第18話


 も~我慢ならん!可愛い娘をなんだと思ってんだ!!リリーは襲撃された過去があんだぞ!そん時だってむしろ護衛増やすか、それこそ外出禁止するとか対応するだろ普通!!

 禁止されたら会えなくなるからヤだけど。

 終いにゃ「おめえに護衛いらねえから」だとおぅ!?ターコ!!つか外より家ん中の方が危険だわダボがあ!!



 という訳で。私が護衛になる!!いや、いつでもずっと一緒にいられるように、メイド?いや侍女?


 …戦闘侍女。かっこいい!!

 よっしゃ!!




「という訳でリリー様、私を侍女として雇ってください!!」


「どういう訳!?…ま、まあ、もしもアシュリィが側にいてくれたら…こんなに心強い事ありませんけども…。」




 そうでしょうそうでしょう!!善は急げ、さっそく…あら?



「どうすればなれるんです?面接?実技??」


 私の言葉に、3人ががっくりしてる。

 ししし仕方ないでしょう!?そんな、日本で使用人とか少ないんだから!!見たことない、と思うし!



「はあ…そもそも、孤児を雇って貰えるかどうか…少なくとも私は聞いたことありませんわ。

 今侯爵家の使用人は、皆それぞれ身元も経歴もしっかりした者達ばかりですし…。」


「なんですと?じゃあじゃあ、よく漫…物語とかであるようなスラムで行き倒れてる少年に

『あら貴方、行く当てがないの?では、わたくしの執事におなりなさいな!今日から貴方の名前はセバスチャンよ!』

 的な展開ないの!?」


「何言ってますの…?そもそも執事は上級使用人ですから、それこそ爵位の低い貴族の次男三男だったり、平民だとしてもかなりの能力と時間が必要よ?

 あと、セバスチャンてどなた?」



 だああーーー!!ゲーム世界のくせに!そんなとこだけしっかりしてんじゃなーい!!!


 そんな時、さっきから黙っていたトロくんが口を開いた。



「でもお嬢様…アシュリィちゃんが側にいるってのは僕も大賛成です。

 最近お嬢様…お姉様やメイドから危害を加えられているでしょう。」


「っ!!?トロ!!なんで知って…!いえ、アシュリィが聞いたら…!!」





「……へえ…?」




 へーえ?ほおー?ふぅーん???



 やば、キレそう。むしろキレた。









 何かが、私の周囲を渦巻いている。

 風のようなモノを纏っているけど…部屋のテーブルや椅子に被害は無い。何これ。









「リリー様!あれなんすか!?風みたいの吹いてるけど…!」


「魔力が漏れ出してますわ!!さわ、れるわね。恐らく彼女が敵と認識した者が触れたら、魔力の刃で八つ裂きにされるわ…。

 魔力をそのまま実体化するなんて、相当な魔力量が必要よ…?」


 ほう、良いこと聞いた。


「ならこの状態のまま、侯爵家に特攻すればいいんですね?お任せください。」



「駄目だろ!?落ち着けっつーの!!」


 歩き出そうとした私だが、アシュレイに羽交い締めにされる。振り解くのは簡単だけど…。

 アシュレイの身体が震えている…本能的に、今の私が怖いのか…。




「…ごめん。」





 落ち着くと、なんとか魔力を霧散させる事ができた。…うおっMPが600減ってる!魔力の刃、使えそうだけど燃費が問題か。



「ごめんなさい、取り乱しました。」



 ぺこりと頭を下げる。皆許してくれた。

 ところでアシュレイ、もう離していいぞ?


「え?…わあああっ!?すっすまん。」



 顔真っ赤にしちゃって…思春期か?











「では話を戻しますが…トロくん、さっきの話は本当だね?」


「うん。お世話を放棄されたりドレスを汚されたり。お姉様なんかは直接手をあげたりしてるみたい。」


「…もう。その通りですわ。年々酷くなってるのよね。」


 そりゃ大変。一刻も早く側につかねば。




「どうしよう…誰か、侯爵家に紹介でもしてくれればいいのに…!あとついでに勉強!!」



「…私に貴族の友人でもいればよかったのですが…この間のお茶会で初めて他家の方と交流したのよ…。」




 私達は4人揃って頭を抱えた。もういっそ、侯爵家の芋の皮剥きからスタートするか…?







 

「お話は終わったかしら?もうみんなお昼寝してるわよ。」


「シスター…。」



 シスターは私達の様子を見て、心配そうにしている。でも彼女に相談したところで…。するけど。



 かくかくしかじか。



「あら、それなら私の実家に相談してみましょうか。きっと力になってくれるわ。」


「「「「え?」」」」



「そういえば言ってなかったわね。私の昔の名前はサラティナ・ベンガルド。ベンガルド伯爵家のお嬢様だったのよ~。」


 うふふ~と笑うシスターもといサラさん。



 え?





「「「「えええええええーーー!!!?」」」」




 これは!私の運9999の効果か!?

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