歩く存在、それが
例えばこちらのワンピース。私のイメージ次第で高級ドレスに生まれ変わるのさ!色も変わるし綿を絹に変える事も可能、もはや錬金術っぽいね。
とはいえ、石を金に変える事は出来ない。布を鋼にも変えられない。その辺まだ完全には理解してないけど…感覚でわかる。これは可能、これは無理ってのが。
それに、質量は変えられないのよ。つまり、このロングのシンプルワンピースを装飾たっぷりゴージャスドレスにするなら、恐らくミニ丈になっちゃうね。下手すりゃただのシャツだ、そりゃまずい。
でもでも、これなら捨てるようなシーツとかも再生可能!!
まあ貴族ってのは大体お抱えデザイナーってのがいる。いつかお嬢様に専属デザイナーがつくまで、それまで私は魔法を使うよ。本職の仕事を奪う気はないし。
ただカタログがなあ。一応伯爵家でゲットしてあるんだけど…このまま造るのはちと不味い。
ベンガルド家は服飾系の会社を経営しており、奥様が沢山カタログをくれた。ありがたや。
しゃーない、私なりのアレンジをいれよっと。とにかく今は、屋敷内用の動きやすいけど華やかなドレスを造ろう。コルセット不要のやつ!
このワンピースと言う名の布切れを3枚。合成すれば1枚分だ。
カタログ片手に…こことここの装飾は外して…ちっちゃいリボンつけて…ここ絞って…色は白、いや水色…イメージする!
『生まれ変われ』
完成品は…いいね!大成功!!可愛いドレスが出来たぞ、早く着てくんないかなー!
そろそろ起こそっかな。スケジュールも確認したいし。ベッド近くのカーテンを開け、声をかける。
「お嬢様、朝ですよ。」
「ん…?アシュリィ…?」
「はい、アシュリィです!お目覚めのお時間ですよ。」
「んー…。」
お嬢様を起こしてベッドティーをお出しする。目が覚めて来たところで支度。はい!お着替え!
「…あら、素敵なドレスね。私持ってなかったわよね?」
「ふふふ、私が用意しました!ささ、お着替えしましょう。」
「まあ…!ありがとう、アシュリィ!」
ああ~可愛い~~~!私の見立てに間違いなかったね!まあ無難なデザインにしたからだけど。
でも、お嬢様が喜んでくれるのが一番嬉しい。いつか…いつかお嬢様が素敵な旦那様のもとに嫁ぐ時。私はそれまでお世話出来るのかな?
…いや、今は出来る事をしよう。今はただお嬢様をお護りする事だけを考えよう。
時間を戻す事は出来ないんだから、今を全力で生きよう。
アシュレイが持って来た朝食を食べながら(もちろん3人で!)、スケジュールの確認をする。
「最近、勉強の方は最低限しか出来ていないわ。教師の方も見えないし…。」
「ふ、そうだろうと思いまして、私沢山勉強しました!でも教えるとなると別問題なので…一緒に勉強する形にしませんか?
あとやっぱご令嬢だし、刺繍とかダンスとか詩も必要かな?ダンスはアシュレイがお相手出来ます。私と沢山練習しましたから!」
「へえ、ダンスの練習を…私、自分がやるよりあなた達のダンスを見てみたいわ?」
「なっ…!」
「あら?何顔を赤くしているのかしら。私はお手本を見せてほしいだけよ~?」
うんうん、2人が楽しそうで何より。そんな会話をしていたら、お嬢様が「あ。」と呟いた。
「そういえば…来週王宮に行かなきゃいけないのよ。王妃殿下主催のお茶会があるの。
王都周辺に住まう伯爵家以上の令嬢は全員参加らしいわ。我が家にも、お姉様と私に招待状が来たらしいの。
まあ…それでお姉様が怒り狂って私の髪の毛を切ったのだけれど。」
「ふうん…もしかしてよくある、王子殿下の妃候補探しですかね?」
「よくあるの!?ま、まあその可能性はあるけれど。王子殿下は3名とも、婚約者もいらっしゃらないから。」
ふむ。ついに来ましたか、王子様。…?そういや、女主人公来るんじゃない?伯爵令嬢だし!
「ではお嬢様、準備をしないといけませんね!」
「え?でも…私はこの髪だし…。」
やっぱり気になるのね。でも大丈夫、上手くすれば王妃様の目にも留まるでぇ!!
さてさて、私はドレスの用意しなきゃね!どんなデザインにしよっかな。
「アシュリィ、オレらは今日どうする?」
「ああ、まず…挨拶回りかな?お嬢様、申し訳ないんですけど私達少し不在にします。
もちろんラッシュは残りますのでご安心を。いざとなったら屋敷を破壊してでもお嬢様をお護りします。」
私の発言に任せろ、と言わんばかりのドヤ顔をするラッシュ。ドン引きする2人。なんでよ?
「精霊と術者って似るのかな…。」
それはあるかも。相性があるしね。
それより、今日の目的はお嬢様の兄弟に会う事。
お嬢様の6つ上の兄リスク、5つ上の兄キリエ。1つ上の姉アイニー。ちゃんと覚えたぞ!!
食器を片付けに行くついでに挨拶していこう。敵を知り己を知れば百戦危うからず!情報は時に、何物にも勝る武器になる。
という訳で、上から行くぞ!
はい、長男の部屋。ああもちろん、時間は考慮していますとも。アポも取ってありますとも!
いざ特攻!
「そうか。アレの世話とは奇特な趣味を持っているようだな。目が覚めたら私の所に来るがいい。」
二度と来ねーよ!次!!次男!
「ああ、お前達が。優秀だと聞いてるし、僕の世話をするといいよ。お父様には僕から話を通しておこう。
断る?やっぱ正気を疑うな…。女のクセに短い髪をしているし。」
死ね!!!次、二番目にぶっ飛ばしたい姉!!一番は侯爵。
「落ち着けよアシュリィ…。」
「落ち着いてますが何か??」
「うん、じゃあ手に持ってる得物をしまおうぜ。」
「おっとうっかり。いや別に、チャンスがあったら刺そうとか考えていませんですよ?」
「………。(胡乱な目)」
「………。(超笑顔)」
「…行くか、アイニー様の部屋。」
「アイアイサー!!」
「だからその、くないとかいうのをしまえ!」
もちろん自作⭐︎気分はクノイチ!鎖鎌も捨てがたいが目立つからね!
「あら、可愛い子達ね。お茶でもいかがかしら?」
「お心遣い感謝致します。ですが私達は使用人という立場にいます、お嬢様と同席は致しかねます。」
「そ。残念。…貴方達もいい趣味してるわねえ。あんな子のお世話をしたいだなんて。
それより2人共、私の執事にならない?ずっといい待遇を約束するわよ?」
速攻で丁寧にお断りしました。
これがアイニー様か。黙ってりゃそこそこ可愛いのに、勿体ない。なんで執拗にお嬢様を虐めるのか、少しでも聞き出せないかな。いざとなったら…。
「ああそういえば…アレは王宮のお茶会に行くのかしら?」
「ええ、ボク達がお供致します。」
「着て行くドレスも無いでしょうに。」
「私にアテがありますので。」
「あんな頭でよく出歩けるわねえ。」
犯人お前だろーが!!byアシュシュ
「リリーお嬢様はどのようなお姿でも愛らしく思います。」
「足はどうするのかしら?アレの為に長時間も馬車は出さないし、半日も同じ空間にいたくないわ。」
「私は召喚魔法を得意としております。移動に相応しい精霊と契約しておりますので。」
「「ご心配いただき感謝致します。」」
「……。そう、じゃあもう出て行ってくれるかしら?」
「これは失礼致しました。」
…ふう、殺意を抑えるのに必死で、あまり覚えてないぜ…。私達は大人しく部屋を出て、行く訳無いぜ!!!
いやもちろん出てくけどね?あんな空間に長居したくないし。ただちょっと、ね?盗聴的な、ね?
「上手くいったか?」
「ばっちし、聞こえてる!」
別に好きでやってる訳じゃないから!今後お嬢様にちょっかい出さないか心配なだけだから!!
更に言うと、盗聴とはちと違う。そんな事したら、バレた時が面倒だ。なので、私の意識の一部を部屋に置いて来た。
説明が難しいんだけど、まあ魔法だから。電子機器で言うと、使えるけどどういう仕組みで動いているのか説明出来ないのと同じだよ。魔法って感覚に頼るとこ多いんだよねえ。
とにかく、あの魔窟に私がもう1人いる感じ。まあ聴覚しか使えないけど。そういう風に設定した。そしてアシュレイともパスを繋ぎ、彼にも声が届くようにした。
ただこっちの
『…ふう、あの子達勿体ないわねえ。あんなに可愛くて優秀だというのに、趣味だけは最低なんですもの。』
「「やかましい。」」
『大体、アレが王宮に足を踏み入れるなんて不愉快だわ。相応しくないのよ、王妃様も何をお考えなのかしら?
それに、王子様の目に留まろうだなんて…身の程知らずもいいとこね。王子様には私のような女が相応しくてよ。』
「「言ってないし鏡を見て来い。」」
アイニー様は可愛いが、所詮どこにでもいる可愛さだ。お嬢様や私のお母さんのような、別次元の美しさの前では霞んじゃうね!
『さ、来週は気合をいれなくちゃ!ああ、どの王子様にしようかしら?私に相応しい、顔も勉学も魔法も顔も剣術も顔も素晴らしいお方だといいわね!』
「「身の程知らずはどっちだ!!!!」」
いやあ、こんだけ騒いでも相手にゃ聞こえないのいいね~。スッキリするわ。つか…アイニー様の方が悪役令嬢っぽくない??
「…2人共、さっきから何を騒いでいるの?」
「「なんでもありません!」」
お嬢様、来週のお茶会…楽しみですね!!
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